第9話 イキった!?
「昨日の俺まじ許さんからな........」
昨日完全スルーしたメールを今朝見たら、案の定中瀬さんからの連絡が入っていた。
内容は、明日セイ君に会いにいくので昼休みまた相談に乗って欲しいというものだ。
「何も考えてねぇぞ........俺」
「おい、たいっちゃん朝から何言ってんの?虫沸いちゃった?それとも頭打った?」
「朝からうるせぇよノリィ。俺は疲れてんだよ」
「はははっ、昨日昼休み後やばかったもんなぁ」
「それはある..............」
昨日、昼休みに黒の女神が陰キャ眼鏡と二人で食事をしていたというニュースが校内を瞬く間に駆け抜けた。この学校の誇る四大アイドルの1人が男と一緒に居た、これは学校の大事件に等しく、そして俺の想像を遥かに超える影響をもたらした。その結果、クラスの奴らからも他のクラスの奴らからも嫉妬を含んだ目で睨まれることになった。
「つるんでる俺までなんか睨まれたからな、お前はもっとひどかっただろ」
「廊下歩いてるだけで睨まれるなんて生まれて初めてだ.....いや.....二度目か」
「あははは、まぁそれは置いといてよ。ほら?見てるぞ?」
「ん?ってうわぁ」
「ジッ...................」
見てる........めっちゃ見てやがる。なんかバレてないって思ってそうだけど扉の窓からしっかり見えてるからバレバレなんだよなぁ...........
「逆に目立ってるから、ほら行って来い」
「分かってるよ..........」
俺が近づくと彼女は扉に隠れてしまった。扉で隠れているのをお構いなしに遠慮なく話しかける。
「ねぇ?中瀬さん?何してんの?」
「ば、バレちゃったね......」
「バレバレだよ.....」
「昨日の昼休みから、話しかけても”まだ降りてきてない”の一点張りで全然聞いてくれなかったでしょ?だから、今日はどうなのかなって」
「まぁ確かに周囲の目はあるよ。今も」
廊下との境界線で喋っているからかクラス内外から無数の視線を感じていた
「俺って眼鏡オタクだろ?そんなやつが中瀬さんみたいな人といるのが気に入らないんだよ」
「別に私はそう思ってないから大丈夫だよ?それに別にそんなに」
彼女は俺の顔に手を伸ばしてきた。ってそれはまずいってバレるって!!
俺は彼女の手を掴んだ。
「へ?」
「な、馴れ馴れしく掴んで悪いな。でもちょっとコンプレックスを見せびらかすのは嫌なんだ。勘弁してほしい」
「ご、ごめんなさい!」
「別にそんな頭下げてまで怒ることじゃないよ?」
「私、こんなに楽に話せる異性の人が始めてで、ちょっと距離感間違えちゃったかもしれないです」
「お、おう.......」
口元に手を当てながらもじもじするのは卑怯だろ。ノリィなら推しが違えど泣きながら尊死するレベルだぞ?
「じゃあ俺って相談相手兼友達ってこと?」
「男友達!いいですね!始めて異性の友だちができました!」
「じゃあこれからよろしくな。友達としても」
「はい!で、でも相談もしっかりしますからね!答えてくださいよ!」
「分かってるよ。けどまだ昨日の相談のアドバイス悩み中なんだ。昼休みまでには考えるからよ。待っててくれ」
「分かりました!気長に待ってますね!」
❖☖❖☖❖
「いつにもまして群がってんな」
「それな」
「囲まれてるって言い方でいいかもな」
「どっちでもいいわ」
今は休み時間、中瀬さんは人柄もよく、手を差し伸べる系の人だから自然と周囲に人が集まる。大半は女子だが、中にはあわよくばお近づきを狙う男も混じっていた。
「あいつら、よくめげねぇよな」
「それな」
「愛想笑いが見え見えだよな」
「それな」
「クラスメイトでお願いしますってか」
「それなんだよなぁ」
「もうちょっと真面目に返答しないかい?たいっちゃん?」
「いいじゃねぇか普通の会話も」
「これが普通なのか」
「今知ったのかよ、小中やり直せ」
「おいそれより見ろよあいつ」
「ん?......確か竜崎だっけ?」
「ああ、めっちゃ素行悪いって聞くよな。女王様に振られてすぐ鞍替えとか....いい趣味してやがる」
身長が高く赤に染めた短髪がいかにもチンピラっぽい雰囲気を醸し出している。あれは多分赤髪のヤンキーってカッコいいよな系男子だ。誰もがヤンキー漫画見て憧れちゃう奴だ。
そんなチンピラ君は他の女子を押しのけて中瀬さんに話しかけている。他の女子が不満そうな顔で彼を見ているのがこっちから見え見えだ。
「助けたほうがいいんじゃねぇの?」
「面倒だろ?それに今んとこ喋ってるだけじゃん」
「お前友達認定されただろ?認定料払ってこいよ」
「友達になるのに金いるとかありえねぇだろ」
「つべこべ言わずに言ってこいや、そして散れ!散ってくれ!」
「◯ルト最終決戦ネタ使うなよ。冷える」
「とりま行け、何言ってもいいから」
俺は嫌々席を立ち上がり中瀬さん達の元に向かった。中瀬さんと目が合う。やはり微妙な顔をしている、そんなに楽しくないんだろう。まぁ竜崎が1人で喋っているだけだからだろうな。
「おい、竜崎。迷惑してるしもうやめろよ」
「あ?お前誰だよ?今俺が中瀬と話してんだろうが、邪魔すんな」
「もっとよく周りを見たほうがいいぞ?お前すげぇ目で見られてるから」
周囲の目線が竜崎に集中している。当たり前だ、雑談していた俺たちにも聞こえるほどの音量で喋っていたら誰だってうざいと思うだろう。
「もっと声落とせばいいんだろ?それで終わりだ」
「違うぜ、全然違う.......お前は中瀬さんの迷惑を考えてない」
「は?何が?どこが迷惑ってんだよ?」
「中瀬さんは友達一人一人の話題をちゃんと聞いて反応している。会話ってのは喋り手と受け手で成り立つことだ。だが、こんな常識的なこともわからないまま好き勝手に話し続けたら迷惑に決まってんだろ?」
「............んだと?」
「お前以外にも彼女と喋りたい人はいるんだ。彼女が望んでもいないのにお前1人の話でその時間を奪うのはあまりにも身勝手だ」
「聞いてればテキトーなこと言いやがって!」
「暴力はやめとけ、下心丸出しで近づいてきたやつがいきなり暴力振ってたら幻滅どころか拒絶されるぞ?」
「下心?まさかお前中瀬が好きなのか?あ?お前の方が下心あるじゃねぇか!」
「はぁ.......ねぇ?中瀬さん言っていい?」
「..................いいよ、恥ずかしいけど」
悪いな中瀬さん、俺もこうゆうのは苦手だ、というか嫌いだ。
「中瀬さんは好きな人が居るらしいぞ?」
「「「「はぁぁぁぁ!!?????」」」」
「ま、こうなるよなぁ」
「おい!んなわけねぇだろ!デタラメ言ってんじゃねぇよ!」
「だから、本人から聞いたんだって.....聞いてみろよ」
「な、なぁ中瀬?ほんとに好きな奴がいるのか?ほんとか?嘘だよな?」
「うん、いるよ。今まで言えなかったけどね」
「まじかよぉぉぉぉ!!!??」
「ま、そういうことだ。やめとけ見苦しいぞ」
「.......けんな」
「さっさと他の子に譲ってやれ、もういいだろ?」
「ふざけんじゃねぇ!!!」
竜崎は俺を憎悪で濁った目で俺を見てきた。まぁ来るかな多分。
「てめぇみたいなド陰キャはこうやって黙らせるんだよ」
ポキポキと指を鳴らして近づいているが、それ何がカッコいいんだろうか?漫画だと強者感でるけど現実だと滑稽だな。
「いいのか?暴力?嫌われるかもしれないぜ?」
「知るかよ!もう手に入んねぇなら関係ねぇ!お前ボコしてスッキリすりゃぁそれでいいだろ?」
「ふーん、じゃあどうぞ」
「あ?」
「ほらやりたいならやれよ?俺こんなコトで待ちたくないんだけど」
「てめぇ!!マジで本気でぶん殴るぞ!!!」
うわぁめっちゃ振りかぶってる、隙だらけすぎるだろ。これなら余裕だな
「オラァァ!!!」
「はい、正当防衛いただきました。おーわり」
「な!?」
別に大したことじゃない。手が伸びてきたから掴んで体ごと捻ってそのまま床に叩きつけただけだ
習ってれば誰でもできる。
「ぐ.....ぁああ」
「これから中瀬さんに悪影響を及ぼすことをしないならば、この件控えてもいいぜ?どうする?」
「ぐ.......てめぇ.....」
「もう一本行くけど?イイよね?」
「分かった!分かったから!もうやらねぇから!」
「物わかりが良い奴は好きですよ.....なんて俺の柄じゃねぇけど、それでいいや」
竜崎は逃げていった。なんか失恋させてなおかつ元好きだった人の目の前で投げ飛ばされるとか申し訳ないことした気がする.........すまん竜崎、強く生きろよ。
「よし、余計なお世話だったかも知れないけど良かったかこれで?」
「全然余計じゃないよ!すごい助かったよ!ありがとう加賀美君!」
「中瀬が大変な時に俺が偶然そこにいただけだ」
「え...............」
「とりあえずもう俺は戻るわ」
「......雰囲気が.......いや....でも」
一件落着とはなったけど、よく考えたら俺めっちゃイキってなかったか?恥ずかしいこと言いまくってないか?めっちゃ痛い奴に見えたんじゃないのか?
うわぁ....めっちゃ恥ずい......
穴があったら入りてぇ........
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