揺れるスカート
柊 蒼
揺れるスカート
「好きです」
そういって、君は真っ赤な顔のまま俯いた。
放課後。部活終わり。夕日の綺麗な帰り道で。
純粋に嬉しかった。
これは 君が私を必要としてくれているという証。
君にとって いま隣にいて欲しい存在が私という証。
君のことは好きだし、君は私にとって大切な存在。
けれどこの気持ちが君と同じものなのか、
それとも友情なのか、私にはわからない。
何もいわないせいで 気まずい空気ばかりが流れる。
君は精一杯の勇気を振り絞っていってくれた。
小さく震える体がその証拠。
きっと今の関係が壊れてしまうことを恐れている。
「どんなことがあっても私達の関係は変わらない」
「大丈夫だよ」とその手を取りたい。
でも君の気持ちに答えられないなら、その手を取る権利は私にはない。
ここまで悩んでいる時点で、もう恋人として君の隣には立てない。
「ごめんなさい」と言わなくちゃ。
言わなくちゃいけないのに、いい言葉が見つからない。
君のことが大切だからこそ、なんと言えばいいのかわからない。
ライクとラブの違いもわからないけれど、
下手なことをいって君を勘違いさせたくない。
「返事はわかってるから、はっきりいってくれていいよ」
優しい君はゆっくりと顔を上げて、
情けない私のために微笑んでくれた。
そんな顔はさせたくなかった。
「ごめん。私、好きな人がいるんだ」
臆病な私の下手くそな嘘。
震えてしまった声で、きっと君にはばれてしまった。
「そっか、聞いてくれてありがとう」
「大丈夫だよ」と安心させるように優しく微笑む君。
君の目は随分前から潤んでいるのに、決して涙を流そうとしない。
君のそういうところが好きだ。
「帰ろっか」
そう言って君は歩き出す。
私はまだその場から動き出せない。
冷たい風が吹いて、スカートが揺れる。
少し先で、君のポニーテールが揺れる。
「気持ちっ、嬉しかったっ」
君の背中に向かって叫ぶ。
不器用な私の、いまの精一杯の言葉。
君は立ち止まって、前を向いたまま目を擦る。
「うんっ」
真っ赤な目をして振り返り、私の大好きな笑顔でいう。
私が大人なら、もっといい言葉を返せたのだろうか。
君を泣かせずにすんだのだろうか。
なぜか涙が私の頬を伝う。
私も君のように強くなりたい。
揺れるスカート 柊 蒼 @hiragiao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます