第7話 逃避行
お父さん、お母さん、息子は4歳でテロリストになってしまいました。
親不孝を、どうぞお許しください。
探さないでください。遠い空の下でお二人の幸せを祈っています。
議会は紛糾していた。東部のメタから帝都までの道中で、山賊退治やインフラ整備をしてもらった領主からは、宰相に対する非難が沸き起こる。
「何のために辺境伯様の屋敷に乗り込み拉致をしようとしたのか? 何故帝国騎士団を勝手に動かしたのか? 陛下の御許可を頂いたのか?」
強引な対応で取り込みを図った宰相は、今回の責を負い辞任に追い込まれた。
余りの規模の大きな魔法を目の当たりにした皇帝は、大門と高架道路を示し宰相家に対して
「クリストフの流出は国家の損害である 1ヶ月で連れて帰って来い できない場合一族全員に死罪を与える」
と公開で宣言して、一族の女子供を牢に押し込めた。
バルスを訪れた辺境伯が、両親に向かい土下座をしている。
「辺境伯様 とにかくこちらにお掛けください 話はそれから」
「本当に今回の不手際 誠に申し訳ない 私が不甲斐ないばっかりに クリストフ君をこんな形で出奔させてしまうとは 本当に申し訳ない」
「スージーとアンが一緒にいるのなら必ず生きています 二人とも騎士団にいましたから」
「アン まじゅうっておいしいの?」
「はい それは美味しい物だと噂されています とても強いので狩がとっても大変ですが」
よし二人には秘密を告白してしまおう。
「スージー アン 驚かないで聞いてね」
「僕には 別の記憶があるんだ 全く別の世界で死んで ここに生まれ変わったんだよ」
「その世界には魔法が無いんだ でもいろんな魔道具みたいなものがあって すごい便利な世界だったんだよ」
そこからいろんなことを喋った。人間の事、動物の事、植物の事、地球の事ほんとにいろんな事を話した。
「はじめはね スージーの事をママだと思っていたんだ ミルクは美味しいし いい匂いがするし 優しいし 歌を歌ってくれるし とにかく大好き 今でもね」
スージーが抱きしめてくれる。
「でさ〜 ママのオッパイは パパがねぶってるから臭くて臭くて 嫌いだったんだ」
二人とも大笑い。
「そのうち 隣でやり始めるもんだから しかも3日ごとに ママ(スージーのことね)の事騙してるワルイ奴らは許さないって思ってたから それからママのオッパイは飲まなかったの」
「奥様は 訳がわからず泣いていらっしゃった頃ですね」
「だいぶん目が見える様になってから いつもみたいにママがオッパイを押し付けて 全力で拒否してた時に ふとスージーの角に触ったんだ 僕にはついてないぞって ってことは臭い人がママなの? ショックだったよ」
涙を流して笑ってます。
「それからなんとか お風呂で洗わせて やっと臭いオッパイから逃げ出せたんだ」
「アンはね とにかく好きになちゃった 綺麗だし可愛いし強いし 一目見た時から離さないって思ったよ 3歳児が笑っちやうでしょ」
アンが飛びついてくる。
「ボクの話は今日はここまでね とにかく家を建てる場所を決めよう 森の中に行こうと思うんだけどどう思う?」
「とにかくクリス様がいればどこでも大丈夫と思います」
「魔物がいそうで 水場があるといいな とりあえず奥に行こう」
水辺の高台でちょっとした広さがある。
「ここにしようか」
家はちゃっちゃと建てた。大きなリビングと寝室1部屋バストイレのシンプルな家だった。
家ができたらご飯だ。
これはもっと簡単だった。
ボク達の匂いに魔獣が寄って来てくれる。美味しそうなイノシシタイプの奴の頭に、南○水鳥拳を入れる。捌いて血抜きして皮を剥ぐ。なかなかグロい作業だった。
とにかく何も無いので、石を平たく固めてフライパンに加工する。漢の料理は、焼く、ただ焼く、ただただ焼く。
かれこれ3週間、3人ともなかなかワイルドな匂いになって来た。
その頃森の外では、森から煙が上がっているのが発見されたが、そこまで辿り着ける戦力がなかった。森の奥まで行けるのはクリストフ達だけと確信されていたが、宰相家の騎士団ではそこまで辿り着けなかった。
この事は皇帝にも報告されたが、魔物が強くたどりつく手段が無く、そこまで行けない絶望は大きかった。
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