第11話 倒せ!相模の巨人兵!
「だいたい、
「あのときは、こっちは巻き添えでひどい目にあったんだ。あんなの『竹馬』で充分だ」
修験者の宗哲が嫌な顔をする。
「まあ、良いか。俺たちが相模に行った二年前は、風魔党は伊勢家にまだ仕えていなかったんだ」
「「それでしたら、風魔党をごっそり丸ごと配下に召抱えたのですか⁉︎」」
彦次郎と彦三郎が驚く。
「いやいやいや、それはダメだよ。北条はんこと伊勢家も新しく自領にした土地の忍びを勝手に丸ごと持っていかれたら、困るでしょう。俺は伊勢家と敵対する気は昔も今もこれっぽっちもない。むしろズッ友で仲良くしたいんだから」
「「はあ、そうなのですか」」
「だから自重して半分だけこっちに来てもらった」
「「それでも半分も!」」
「そこんとこは、伊勢家も風魔も俺もみんな得する三方良しで話をまとめたから大丈夫」
「「サブロウさまは近江の
「何言ってんだい。良いことはどんどん見習うべきだろ?それが進歩ってもんだ。みんなで幸せになろうよ。わかったか!」
「「ははあ!」」
「よし話を戻すぞ。俺たちが相模に着いたばかりのころは、伊勢家は伊勢家でまだ相模を完全に掌握できていなかった。敵対する三浦家が籠城している三崎城を落とせないでいた。三崎城には城主の三浦道寸と嫡男の三浦
ここでサブロウはいたずらっぽくニヤリと笑い、皆を見回した。
「嫡男の三浦荒次郎は身の丈が七尺五寸(約二二七センチ)もあり、一丈二寸(約三六四センチ)の金砕棒を振り回せば一度に五人、十人も生命を奪い、殴り殺した敵の数五百を超える猛将だと言われていた」
「「「おおおお」」」
稲葉兄妹が驚く。
「面白そうだから見に行ったら、たしかにソイツがいた。アレは並の兵では歯が立たんだろうな。まさしく巨人兵だ。攻める北条側もソイツ相手に難儀していた。デカいから間合いはすごく遠いし、長い棒を振り回したら迂闊に手が出せない。弓矢をいかけても分厚い鎧を着ているせいか、矢が刺さっても全然効かないんだ」
「それはすごいですね。伊勢家の方はよくそんな化け物を倒せましたね」
ヨシノが感心する。
「いや、さっき哲つぁんがチラッと漏らしたけど、本物の化け物じゃあない。奴は大きめの鎧を着てスティルトという、うーんと丈が高い竹馬をはいていただけだなんだよ」
「「「なあんだ」」」
「なあんだとはなんだ。強敵には違いないぞ。まあ、欠点だらけだから俺たちなら退治は簡単だ。でも、このまま放っておいて誰かほかの奴らに荒次郎が倒されるのも俺たちにとってまずい状況だった」
「どうしてでしょう?」
「例の風間小太郎殿にも、身の丈が七尺二寸(約二一八cm)あり、目や口が裂けて、牙が4本出ているなんて噂があってなあ。」
「「ということは風間小太郎殿も」」
「当然竹馬巨人に仮面だろうと俺たちは予想したさ」
「「じゃあ、三浦荒次郎の竹馬も」」
「風魔党がこっそりと三浦家の味方をしていたと確信したよ。それがバレたら今度は相模を掌握した伊勢家に風魔党まで征伐される。それはマズイ。もったいないお化けが出る。だから、俺たちは」
サブロウはそこで区切ると
「伊勢家と風魔党の仲裁をするために、風の谷、じゃないや風間谷まで
と続けた。
「「「なんでそうなってしまうのですか⁉︎」」」
「『三崎城の竹馬巨人兵は風魔のモノでしょう?雑兵をビビらせるのは簡単だけど、ちょいと頭を使えばいくらでも攻略法を思いつくから、そろそろ引き上げないと危ないよ!』といった具合にご注進したのさ。『なんなら、小太郎殿の目の前で撃破してみましょう!勝ったら、俺のいうこと聞いて伊勢家に出仕しなさいよ。俺が負けたら伊豆箱根の山中にある、伊勢家も知らない宝のありかを教えるよ』ってね」
「「「ほう、ほう」」」
「さて、ここに竹馬巨人兵の複製をご用意しました。段蔵さん、こちらへどうぞ!」
「へい!」
チカがクイズ番組のアシスタントのようなセリフを言うと、待ちかねていた段蔵が直ちに応えて、身を屈めて大広間に入ってきた。
「「「ええ⁉︎」」」
「「「「おおおおおおおお」」」」」
「「「「でっけええええ!」」」」
歓声がわき起こる。
スティルト型竹馬をはいた段蔵の身の丈は七尺(約二一二センチ)どころか八尺(約二四二センチ)はある。当然だが脚が異様に長いフォルムだ。胴にはかなり大きめに作ったビア樽みたいな革のよろいを着て、頭にはシンプルな作りのカブトに頬当てまで装着。籠手をつけた両手にはやたらに長い物干し竿のような細長い竹の棒だ。
「ここからが稲葉家の皆さま、そして元風魔以外の皆さまへの問題です。あ、宗哲さまもなしで」
チカが座を仕切る。
「わかっておるぞ。まあ、生き証人だからな」
宗哲は苦笑している。
「サブロウさまたちはどうやってこの竹馬巨人兵を撃破したのでしょうか?回答はいくつ出してもかまいません。わかった方から手をあげて下さい。こちらが指名してから答えてくださいね。正解した方にはなんとお米一俵を進呈します」
「「「「「「おおおおおおおお」」」」」」
場が非常に盛り上がる
「よいですか、早く手をあげた者勝ちですよ!仲間で相談もありです。でも、元風魔の方に聞くのは反則です。そんな悪い子は去勢しちゃうからね♡」
「「「「「「おーう」」」」」」
男性陣のテンションが下がる。
「「「さあ、みんなで考えよう!」」」
チカとカズマとサブロウの声がハモる。
祝言はカラオケ大会からクイズ大会に出し物が変わったようだ。
「はい!」
「彦三郎さん、どうぞ!」
「全速力で突進して脚を取って倒す!」
「「「「「おおおおお!」」」」」
「それでは、実験してみましょう!」
「へ?」
「カズマさん、おねがい!」
「
彦三郎がカズマに引っ張られて大広間の端っこに連れて行かれる。
「
「段蔵!例の掛け声忘れるなよ!」
「へえ、彦三郎さん。どうぞ」
「どうなっても知らんぞ!おおりゃあ!」
彦三郎が竹馬の脚を狙って突進する。
それを段蔵が脚を交互に大きく引きながら交わしつつ叫ぶ!
「チャーーシューーメーーン!」
物干し竿がビュンと唸りを上げて彦三郎の尻に振り下ろされる。
スパーーーーーーーーーーーン!
「いっっってええええええっ!」
ケツバットならぬ。ケツ物干しである。
後ろ手で尻を押さえた彦三郎は尺取り虫のような姿勢で突っ伏し、うめいている。
「「「「「あははははははは!」」」」」
もはや、お笑いウルトラクイズである。
「彦三郎はやっぱり脳筋だな、ヨシノ」
「残念、彦三郎さん。不正解です。さあ、ほかに誰かいませんかあ?」
「はい!」
「彦次郎さん」
「カズマ殿の使うような円い盾を遠くからぶん投げてどこかに当てる!」
「おお、彦次郎は考えたな」
「それでは、実験してみましょう!」
「え?」
「カズマさん、おねがい!」
「彦次郎さん。コレ貸すからこっちから投げてみて!」
カズマが蛇の目模様の円楯を彦次郎に渡す。
「かたじけない。ようし、いくぞお!おりゃああああ」
彦次郎が盾を円盤投げだかハンマー投げだかのようにクルクル回りながら段蔵のほうにぶん投げる!はじめてにしてはなかなか筋がよさそうだが・・・・・・
「「「「ああああ惜しい」」」」
わずかにそれて外してしまった。
「くそっ!もう一度だ」
彦次郎が円楯をとりにいく。
「おい!彦次郎!」
サブロウが真顔で声をかける。
「いかがなさいましたか?」
「うしろ」
「え?」
彦次郎が身体を捻って後ろを振り向くと、段蔵が思い切り物干し竿を振りかぶっていた。
「チャーーシューーメーーン!」
物干し竿がビュンと唸りを上げて彦次郎の尻に振り下ろされる。
スパーーーーーーーーーーーン!
「いっっってええええええっ!」
ケツバットならぬ。ケツ物干し2である。
後ろ手で尻を押さえた彦次郎は尺取り虫のような姿勢で突っ伏し、彦三郎と並んでうめいている。
「「「「「あははははははは!」」」」」
やはり、お笑いウルトラクイズである。
「彦次郎、まだ勝負中なのに油断大敵だな」
「残念、彦次郎さん。不正解です。さあ、ほかに誰かいませんかあ?」
「ああっ、わたしわかった!はい!」
ヨシノが勢いよく挙手する。
「おおっと、ここで本日の主役、幼妻の新婦ヨシノさんが手を上げたあ!」
「「「「「おおおおお!」」」」」
「おい、ヨシノ大丈夫か?」
「大丈夫!自信があります!ただし、道具が一つと、わたしの身体じゃ素早さはともかく力が足りないので、誰か男手がいるのですが」
「ほほう、じゃあそこそこ力があって素早いとなると、金兵衛!うまくいったら米一俵お前にもやるからこっち来て手伝え!」
「アンタ!行って稼いでおいで!」
「おうよ!コイツはついてるぜ!」
嫁の若葉の声援を背に、肩幅がやたらゴツく眉毛がつながった若い鍛治職人の金兵衛がやってきた。
「じゃあ、作戦会議です。金兵衛さん、よろしくおねがいします」
「おう!任せとけ!さあ、あの竹馬の巨人をやっつける秘策を教えてもらおうか」
「はい!まずは・・・・」
といったところで続きは次回です。
会わな、北条は〜〜〜ん♪
つづく
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