第7話 味方どこ!?

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 俺は無我夢中で廊下を走っていた。食堂に向かっている人間が俺をギョッとしたように見ているのが分かる。そうだ分かってる、俺は今どんな目で見られているか分かってる!だが.......俺は今それどころじゃないんだ!


「うわぁぁ...........あ....あぁ.......」


 廊下の奴らの憐れむような目線を我慢しながら俺は走るが、流石に多くの視線に晒されすぎて我に戻ったので、知らず知らずの内に出ていた奇声を抑えた.................


 陰キャの俺にこの目線はキツすぎる。早く教室帰りたいが目線は気になる..........今日はいつものとこじゃなくて他の道で行くか......


「となると..............西側かな」


 俺がいつも使っている中央階段から西側階段までは結構距離がある。科学室とか実験室とかしかないこの道を通る人はほとんどいなかった。


 そんな廊下の壁には色々とポスターや委員会の書類が貼られていた。そして


「学校掲示板ねぇ...........」


 掲示板には学校の色々な情報が掲示されている。学校内での表彰や学校外での端麗生の活躍などが主になっていて各階に一つずつ置かれている。今回は第502号らしい。


『陸上界に現れた超新星!?我が校の誇る陸上の太陽姫!進藤真昼へのインタビュー!!』


 掲示板の写真には金髪のポニーテールをなびかせたハーフ顔の美少女というべき人間が映されていた。けしからんことにユニフォームらしき服を着ていたので体のラインが浮き彫りになっている........スレンダーだなコイツ.....BかCくらいか....何かとは言わないが


『全国大会出場について聞かせてもらえますか?』


『はい、私は中学生の頃から陸上をやっていたのでこの舞台に立つのは始めてではありません。ですが高校での全国は始めてなので、初心を忘れず気を緩めず、端麗高校として恥じないような結果を出したいと思っています』


『進藤さんと同じ中学出身の方に中学では歴代一位の記録で優勝していたとお聞きしましたが、一年時は不調だったのですか?』


『中学最後の大会で足を怪我してしまってから陸上への恐怖心が募り、一年時は大会への出場をやめていました』


『そうなんですね、ということは恐怖心を乗り越えたと』


『乗り越えたというか受け入れたという方が正しいかもしれませんね』


『なるほど..........大変だったんですね』


「へぇー全国行くのは高校で始めてなのか.......ってっきり二年生だから二年連続で出てると思ったわ」


「その時は、悩んでたんだよね」


「!????」


 後ろを振り向くと金髪をポニーテールにしたハーフ顔美少女が立っていた。そんな彼女は心底つまらなそうな、蟲でも見ているんじゃないかと思うような目をして俺を見ていた。というかこの流れ最近やったな。デジャブすぎるだろ。


「き.......きみはこの掲示板の.......」


「そう、私が進藤真昼、掲示板この階で見てる人がいるなんて知らなかった。」


「いやまぁ通りすがりっていうか.......なんつーか」


「そう.........道のど真ん中で見るのはやめてくれないかな?邪魔なんだけど」


「そ、そうか.........わるいな」


 何だコイツ、イメージと全然違うんだが........こんなに態度悪いなんてほんとに太陽姫か!?氷結姫だろ!某酒かよ!!!


「そんなジロジロ見られると気持ち悪いんだけど......行くなら早くいってくんない?」


「ご、ごめん。もう行くわ」


「あっそ」


「チッ.........態度悪すぎだろボソッ」


 俺は言われた通りそのまま階段へ歩く。まじで何なんだあいつ、初対面だぞ!?心象悪いしほんと無駄に冷静になるわ......って心の中で思いながら何も言えねぇのは俺らしいっていうか.....





「どこかで...........................」



 なんか後ろから聞こえたけど、離れすぎててもう聞こえねぇし振り向きたくもねぇし、さっさと教室行くか


 俺は二段飛ばしで階段へ駆け上った。





 ❖☖❖☖❖


 ガラガラ


「おっ!たいっちゃん!遅かったなぁ!」


「当たり前のようにゲームしやがって、見つかったらどうすんだ?」


「見つかるという未来は無いんだぜ!」


「言い切るなぁほんと」


「っていうかなんでこんな遅かったんだ?いつも爆速で食べて爆速で教室戻るのがお前だろ?」


「いやそうそうそうそうそう!!!!」


「近けぇって!」


「お前にしか相談できねぇ話があるんだ!!聞いてくれ!!」


「馬鹿を言え。今までどれだけ我が貴様に与太話をしてきたと思っている。…貴様の与太話ぐらい聞いてやるさ…ふっ、弱者に手を差し伸べる我、超かっこいい」


「お前それ一言一句パクってるって知ってるからな?」


「ギクゥゥ!!」


「いいか?よく聞け?そして絶対に他言するな!そして大きい声を出すな!!」


「俺レベルになれば絶くらい簡単にできるから安心しろ」


「誇張しすぎだがそれでいい」


「よし、じゃあ聞かせてくれやぁ」


「とりあえず大前提として...........」


「うむうむ」


「黒の女神が俺のこと好きみたいなんだよね......」


「殺すか、とりあえず消し炭にしてやるぜ」


「落ち着け!落ち着け!その右手を俺に向けるな!シャーペンも持つな!」


「へいへい、冗談だってぇの。殺したいのは事実だけど」


「矛盾するな!って話戻るぞ」


 ………


「俺がカフェで働いてるのは知ってるだろ?駅前の。でそこで中瀬さんと会ったんだよ」


「それで?なんで好きって分かったんだ?」


「そん時になんか妙な態度取るなぁと思ってたんよ。でちょうど中瀬さんから恋愛相談見たいのを受けててーっておい!」


「シュコーシュコー」


「落ち着け、恋愛相談を受ける仲ってのはクラスメイト以上友達未満みたいなもんなんだ!!」


「そんなわけねぇだろうがぁぁぁぁぁぁ」


「え!?っておい!」


「お前がそんなモテるわけねぇだろぉぉぉ!!!」


「おい!ちょっと説明するから!!」


「今すぐお前の息の根を止めてやr



〜五分後〜



「なるほど........」


「というわけなんだが」


「はぁぁ......お前のことだ。なんとなく分かる。どうせ一切興味のなかった中瀬さんに対してどうすればいいのかわかんねぇってとこだろ?」


「!!........まあ大体そんな感じだ」


「お前が恋愛についてあんまりよく思ってないのは知ってるよ。どんだけ傷ついたのかも知ってる。あん時は俺もお前の心象を察してなんにも言えなかったけど今なら言える」


「.........................」


「過去に囚われんな、逃げんな、立ち向かえよ。そろそろいいんじゃねぇの?」


「.......................」


「ちょっとはそういうのしといたほうがいいんじゃねぇの?親友の言葉だぞ?染み渡れっつうの」


「向き合うよ......俺と.....中瀬さんに」


「それで............どうすんだ?」


「え?どうすんだって?」


 ノリィは俺にスマホを見せてきた。なになに?


「お前と黒の女神がで食堂で食べていたってのが裏学校掲示板に載ってたぜ?動画付きでよ」


「うわぁ!!なんだこれ!!」


 そこには俺と中瀬さんが一緒にご飯を食べている所が、後ろからしっかりと動画に映されていた。ってか裏学校掲示板??聞いたことねぇぞ!!


「逃げ出すところまでしっかり見えてる」


「今見てみると悲惨だな.......」


「まぁそれはいいとして、お前が求めてるのは俺のアドバイスだろ?多分」


「そこまで分かってんのか........」


「ちなみに俺は助言しない。お前が考えろ」


「まぁ俺の問題だしな」


「俺はただ背中を押しただけ、そこからはお前が進め」


「ノリィ......お前やる時は........」


「こういう立ち位置カッコいいよな、示唆役憧れてたんだよね」


「それ言わなければカッコよかったかもな」


「まぁ考えろ!自分でな!」


「たまに意見聞く位は.......」


「俺は傍観者として見届けるぜ」


「考え直すことは?」


「あると思うか?」


「無いな.......はは」

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