てぃんだろす との遭遇
ここは
近くにある榎山の
榎山神社の参道周辺に作られた集落が元になっているため
このあたりの地域も榎山と呼ばれている。
そして今は、8月も半ば
夏の照り返す日差しの中を一人の少年が歩いている。
「あち~ 太陽暑すぎ、こりゃ世界が滅びるんじゃないか~」
市民プールの帰り、防水のバックパックを背負い
アイスキャンデーを齧りながら太陽に向かって悪態をつく。
夏休みの残りの日数と、課題の残りを思い出しながら日差しの下をトボトボと歩く。
「そういや、課題図書をまだ借りてなかったな」
また家から出るのは面倒だと踵を返し、そのまま市立図書館に向かう
向こうに見えてきたのは
『
と大きく書かれた建物
中に入ると、まるで生き返る様な涼しさだ。
少しだけやる気を取り戻して課題図書を探す。
さすが、市立図書館だ。ウチの高校の課題図書もコーナーを作ってくれている。
しかし、悲しいかな・・・
そのほとんどが借りられ、残っているのは・・・・
「E.T.A.ホフマン 幻想文学か、先生方、どういう基準で選んだんだ」
その本を仕方なく借りたものの・・・・・
「カード忘れた・・・」
これから、家に帰って図書館のカードを探して、もう一度図書館へ・・・無理だ。
司書さんに声を掛ける。
「すみません、市立世羅高校2年の
図書館のカードを忘れてしまって、学生証で借りられますか?」
よし、ありがとう司書さん。この本は、かならず期限までには返す。
図書館を出て、歩き出してすぐに、周囲が暗くなったように感じた。
図書館の中との温度変化で体調をおかしくしたのかな?
周囲は耳が痛くなる程のセミの声、頭が痛くなってきた、
ヤバイ! これっ? もしかして熱中症か?
周囲を見回して日影を探す・・・・
建物の影にある自動販売機を見つける、ついでにスポーツドリンクでも買おう。
そう思って自動販売機に近づき、俺は変なモノを見つけた。
それは、存在自体はよくあるモノ、単なる段ボール箱だ
しかも、箱には黒い太マジックで、ご丁寧に『ひろってください』と書いてある。
なのに、中には何も無い?
中身は逃げ出した? それとも誰かが連れて行ったのかな?
そんな事を考えていた、ほんの数秒・・・・
その数秒が俺の人生を決めたのかもしれない。
段ボール箱の中、左奥の隅にいきなり黒い煙が上がって、ソレは現れた。
華奢なカラダ、黒くて不思議な光沢のある滑らかな体毛、つぶらな紫の瞳、
垂れた耳、細長くて赤い舌 ・・・・・ティンダロスだ。
まずい、目が合った。
俺は後ろを向いて逃げ出した。
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