第017話 HARBE《ハーブ》
「失礼します」
スカイライナーを連れたカズキは工室より一つ上の階にある部屋をノックした。
「おや、いらっしゃい
「はい」
スポーツバッグを降ろすと、カズキは改良したばかりの蒼い手甲を差し出した。
「ふむふむ……見た目は前と同じみたいだね。どこを変えたの?」
「撃ち出す
「それは良いね。回数に制限をかければ、前みたいなことにならないだろうし。【
「起動の確認だけです」
「そっか。じゃあテスト運転のついでに、ちょっと私の仕事を伝ってよ」
小首傾げてカズキも奥の部屋に踏み入れば、そこは小さな作業部屋だった。
煩雑な部屋の中央には簡易な作業台が設置されていて、その上には白い虎を模した
「この虎は?」
「生徒ちゃんの
言われてみれば確かに、白い虎の
「イノシシか何かと戦ったんですか?」
「猪くらいじゃあ、こうはならないでしょ。原因はまだ聞いてないけど
にこり、
カズキは嫌そうに眉を
シュッ…と衣擦れのような音がして、引き締められるような感覚が全身を覆う。
強化スーツ【
素早く動き回る
そのため
白衣のような学生服と、その下に着けている黒いアンダーウェアがそれだ。
人間の体表面に流れる微弱電流や、脳波・血流・筋肉などの僅かな動きを感知し装備者の身体的特徴や運動能力から【
そのデータを
医療・介護・土木・建設現場などにも用いられている【
更に【
そうして身体機能を強化したカズキは、
工室に
「お疲れ様。起動にも問題はなさそうだね」
「そうですね。それじゃあ、俺はこれで――」
「まあまあそう言わないで。もうちょっと先生の御手伝いをしても
「手伝ったら単位貰えるんですか」
「ううん。それよりもっといいモノ」
「なんですか」
「私の愛情」
言いながら
「すみません。先生からの愛情は課題だけでお腹いっぱいなんで」
ペコリと会釈し「失礼します」とカズキは身を翻したが、
気付けば時計は17時をまわっていた。
「お疲れ様。おかげで助かったよ、ありがとう」
「い……いえ……オヤクニタテテナニヨリデス」
「うんうん。
言いながら
「あ、ありがとうございます」
「こちらこそ。また私の愛情が欲しくなったら、いつでもおいでよ。仕事用意して待ってるから」
「……お先に失礼します」
苦笑を浮かべながら、カズキは部屋を後にした。
人の居ない校門を出ると、目の前には4車線の車道。それを横切る大きな交差点の上には、駅まで続く長い横断橋。
それを渡ろうと階段を登った瞬間、ふと車道に目を向けたカズキはピタリと動きを止めた。
驚愕が足を動かすことも忘れさせた。
なぜなら交差点の向こうに、紅い瞳を宿す銀髪の女が居るのだから。
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