第12話 遅刻....え!?

「ふぁぁ.................」


 今日は一週間お疲れさまの日.....まぁ金曜だ。普通ならばお祭りもいいところだが今週はそうもいかない。なんぜデート(親睦会)が入ってるからな。今日でなんかデートプラン考えとかねぇと


 小学生の頃を除けば俺はまだデート童貞だ。しかも今風のデート........無理だろ。

 ノリィ?アイツにデートの相談?馬鹿言うな。アニメイトか聖地にしか行かない野郎に聞けるわけねぇだろ。



 俺は部屋から出て顔を洗い台所へ向かう。

 朝食は特売たまごチャーハンと豚汁。

 いつもどおりささっと作って食べる。


 そして緑茶を一服...........


 そして時計を見る.........時計を.............時計


「やべぇぇ!!!!!!寝坊してるぅぅぅ!!」


 何悠長に茶なんて飲んでやがる!!馬鹿か?

 昨日の件で寝付きが悪かったのもあるが......なんでアラームが切れてんだ??

 いつも中立のアラームに裏切られるとは......

 そして現在8時20分、遅刻まで残り10分


 俺は急いで服を着替え玄関から駆け出していく


「残り八分か....イケるな」


 俺は更にスピードを上げていく。


 交番を抜けて少し大きめの橋を渡っていき住宅街へと入っていく、その近くにコンビニがあるので放課後とかによく通っている。そして豪邸が見えるはずなんだが.......


「ん?..........おかしいな」


 この豪邸は警備がとても固く、周りを2メートル以上高いフェンスで覆っていて更に有刺鉄線までついている。しかもかなり目立つところにあるのでわざわざ侵入しようと思う人間はいない。だが今日は少し様子がおかしかった.......


 普段ここを通ると必ず庭のプランターに水撒きをしている金髪女性が今日はいない。車も奥に見えるので外出している様子もない。そして、不自然に戸が開いている。


「いやまさか........そんなはず」


 俺は門の前に近寄った。だが強引に開けられた形跡はない。

 杞憂で終わるならいいけど、嫌な予感がする。フェンスをぐるりと一周して不審な場所を探すと一角に人為的な切れ込みがある場所を見つけた。そこは少し押しただけで簡単に体が通るようになっていた


「まじで言ってんの?」


 本当に強盗か何かがいるのかもしれない.....だが居なかった場合ただの不法侵入者だ。


「後で.......謝る準備をしておくか」


 俺は切れ目から中へ侵入した。




 ❖☖❖☖❖



「勢いで入っちゃったけどこれ本当に大丈夫か?」


 今俺がいるのは綺麗に整えられた庭の隅、もしかしたら人に見つかる可能性があるので慎重に近づいていきたい。


 俺はまさに泥棒のような動きで玄関の戸に手をかけると音が出ないようゆっくりと開いた。


「うっわすげぇ.......」


 家の中は想像通りとてつもなく豪華だった。所々装飾が施されていて、高級車何台も買えそうなくらい高そうな壺とか絵画とかもあるし、シャンデリアもあった。


「人の気配がないな.......二階か?」


 玄関に入ってすぐ近くには黒が基調となっているカーブ階段がある。俺は足音が鳴らないよう注意しながら一段ずつ登っていった。二回は吹き抜けとなっていてかなり広く感じる。


「........a........k.....」


「かすかに声が聞こえるな.....」


 俺は姿勢を低くしながら声のするほうへ近づいていく。階段を上がって左の廊下の一番奥の部屋に声の主がいるようだ............更に慎重に....少しずつドアに耳を当てる。


「おい!!聞いてんのか!さっさと金出せって言ってんだ!ここに預金通帳が入ってんのは知ってんだよ!!!開けろ!!!」


「ま、待ってくれ!鍵はかなり厳重に管理しているから私でも開けるのに10分はかかる!!!!」


「ほんとか??金庫開けるのに10分だと!?ふざけるな!!!さっさと開けろ!!!てめぇの妻と娘が人質って忘れんな!!」


「そ、それだけはやめてくれ.....私の宝なんだ!」


「ひひっ、ならつべこべ言わず開けるんだな」


「待ってくれ!今、妻達が無事なのか聞きたい!」


「ああ、しっかり別室で監禁している。もちろん手は出しちゃいない...だが?お前が遅れれば.......分かるよな?」



「なるほどね.............」


 これマジなやつじゃん。


 え?どうする?もう足突っ込んだよ?腰まで浸かっちゃってるよ?

 このままおじゃましましたーって逃げるのはさすがにアウトだから.......


 まぁやるしかない。

 そもそも俺はこれを見過ごしてはならないんだ。

 そうされてきたからな。


「さて、まずは警察へ連絡、次に人質開放、最後に犯人確保でいくか」


 俺はゆっくりとその場から離れると、玄関を出て110番通報とこの家の場所を伝えた。家名言ったら大慌てで切れちゃったけど.......ここなんかあんの?


 俺は一つ一つ部屋をチェックしていく。もしかしたら複数犯かもしれないので慎重行う。


「一階は誰も居ない.......2階に人質がいる...」


 俺は他の部屋を順に探っていく......3つ目の部屋でついに当たりを引いた。


「男が1人いるな......」


 中からは女性の咽び声と男の高笑いの声が聞こえた。


「チッ!下衆野郎が......」

 こういう奴らには反吐が出る。味方によって悪は変わるが、この場合、俺が正義であるならあいつらは悪だ。即座に無力化しなければならない。


「速攻で鎮圧して....安全確保..」


 ガチャ


「おい!てめえ!どこから出やがった!」


「まずは相手の無力化から....ブツブツ」


 相手はナイフを持っている。差し返すタイプではなく差し込むタイプであればこのままま制圧できるのだが.....


「オラァ!!死ね!!!」


「それ助かるわマジで」


 左足へのローキックで体勢を崩し、一階で拝借したハンドタオルで腕を引っ掛けナイフを落とす。


「ぅう....クッソガキが!!」


「動きは素人で更に助かるわ」


 後はもう一個薄めのタオルがあれば


「組み付いて口巻いて......」


「モゴモゴ!!!」


「首決めちゃえば終わり」


「ゥウ.........................」


 時間にしておよそ10秒ちょっとの早業

 俺様様すぎて笑っちゃうけどな


「さて............」


 ここは寝室のようでベットが一つ置いてあった。クローゼットや脱ぎかけの服を見る限り女性の部屋。そしてそのベットの上には......


 金髪で異次元のスタイルが特徴的な美人と


「はぁ...........俺やっぱ眼科行かないと」


 綺麗な金髪と超絶スタイル、お嬢様ヘアの.......


「氷の女王様かよ...................」


 はぁ.........笑えねぇ



 ❖☖❖☖❖



「助けていただいて本当にありがとうございます!加賀美様。このご恩は絶対に返させていただきますね」


「私も感謝するわ加賀美大晴君。本当にありがとう見直したわ」


「九条さん俺の事知ってるんだ。別のクラスだから知らないと思ってた」


「あなた自分の噂がどこまで広まっているかご存知ない?」


「.......はい.......そうですね」


 ですよね。俺やっぱ今有名人ですよね。


「あの......夫は無事なのでしょうか?」

「私もお父様の安否が知りたいわ」


「今は男に命令されて金庫を開けようとしているところですね」


「そ、それは本当にまずいです!!あそこには!」


「ええ、なので今から犯人確保に行きます。ロープかなんかでそいつ縛っといてください。よろしくおねがいします」


「え?あのちょっと待ちなさい!」


 へいへい、うるさいよ九条さん。ぱっぱと終わらせりゃ文句ないだろ?


 俺はもうひとりの犯人がいるドアまで歩く。


 ガチャ


「こんにちは〜」


「あ!?お前どこからきやがった!殺すぞ!」


「さっさと来いよマヌケ。見出し帽ってダサいんだよ目に悪い」


「んだとコラ!素手でくるとか舐めてんのか!」


「お前だよ舐めてんのは」




 俺は向かってくる相手のナイフを避ける。素人はナイフを振る時かなり大振りになりやすい。その後はただの後隙の垂れ流しなので腿を思いっきり蹴り飛ばす。



「あ!?......ッ!!」


「相手の腿側面に対して強い打撃を与えることで一定時間動けなくなる技。やり方知ってればガキでもできて超簡単。通称毒針.....昔はヤンキーがよく使ってたやつだよ」




「うっぅっぅ.....痛ってぇ」


「お前そろそろ黙れよ」


 そのまま組み付いて決める....まぁこんなもんかな


「お怪我はないですか?」


「君は一体......」


「通りすがりの一般男子高校生です」


「ありがとう.......ありがとう!!!!!!」




 うん。すごく嬉しそうなのは分かる。けども


 ダンディなおっさんと抱き合う趣味はねえんだ





〈あとがき〉

主人公お前マイペースだな

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