寄り道

夕暮 春樹

第1話

その日は、たまたま寄り道をして帰っていたからいつもの帰り道とは違う道で帰っていた。

すると、道端に置いてあったダンボールからガサガサと物音がした。

そのダンボールの中を恐る恐るのぞいてみると、一匹の子猫が捨てられていた。

よくダンボールを見ると、『 拾ってください 』とだけ書いてあった。

僕の家で飼ってあげたいけど、両親が許してくれるかわからなかった。

だから、少ないお小遣いを使って猫缶を買ってあげると、子猫は嬉しそうにして食べていた。

その日の夜。

両親に帰り道であったことを話してみた。


「ねえ、かっていいでしょ」

「だめ、薫は猫さんの面倒見れないでしょ」

「みれるもん!ちゃんとみれるもん!」

「ダメなものはダメ!」

「やだ!ネコさんかうの!」

「それでもダメ!」

「やだ!かっていいっていうまで、僕ごはんたべないから!」

「わかった、そこまで言うならちゃんとお世話するんだよ」



次の日。

小学校が終わると、駆け足で子猫のところに行った。

ついでに、昨日お母さんから貰ったお小遣いで猫缶を買って、子猫を拾って帰った。

子猫ははじめの頃は、見知らぬ所に来て怯えているかんじだったけど、猫缶を目の前にするとさっきまで怯えていたのが嘘のように目を輝かせて食べていた。

もちろん名前は昨日の夜に決めていた。

『 ゆき 』雪のように真っ白な猫だからそう名付けた。

両親には安直すぎって言われたけど、ゆきは気に入っているみたいだから決まりだ。

今日からよろしくね、ゆき。


───10年後───

10年たった今でも、家を出るときは見送ってくれて、帰ってきたらお出迎えしてくれる。

もちろん、夜に寝るときも一緒に寝ている。

10年前のあの日、寄り道して帰ってなかったら、ゆきは今僕のそばに居なかったかもしれない。

今では、僕がゆきと出会ったあの日は大切な日だ。


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