第9話殺戮者対殺戮者

街にはまだ旧王国派と現王国派での小競り合いが起きている。

コウは私をその中心部で殺し旧王国派から御旗を取り上げるつもりだったのだろう。

しかし、今屋根上からジョージの兄を名乗るジョナサンが道を塞いでいる。

「君は…邪魔する気かな?」

コウが苛立ちながら尋ねる。

「その娘を返して貰うだけさ。うちの弟が気に入ってるんだよね?だからさ返してくれないか?」

人を物のように扱うのは止めていただきたいがそれでいいから是非とも助けてください。

するとコウの奴が私を物のように部下に投げつける。

「おいおい、大切にしろよそいつの処女は弟が食うことになってんだから傷つけるなよ?」

サイテーなことをいいながらコウの爆発魔法を弾きジョナサンの後方で爆発が起き街に被害とおそらく死者が出た。

ジョナサンが反撃と言わんばかりに攻撃を開始するがコウが使用していたのと同じ爆発魔法を撃ちはなつ。

コウの奴もジョナサンと同じように弾き飛ばしまたしても街に被害がでる。

「君も爆発魔法使えるんだ?てっきり僕以外は使えないと思っていたよ。」

「原理を理解していれば簡単だ!こんな単純なことを理解できないほど凡人の集まりだからだろ?まぁお前を殺さなきゃここから逃げられそうにないからな…ワリィが死ねよ!」

片手を横なぎに振るうと壁に切り傷ができコウは防いだようだが私を運んでいた兵士達は背中に傷をおったのか血を出しながら倒れこむ。

「無詠唱で魔法かそれなりに魔法が使えるようだが脅威ではないな。」

コウが人差し指と中指を合わせながらジョナサンに向け小さな魔力弾を大量に射撃する。

小さくとも充分殺傷能力があり次々と建物の内と外を爆発しまくる。

「ちょっと住民がいるのよ!なに自国民ころそうとしてるのよ!」

「国賊を殺すのが最優先に決まっている!もちろん君を殺すときは君のお父上とは違い処刑だがね!!」

「知らねぇな!ここにいる運命を呪いながら死んでいけばいいんじゃねぇのか?死ねや!七三分けのおっさん!!」

何故かジョナサンまで民家に攻撃がおよぶのが分かっていながらコウの真似と思われる魔法を放つ。

この2人からすれば市民は道端に落ちている小石や雑草のように価値のないものだからだろう。

コウに対して魔法が効かないと分かるとジョナサンは爆発魔法から別の魔法に切り替える方針へと変えたようだ。

「『サンダーランス』ついでに『ウォーターバレット』!」

土煙が舞い上がるほどの攻撃だったがコウの防壁を突破することはできなかったのを確認するとコウは爆発魔法を撃つ構えを止めて剣を抜き接近戦を行おうとする。

戦いを急いでいるのか無理やり接近して斬りかかるがジョナサンの腕や足に薄くだが切り傷をいれる。

「魔法じゃ拮抗しているからって剣で戦おうとした割にはたいした腕じゃねぇな!」

ジョナサンがコウを煽るが既に下準備をコウは終えてしまったことに気づいていなかった。

直後に切り傷の所に魔法陣が現れジョナサンの身体が爆発し周囲に血肉が飛び散り肉の焼ける臭いがし始める。

物言わぬ死体となったジョナサンを確認すると私の方へとコウは接近し街の中心部へと運ぼうとする。

「貴女は死神かもしれませんね?貴女に関わらなければあの馬車にいた者も彼も街の住民も死なずにすんだかもしれないのにね?まぁすぐにあの世で合流させますからご安心を…。」

軽々とコウがアンを抱き抱え広場へと跳躍していく残された遺体に起こる変化に気づくことなく。



騒乱が続く街は避難を急ぐ市民を巻き添えにしながら制圧を優先する現王国派が辛うじてな優勢に見える戦況であり旧王国派の中心メンバー達は追い詰められ始めていた。

「クソ!メルドの奴ら市民を巻き添えにしてまで俺達を殲滅するつもりか!」

「王女様、早くお逃げ下さい!貴女がいればまだイフメア王国の復興の望みもあります。急ぎ支度を!!」

彼らに王女と呼ばれる女性は何も物を言わずただ頷くだけだった。






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