第3話 「彼」がいる
ずっと、ずーーっと走っていくと高台から飛び込む縁担ぎの建物が見えてきた。
飛び込むと言っても浅瀬だ、当たり所が悪ければ大怪我では済まない。
嫌なことを考えてしまい、血の気が引いていくのが分かった。
高台を過ぎると、『彼』がいる一行の姿が見えた。近付こうと駆け寄ると、高台の方から声がした。
「にいちゃん大丈夫か?がんばれよ!!」
ハハハ…と笑っていた。
顔を見られないための籠を被っていても分かる程、聞き覚えのある乾いた笑い声。
振り返ると『その人』は、痣だらけでヨロヨロと朦朧としながら高台から出てきた。
おぼつかない足取りで一行の後を必死について行こうとする。
まさか飛び降りたのか、『彼』は!!
その姿を見て、泣きそうになりながらも禁を破って追いかけてきた私には声もかけられない。
ふと、過去に私と会話した彼の言葉が思い浮かんだ。 「君との糸を繋ぎたい」だったか、そんなような事を話していたようだ。
やはりこのままでは引き下がれない。
私は近くにあった稲木にかけてある籠を被り、高い石垣に上って彼らに近付いた。
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