第8話 ひゃい!?
「いらっしゃいませー」
俺は今日も学校終わってすぐにバイトに来ていた。何件か着信とメールがあったが知ったことじゃない。hazeさんに指示を仰ぐまで俺はその手の話題には触れんのだ!
「ちょっと雑になってる。気合入れなさいよ」
「ったくうるさいねぇ美久ちゃんは」
今日はなぜかいつも調理場にいるはずの美久が一緒に受付をしていた。俺としては仕事が減って楽にはなるんだけどそれ以上にコイツうるさすぎる。
「あんたが色々と節操なしだからここにいるんじゃないの!」
「誰が節操なしだ、ちゃんと仕事こなしてるだろ?」
「女引っ掛けるサイテー野郎がよく言うわね」
「中瀬さんは趣味がおかしいだけなんだって」
「どうだかね、あんたなんてどうせ可愛ければいいんでしょ?」
「それは.....ちょっとはあるけど、俺は一緒に居て安心できる子がタイプだからな。まぁ中瀬さんや美久みたいな美人で可愛い人に好かれるとは思ってねぇよ」
「美人.....可愛い..........んふふ」
「おい、いきなりどした?」
「なんでもないわっ。ちょっとマーキングでもしようかなって」
美久の俺の腕をとって掴んできた。その仕草は兄に甘える妹のように幼く見えるが、成人してもまだ育っているという豊かすぎる2つの双丘がこれでもかと押し付けられていて、悪魔的な破壊力を持っていた。
「ちょちょちょちょっ!近すぎだって!」
「なにが?これは家族のスキンシップみたいなものじゃない?」
「い、いやさっきから........胸が」
「ふふふっ、じゃあいつも頑張ってるご褒美ってことで」
なん.....だと........それじゃあ............合法的なあれか?
まあ親戚で家族みたいなもんだから流石に欲情はしねぇけど
この感触はアリだよなぁ..............
「なんか勘違いしそうだから言っておくけど私が家族でも親戚でもこんな真似するのは1人だけだから」
「!!!!!!」
「承知しておいてね?」
余裕の表情で俺に胸を押し付ける美久は、家族だと分かっていても頬が赤くなるには十分すぎた。
「ふふふっ、照れすぎ....セイは可愛いわね」
「ちょ、からかうのやめろ。その呼び方は中学校までって言っただろ?」
「私、これからお姉さんでいくから」
「どうだか、身長は変わんねぇぞ?」
「私にはこれがあるから」
ブルンっと美久は胸を張ってみせた
「巨乳のお姉さんするには身長が足りてねぇだろ」
「合法ロリ巨乳お姉さんという属性は強いのよ」
「自分で言うなよ」
カランカラン
なんてどうでもいい話をしていたらお客さんのようだ。俺的にはいいリフレッシュになったしそろそろお客さんが増える時間帯だ。気合をいれるか。
「いらっしゃいませ〜!」
ドアを開けてやってきたのは三人組くらいの女子高校生だった。制服が端麗のやつなので同じ高校だろう。まぁ俺は変装してるので分かりはしないと思うが........
「ほらほら見てよあの人〜ちょーカッコよくない?」
「うっわイケメン、これ彼女いるんじゃない?」
「いや、ワンチャンあるって!」
前にいる二人がひそひそと何か話しているようだ。なんとなく俺見て言ってる気がする。早く注文してくれると助かるんだけどなぁ。
「ねぇ、あの子達知り合い?」
「いや全然知らんし、知ってても公私混同は避けるよ」
「ならいいけど..............」
俺は例えノリィが来たとしても知らない振りをするだろう。仕事とプライベートは完全に分けないと店のイメージにも関わる。
っていうか後ろにいる金髪お嬢様ヘアの人どっかで見たことがあるような無いような........ちょっと声かけとくか
「あの、後ろにいらっしゃる方、ご注文お聞きしますよ?」
「あ、えっと、その、ああぁ.......コーヒーを一つ」
「こちらからお選びいただけますか?」
「あ.......近い..........こ、コロンビアの」
「はい、かしこまりました。他に何かございませんか?」
「ひゃあ......大丈夫ですぅ」
なんかめっちゃテンパってたけど注文できたみたいで良かった。でもさっきより頬赤くなってるしやっぱり体調悪いんじゃないのか?
「あの、お客様大丈夫でしょうか?」
顔をもっとよく見るために俺から顔を近づけることにした。見方によってはセクハラなので注意したい。
「ひゃぁああぁあ近いよおぉぉぉぉぉ」
「も、申し訳ございません!不用意に近づきすぎました」
「..............大丈夫ですぅ」
アウトだった。全然注意してどうにかなる問題じゃないわ。ってなるとこれはマニュアル23だな。
「美久、受付しばらく頼めるか?」
不祥事を起こしてしまった場合、早急に謝罪をして、事が済み次第他のものに受付を変わる。謹慎みたいなもんだ。
「任せなさい、というか代わりなさい。嫌な予感が......」
「だめえぇぇ!!」
「「え?」」
「お願い、あなたがやって?」
なんだこの人?めっちゃ上目遣いで目キラキラさせて......マジで大丈夫?
「承知致しました。先程のようなことがないよう肝に銘じます」
「あ....いや.....別に.....もう一回......ぅう」
「どうされました?お客様?」
「お客様じゃやだ!架純って呼んで!」
「架純?..........まさか」
「お願い!呼んで!」
「はい、かしこまりました架純様」
「ひゃあああぁぁぁぁぁ」
「お好きなお席でお待ち下さいませ」
「ひゃい、ありがとうございまひた」
彼女は奥の席に行ったようだ。にしても不思議な人だ、聞いていたイメージと全然違う。今どきひゃいなんて天然記念物どころか絶滅危惧種だぞ?まさか見れる日がくるとは。
俺はその後、妙にテンションが高い他の二人の注文を聞いた。こっち見てニヤニヤするのほんとやめてほしい。心臓に悪い。
そんでまぁ..........なんだ?
壁に押し倒された............美久に
「ねぇどういうこと!?あの金髪だれ!?」
「ちょっと落ち着けって、早くオーダーこなさないと」
「母さんにさっき頼んでやってもらうことにしたからオーダーは大丈夫だし、受付も他の子に融通聴いてもらったわ」
「うっわ、店長の娘権利、悪用しすぎだろ」
「どうとでも言いなさい、それよりあの金髪は何?」
「九条架純.......親はなんかの企業の社長らしくてその御令嬢ってわけな......そんで俺と同じ高校の二年生......で氷の女王様って呼ばれてるらしい」
「あんたこの姿であの子と会うのは始めてよね?」
「多分そうだ、受付やってて見たことない」
「あんた...........やっぱりさいてーね」
「なんでそうなんだよ!」
俺が何したってんだ!?
❖☖❖☖❖
「架純ちゃーん?さっきのは何かなぁ?」
「.................」
「私達になら言っていいのよぉ?」
「.................」
「頑なに喋らないねぇ.....」
「そうだねぇ....................」
「「ニヤリ」」
「いやーそれにしてもあの人超カッコいいねぇ」
「............」
「それねぇ、あのキリッとした顔たまんない」
「............」
「やっぱり私アタックしてみようかな」
「!!......」
「じゃあ私も攻めてみようかな」
「!!!!」
「ライバルだねあたし達」
「負けないよ絶対ね!」
「そんなの駄目よ!!!!」
「「....................」」
「彼は私の人よ!例え親友でも絶対に渡さない!」
「「架純ちゃん..............」」
「絶対!絶対だからね!」
「「嘘だよ」」
「え!?嘘なの??」
「いやーボロ出しましたなぁ架純ちゃん!」
「あの女王様がここまで溶けちゃうなんて........すごいねあの人」
「あんなドロドロな架純ちゃん見たことないよ」
「完全に堕ちている顔してたよね」
「そうそう、途中からひゃいとか言っちゃってさぁ」
「見てるこっちが恥ずかしくなっちゃった」
「二人共...............」
「でいつから好きなの?一目惚れって感じじゃなかったし前にどこかで会ってるのかな?」
「私も聞きたい。絶対になにかあると思ってたんだよね」
「分かったわ......話すわよ」
「やりぃ!」
「恋バナ最高〜!!」
「ちょっと!聞くんだったら真面目に聴いてよね」
「「分かってるよ」」
「えっと....どこから話せばいいかしらね......
..........
......
.....
❖☖❖☖❖
「お会計は1490円です」
「は,,はい.....現金で.......」
バサッ
「架純様それは一万円です。そんなにいりませんよ?」
「あぁぁ!ご、ごめんなさいぃ」
「大丈夫ですから、慌てないでください」
「ひゃああ....えがおきゃっこいぃボソッ」
まじで何言ってるかわからん。後ろの二人はニヤニヤしてるし、美久は多分ブチギレてるし.......俺.....耳鼻科行こうかな.........
「では.....架純様と友人の方々、またのご来店お待ちしております」
「ひゃい.....ありがひょうごひゃいました」
「「ありがとうございましたー」」
カランカラン
「セイ!今日残業しなさい!」
「え!?俺このあとゲームする予定だぞ!?」
「知るか!黙って付き合えって言ってんの!」
「ちなみに...........残業代は出るのか?」
「タダ働きに決まってんでしょ!!!!!」
「ふざけんなァァァ!!!!」
この後、俺は明日学校あるのにも関わらず9時まで働き続けた。
さすがにもう今日は色々と限界だった。
「もう....ムリ.....疲れた
助言.......聞けなかった.....
明日......どう.....しよ」
そこで俺の電源は落ちる。
明日の俺、後は任せた。
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