第13話 一年分!?

 あの後、犯人二人を警察に引き渡した。警察から色々と事情聴取されそうになったが、俺はそんな目立ちたくないのでただの発見者として振る舞うことにした。


 聞けば九条さんのお父さんは名のしれた製薬会社の社長さんらしい。それでどんな商品作っているのか聞いたらまさかの俺の超愛用ドリンク『キラクニナレール』を取り扱っているというではないか!


 俺は感極まってその場で握手を強請った。九条社長も微笑みながら俺の握手を受けてくれたのでとても良かった。まぁ九条さんの目線が人殺すくらい鋭かったのは無視していたが。


 めんどくさい事情聴取は両親がやってくれるというので俺たちは学校に向かっている。俺は今日くらい休んでも良いんじゃないかって言ったけど


「あなた何言ってるの?五体満足で傷もないなら学校くらい行けるでしょ?」


 いやいや心の傷とかあるだろ?って聞こうとしたけど、思ったより全然平気に見えたからやめた。


 もう遅刻確定なので走る必要はない。俺たちはのんびり歩いていた。


「あなた、ほんとに興味がないのね」


「あ?何が?」


「九条製薬の社長とその家族を救ったのよ?それなのに何もいりませんだなんて」


「こんなニュース知れたらアイツらがまた反応するだろうが........無理でしかない」


「あら......そういえば私聞いたのよ。警察の人達の会話を」


「......................」


「流石あの加賀美の血統って.......警察の人が知っていて加賀美って聞くと警察署長官の加賀美 鉄次てつじさんを思い浮かべるけど..........」


「それ以上は言わないでくれ.....頼む.....」


「...............ならやめておくわ」


「............................」


「でも私本当に見直したわ。あなたのこと」


「あ、はい光栄です」


「取ってつけたような返事はいらないわ」


 じゃあどう返せば良いんだよ!!!!


「私が聞いてたあなたはもっと下衆で体の関係を迫るような奴だったけど」


「それひどくねぇか?傷つくぞ俺」


「本当のあなたはもっと正義感溢れる人なのね、それに誠実だし、案外優しいところもあるじゃない。中瀬が擁護してた理由が分かったわ」


「中瀬さんと知り合いなのか?」


「私と彼女はライバルよ。前回のテストでは一位を取られてしまって今は私が二位だけど次は取り返すわ」


「へぇー難儀なもんですなぁ」


「取ってつけたような返事はやめなさい」


 だからどう返せば良いんだよ!!!!!


「聞けばあなたは中瀬の恋愛相談役を担っているだとか.........本当なの?」


「まぁ......そうだな。一応助言はした」


「ふぅーん.........見つけたわね」


「は?何を?」


「ねぇ?私の恋愛相談に乗ってくれないかしら」


「それ冗談だよな?嘘をつくなら俺以外で頼むぞ」


「あなた私が冗談を言うと思ってるの?」


「え?.......いや.......思ってないです」


「よろしい。じゃあやってくれるわよね?」


「なぁこれ断って」


「あなたの噂をさらに悪い方向にしていくけど......いいのかしら?」


「俺さっきお前ら救ったんだぞ?感謝の気持ちはないのか?」


「それならキラクニナレール一年分で手を打つわ。これでどう?」


「是非、やらせていただきます」


「あらあら、見事な手のひら返しね。プライドはないの?」


「ドリンク一年分に勝るプライドなど捨て去りました、どうぞ何なりと」


「契約成立ね.......ふふふっ」


 む、無理だ.....欲には......勝てねぇ.....




 ❖☖❖☖❖




「たいっちゃん!遅かったな!!朝帰りか!?」


「なんでお前も俺の視線厳しくなるようなこと言うんだ?」


「冗談だってぇーの。それよりほら!見ろよアレ」


「ん?.............ああ、なんとなく分かった」


 視線の先には昨日カフェにて告白をしデートの約束までしている美少女、中瀬愛梨がそこにいた。だがいつもの天使オーラではなくまさに堕天したオーラを放っていた。


「なんかあっただろこれ?俺の予想言っていいか?いいよな?」


「駄目だ。絶対言うな。まじで頼む」


「俺の予想だと恐らく彼女はNTRたんだオーソドックスパターンだと好きな人に告白して結ばれて永遠の愛を誓おうとかフラグ抜かしちゃって金髪のギャルがそれを掻っ攫っていくやつだけど俺の望み的には好きな人が告白してきたんだけどつい意地張っちゃって断ったら前からそいつを好きだった先輩にWSSされるパターンの方がかなりおいしく感じるいや待てよもしかして集団系の可能性もあるな確かに中瀬さんは殴りやすいボディしてるからギャル三人組に好きな人を蹂躙パターンなら十分に可能性もあるしやっぱりそうだ彼女はギャル三人組に好きな人をN」


「うるせえぇぇ!!!無限に喋ってんじゃねぇ!!早口すぎて全然聞こえねぇしもう原因分かってるから黙れ!!!!!!」


「おっとぉ、やりすぎちゃったかなぁ」


「その猫撫で声最高にイラッとくるわ」


「お褒めにお預かり光栄の極みでございます」


「はぁ......俺行ってくる」


「ってらっしゃーい」


 俺は中瀬さんの元に歩いていく、彼女は次の授業が終わってすぐに机に突っ伏したようだ。かなりダメージを受けているようだが別にそんなダメージ受けることしてなくないか俺?


「おい?中瀬さん大丈夫か?」


「...........加賀美君......来てたんだね」


「何かあったのか?昨日」


「私ね、彼に告白したの。そしたら彼は彼女がいるからって告白を断った。でも私は納得ができなかったから本当なのかどうか確かめたの。そうしたら彼女は偽彼女だったの........」


「う、うん良かったじゃないか」


「全然良くないよ。私って彼に嫌われてるのかな?わざわざ偽彼女を用意してまで断りたいだなんて......よっぽど私が嫌いなんだよ........ううぅ」


 美久.....やったなお前.....普通にめっちゃ傷ついてんじゃねえか


「俺は違うと思う。多分彼はできるだけ君を傷つけたくなかったんじゃないか?」


「え!?で、でもそれならなんで」


「中瀬さんは彼に彼女がいなかったら断られてもそのままアタックし続ける気だったんだろ?でも彼は当分彼女を作る気がなかった。だからどう頑張っても結ばれない可能性があった。そうなった場合中瀬さんはもっと悲しむことになるって彼は思ったんじゃないか?」


「私が振られ続けて悲しむ前に......先に振ってあげようとしたってこと?」


「そういうこと、それに彼は中瀬さんのことが結構好きだと思う」


「え!?なんでなの?」


「中瀬さんの悲しむ姿見たくないってことはそれくらい気にしてるって事だよ」


「.........わかった。私諦めない!」


「ああ、頑張れ。応援してるよ」


「はい!ありがとうございます加賀美さん!」


「いいって、これも恋愛相談ってわけだし」


「細かいところ律儀なんですね!」


「うるさいなぁ、もう時間だわ。デート頑張れよじゃあな」


「はい!ありがとうございました!!」


 これで中瀬さんに天使オーラがまた戻ってきてくれたかな?


 まぁ俺を好きな人の恋愛を俺が応援するってのがおかしいんだけどな。


 元気づける為とはいえ恋の応援しちまった以上やり通すしかない。もし俺がカフェの定員ってバレたら面倒なことになりそうだけど


 まぁ大丈夫だろ........なんとかやり過ごせば






「そういえば私、加賀美君に振られてもアタックする予定って言ったっけ?それにデートすることも言ってなかった気がするんだけど」



 俺に彼女のつぶやきは聞こえなかった。


 墓穴を掘るとはこのことだ。


 そしてデートの日がやってくる。

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