第1話


「おお……」

 纏まらなかった視点を前に向けるとローブを着た男達が何やらこちらに向って唖然としていた。

 キョロキョロと辺りを見渡すと石造りの壁が目に入る。下を見ると蛍光塗料を塗られて作られたかのような幾何学模様と祭壇。

なんとなくファンタジー物に出てくる魔方陣に似たのがある。そんな感じだ。

その祭壇に俺達は立たされていた。

ここはどこだろう?

「おお、勇者様!ともう一人?ともかく聖樹様の導きのもとよくおいでくださいました。大陸の守護にご協力をお願いします!」

「はい?」

「それはどういう意味ですか?」

何だろうこのフレーズ。ネット小説とかで読んだ事があるような気がしないでもない。

「俺達はなんでここに?」

「色々と込み入った事情があります故、ご理解頂ける言い方ですと、勇者様を古の儀式で召喚させていただきました」

「召喚……」

「しかしながら召喚する予定の勇者様は一人でしたが2人召喚されたようです。」

隣を見ると夢で光を持っていった男がいた。

「そこで、この鑑定の水晶でお二人のステータスを確認させていただきます。そのあと説明いたしますので」

ローブの男は水晶の準備を始めた。

少し落ち着いてきた。

そういえば持ち物ってどうなったんだ?

俺は自分を確認してみると服装は、出かけた時と同じ服で、スーパーで買った袋は持っていなかった。

鑑定の水晶の準備が終わったようだ。

「さて準備が終わりました。どちらから鑑定いたしましょうか?」


俺は趣味で読んでいたラノベでさんざん使いまわされた巻き込まれ召喚で巻き込まれた方に勇者がざまぁされる展開を数多く出てきていたのを思い出していた。あの夢で見た光が勇者の力だったら今の俺はどうなるのか、嫌な予感がしていた。


「おおっ!キタコレ!ではあなたの方から鑑定してみてください。」

隣の男がニヤニヤしながら言っている。


「ではあなたから鑑定をしますね。

 鑑定!」


個体名 万丈 遊楽

職業 勇者


レベル1


ステータス

HP100/100

MP100/100


スキル

聖剣召喚

自己鑑定(勇者)


ほっよかった夢で光を持って行かれたから勇者じゃなくなったと思ったけど聖剣スキルもあるしもHP、MPも高い!よかった取り敢えず最初から巻き込まれた方より弱いってことはなさそうだ。

隣の男が俺の鑑定結果を見て青ざめているようだ。

光を奪えたから安心していたんだろう。


「おお、勇者様はあなたでしたか、しかしくらいが少ないですね壊れてしまったのでしょうか。

一応壊れてないかもう一人の方にも鑑定してみましょうか、いいですね」


なんだ"くらい"が少ないって


「鑑定!」


個体名 田中 吉郎

職業 魔法使い


レベル1


ステータス

HP1103兆3543億/1103兆3543億

MP1103兆3543億/1103兆3543億


スキル

炎魔法効率化

自己鑑定

身体強化(極)

聖魔法

聖剣術

アイテムボックス


「これはすごいギガ級越えですらこの大陸では珍しいのにさらに多いペタ級とは、レベル1からこれですと成長すれば伝説級も夢ではありませんな。職業は一般的なものですがステータス、スキルは一級品ですな」


なんだよこれステータスがグラグラゲームの売値と同じだしスキルも揃ってるし!やっぱりあの時のことは夢じゃなかったのか。


「水晶は壊れていなかったようですな。田中様、この大陸は今、存亡の危機に立たされているのです。どうか力を貸していただきたい。」

「報酬次第だな、まあ話だけは聞いてやるよ。」

隣を見ると急に自信を取り戻したのか、横柄な態度で返事をした後、こっちを見て勝ち誇ったかのようにニヤニヤと笑いかけてきた。

「さて田中様、王座の間にご案内いたします。どうぞこちらへ」

田中は勝ち誇った笑みをこちらに浮かべローブの男についていく。

「ま、まて俺はどうすれば」

「ああ、勇者か。まさか勇者がメガ級にも満たないとはな。まあいい、お前もついでについてこい。

ささっ田中様行きましょう。」

「キュリオス、お前は先に行って王に報告してこい。」

「はっ」

くそなんだよ、ステータスが低いってわかった途端これだよ。

俺達はローブについて行く。

ローブの男は田中と軽い雑談をしていた。俺のほうには一度も目を向けなかったけどな!

そうこうしているうちに玉座の間に着いた。


「よくぞ参られた、田中殿に勇者よ。

わしがこの国の王ライオネット=セージュメル36世である。

さてまずは事情を説明せねばなるまい。

この国は今滅亡の危機にある。」

俺は一応最後まで王の話を聞いた。

まとめると、

この大陸は、聖樹様の結界により守られている。

結界はテラ級以上の魔物を通さず大陸を守護するためのもの。人間は、テラ級を超えても通過できるが、聖樹様に加護を受けないとステータスにデバフがかかる。


数十年に一度、聖樹様の結界が弱まる時があり、その時に聖樹様から特別な葉を賜り、その葉を使うことで勇者が召喚される。


魔物の強さは、サウザント級、メガ級、ギガ級、テラ級、ペタ級、エクサ級、ゼタ級、セプティリオン級、伝説級、ゴット級に分かれている。聖樹様の加護が強い街の近くなどはサウザント級、メガ級の魔物しかでないが、大陸の端の方になるとギガ級より強い魔物か多くなるらしい。


聖樹様の結界が弱まる時に大陸の外からは強い魔物が集まってくるため、何もしなければ結界が突破されこの大陸が攻撃されるため、勇者の力が必要になるらしい。大陸の守護には大陸のさまざまな国から強者が召集され、勇者とともに守護に当たる。

この国は聖樹様から一番近い場所にあるため、特別な葉を用いる召喚を任されているらしい。

この召喚では職業が勇者ではないものも召喚されたことはあったが全員が聖魔法または、聖剣術を覚えていたらしい。

「であるからして、田中殿にはこの国、大陸をその聖魔法と聖剣術にて守護していただきたい。もちろん、成功したあかつきには最高の報酬を約束しよう。」

「ふん、まあ日本には戻りたくねえし、やってやってもいいけどよ、報酬をしっかりしてくれよ。」

「おお!協力してくれるか、強力な味方ができて嬉しいぞい。報酬は任せておけ。そなたのサポートとして姫をつけよう。おい!キャロライン」

王が呼ぶと幼い顔立ちのふんわりとしたドレスをきた美少女が入ってきた。

「田中様をサポートいたします、キャロラインと申しますわ。誠心誠意サポートしていきますのでお願いしますわね。」

「キャロラインはこの歳ですでにテラ級のステータスを持っているとても優秀な子じゃ。キャロラインよろしく頼むぞ。」

「かしこまりましたわ。行きましょうか、まずはこの城を案内いたしますわ。」

そういうと、田中とキャロライン、ローブの男は出ていった。


あれ、俺は?

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