第3話

やっぱり覚えてない

僕は首を振ろうとしたが、コルセットで動かない。目をキョロキョロさせて

「見てない」

「本当に見てない?」

「うん」

看護師はニヤニヤしながら

「じゃあ私のことは覚えている?田村君」

「えっ?」

誰だなんだ。えーわからない。

「やっぱり覚えてないんだ」

「……」

「小学6年のとき、転校してきた渡辺奈々子」

「渡辺…」

必死になって記憶をたどったが、思い出せない。転校生の渡辺奈々子か…

「私は覚えてる。デブ、ブスっていじめてくれたからね」

「いやっ…いじめなんて」

「いじめたほうは覚えてなくても、いじめられたほうは絶対忘れない。田村君が運ばれてきた時、そのネックレスを見て確信した。あの田村だって」

あちゃー最悪だ。この状態で昔、いじめた相手

と遭遇するなんて…

「で、僕を殺す気?」

「さあ、今日は定員オーバーだから、明日かな。まあアンタ動けないから、じわじわと苦しんでもらう」

"シャー"

足音が離れていった。

「どうするんだ?」

                つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る