二十頁目

滅多に見つからないものならば

荒れた岩の裂け目にでも手を伸ばすけど


握った拳が裂け目にぶつかり血が出て初めて

ああこれじゃなかったんだと気づくんだよ


捨てるしかなかったそのなにかは

目にすることもなくまた落ちてゆくんだ


その手には傷しか残っていなくて

だけどそのひどい痛みに安心もするんだよ



 ⌘



とある花

地面を這って咲く

それは美しい

わたしは

這うことすら

できないのだから



 ⌘



ひねり搾り

かさね揺られ


重なってゆくものは

ほんものなのかしら


ねえそこの貴方には

どう映っているの


つるり硝子のむこう

人差し指でつつく



 ⌘



ことばなんていらないの

わかっているけれど

これしかよういできないのよ

いまのわたしには



 ⌘



ふかふかして にこにこして

あったかいね あったかいね

ゆめのなかでも あえますように

ひっそりねがって おやすみなさい

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