第12話 3−7
一方。
マアス城のベンジさんの本来の体が座っている新型ゴーレムちゃん制御システム周辺では。
ちょっとした騒ぎになっていました。
「どうするにゃーっ!? ベンジ様が何者かに人質にされた上に邪神まで復活しそうだにゃって!?」
「めめめめめメフィールちゃん! ここはおおおおお落ち着きましょうよ!?」
「イゼーラ、お前が慌ててどうするにゃーっ!?」
「そそそそうですけどっ!?」
右往左往する者。なんとかならないかとゴーレムちゃん制御システムを調べる者。もしものときにと部隊の編成を進める者など、城中の四方八方で大騒ぎになっています。
ちょっとした、どころではありませんね。
そんな中。
ゴーレムちゃん制御システムの置かれた部屋で、一人冷静な顔でベンジさんが座っているそれを見つめている黒髪に浅黒い肌、赤い目のメイドがいました。
そう、マルさんです。
マルさんは、騒然としているあたりを見回すと、冷徹そうな表情一つ変えずに口元から小さくため息を吐くと、ベンジさんからくるりと背中を向けました。
そして、周りの喧騒をよそに、一人部屋の出口へと向かいます。
それに気がついた青髪猫耳のゴーレムちゃん、メフィールちゃんが慌てた様子で、
「ま、マル様、何処へ行かれるんですにゃ!? こんな時に!?」
と尋ねました。
するとマルさんは足を止め、首をメフィールちゃんの方に向け、表情と変わらぬ感情のない声で、
「……自分のしたい事を、するまでですが」
一つ、こう応えると再び歩み始め、優雅な歩みで部屋を出ていってしまいました。
彼女が出ていった後を見て、ゴーレムちゃん達は一斉に、
「こここここんなときにっ!?」
「どこ行くんですかにゃっ!?」
「メイド長様っ!?」
とびっくりした声を上げました。
メイドゴーレムちゃんの何名かが、後を追います。
幾つもの白い明かりが煌々と輝く廊下を、マルさんは一人行きます。
彼女に急ぎ足で追いついたメイドゴーレムちゃん達の一体が、
「マル様、何をお考えですか!? ご主人さまが大変なのですよ!?」
と抗議めいた口調と顔で、マルさんに伝えます。
が。マルさんは無表情な顔で、
「大変だからこそ、自分のしたい事をするのですが」
とだけ応えて、より歩みを早めました。
マルさんは扉を幾つも開き、エレベータへと乗り込み……。
城の地下へ地下へと向かっていきます。
こんな時に何処へ……、と言った風な顔でマルさんの背中を見つめたメイドゴーレムちゃんでしたが。
ふと、何かに気がつき、視界内に表示窓を表示させました。
それは、マアス城の現在地でした。
マルさんは、城のある一箇所へと向かっていました。
それは……。
「統合指揮所へ向かわれるおつもりですか!?」
「そうですが。今は緊急事態ですが。これよりドールズ部隊は全戦力を持って邪神神殿へ出撃。これを以って邪神と魔族を撃滅いたします」
マルさん達がエレベータを降りた先。
薄暗い照明の中に幾つものシートと超特大の表示窓、制御卓などが並べられた、複数階構造の高い天井の部屋。
それがマアス城第一統合指揮所でした。
マルさんはその中のシートの一つ。ベンジさんが先のレッドドラゴン退治で使っていた制御卓と表示窓達に似たそれらの前に座ると、制御卓のキーを幾つか叩きました。
それから、その表示窓を見つめたまま何か考える素振りを見せました。
何かを迷っている様子です。
しばらく迷いの色を顔に浮かべていたマルさんでしたが。やがてその色を消し一つ小さくうなずくと、近くにかけてあったヘッドセットを顔にかけ、そのマイクにこう呼びかけました。
確かな意志を持った、強い口調で。
「
と。
さてさて、こちらも動き出しましたね。
急いでサポートしないと。
各方面に、指示と手配です。
早くしないと、大変な事になってしまいますからね。
忙しくなりますよー。
さあ、皆、出撃です! ベンジさんをお守りするのです!
ベンジさん。皆が到着するまで、生きていてくださいね。
ゴーレムちゃん達が、貴方をお守りいたしますから。
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