2.知らない世界
「
「うん。たいていは部屋で機織りかな」
「機織り? ふるくさ。もっと、ぱあっと楽しいことをすればいいのに」
おしゃべりしていると、イチゴがたくさんのったケーキが運ばれてきた。
「ここのケーキって、タルトケーキの店としてちょー有名で、ちょー美味しいんだって話。あたし、いつか妹とここのケーキを食べたいって思っていたんだ! 夢が叶ってほんと、うれしい。食べよ!」
ケーキを見つめていた私は、
「おいひい」
「
「うん。ケーキはいつもおばあさまが作ってくれるショートケーキだから……」
「ふ――ん。じゃあ、あたしの柿のタルト、食べる?」
「……、いいの?」
「もちのろんろん。といいたいとこだけど、あたしにも、
「わけあいっこね。いいわ」
いままで、分け合って食べるなんてことをしたことがないから、ドキドキする。
(やっぱり、双子って関係はいいわぁ)
「ほら」と
「柿なのにトロっとしてあまーい!」
私も自分のお皿を
「あまぁ!! やっぱ、イチゴ、最高!!」
「そ、……そうだよね……」
(
美味しいねって、
私は、今度は少しだけ多くのケーキを口の中に入れた。
「男?」
「
「……、それって、三矢財閥の三矢
「三矢財閥の御曹司なんて玉の輿じゃん! 顔よし! 金持ちだし! それに性格も悪くないって噂だし!」
「私、そんなことで
紅茶のカップを見ながら、私は顔を赤らめた。
「つきあっているとか凄いじゃん! ねえ、今日、着ている着物ってその時の??」
「うん」
「うらやましー!! やっぱ、男は着物女に弱いんだな。でもさ、着物って動きにくくない?」
「そんなことはないわ」
「そうだ! いいこと思いついた。ねえ、
「え? なんでもう一度、ケーキを頼むの?」
「そりゃ、ちょっとした悪戯さ。そんなことよりさ、もう一つずつ、ケーキを食べられるんだよ。よくない?」
「え、……でも……」
「じゃあ、柿のタルトをもう一つ頼むのでどう?」
せっかく、着物を着てみようと思ってくれたんだ。ここで、断ったら、
「柿のタルトは一つでいいわ。二つも食べるのは難しいもの……」
「じゃ、決まりね。注文して、その間に着替えてこよ!」
お店の人に相談して、着替えられる場所を教えてもらう。そして、二人で着替えて戻ってくると、私達が座っていたテーブルにガラの悪そうな男の人と女の人が座っていた。テーブルには、新しいイチゴのタルトと柿のタルトがおかれてある。私が不思議に思って、
「
「私、
「はぁあ? そのワンピース着て、今日出かけたろ。嘘つくな!」
(この人達、勘違いしている!! 服でわたしと
勘違いを訂正してもらおうと、
「
「……、そうだったのですね。今、わたくし、この人に絡まれて困っていたところなんです……」
着物の袖を口元にそえながら、
「この方、
男の人は、「迷惑をかけたようで申し訳ない。こいつは、妄想癖がひどくてな」というと、私の顔にハンカチを当てた。すうぅっと意識が遠のく。
だめ、みんな、誤解してる。
「あんただけ幸せに暮らしているだなんて、絶対に許せない。
あんたとあたしは同じ顔してんだから、あたしが
薄れゆく意識の中、何故か、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます