第11話 俺は自炊できる
「さて、作るか」
お腹の空いている晴さんのためにも、特段美味しいオムライスを作らなければ。
再度冷蔵庫を漁り、玉ねぎとバター、そして冷凍ご飯を取り出す。
玉ねぎをみじん切り、鶏肉を小口切りにして、コンロの上にフライパンを置き中火で少し熱してバターを敷き、その上に切った玉ねぎと鶏肉を入れる。
炒め続けて玉ねぎがしんなりしたことを確認したら、次に冷凍ご飯を入れて再度中火で炒めてご飯が解凍されたらケチャップを入れる。
そしてケチャップが全体に馴染んだら味見をして、味が良かったらケチャップライスの完成。
次はオムレツを作る。
オムレツは慣れれば簡単でまず最初に、冷蔵庫から取り出した卵を二つ割り、ボウルの中に入れる。
よく溶いたら牛乳を加えて、再度よく溶く。
あとはこの溶いた卵を中火で熱したフライパンに敷き、半熟の状態になったら丸めて皿に移す。
最初はよく崩れてスクランブルエッグにしていたが、もうそんなミスはしなくなった。
先ほど作ったケチャップライスの上にオムレツを乗っけて、オムライスの完成!
因みに勝手にオムレツの上にケッチャプをかけると、晴に半殺しにされるので注意だ。
「ほら、出来たぞ」
二人で大学の話をしていたのか、楽しそうに話していた。
水を差してしまったかと思いながらちゃぶ台の上にオムライスを置いた。
オムライスを置いた時、奈菜美が美味しそうに見ていたので俺は自分の分を含めてあと二つオムライスを作る事にした。
これで俺が自炊出来る事も奈菜美に知らしめられたはずだし。
「わは~、お兄ちゃんありがと!」
「ああ、奈菜美さんの分も作るから少し待っててね」
「えっ、あっ、はい……ありがとうございます……」
奈菜美は晴にバレない様に小さく睨んで来たので、俺も晴にバレない様にドヤ顔で煽っておいた。
~~~
奈菜美の分のオムライスを作り、ちゃぶ台の上に置いた。
「どうぞ奈菜美さん、俺の自信作です」
「あっ、えっと、ありがとうございます」
俺と奈菜美は睨み合いながら会話をする。
だが、晴に悟られてはマズいと思ったのか奈菜美が睨むのを止めて嬉しそうな顔になった。
もちろん、作り笑いだというのは一瞬で分かったが。
俺もシンクの前に戻り、自分の分のオムライスを作りながら使った食器を洗う。
晴がオムライスを食べ終わったのか、スプーンと皿を一緒にシンクに持ってきたので少し耳打ちをした。
「おい、友達来るなんて聞いてないぞ」
俺が急に耳打ちしたからか晴は「ひゃう」と驚いた声を出した。
「ちょっと、急に話しかけないでよ。びっくりしたじゃん」
「ああ、ごめん」
小声で説教された後、晴は「私、LIMUで連絡したからね?」と再度小声で教えてくれた。
キッチンペーパーで手を脱水した後、LIMUを見てみると確かに「ナンパされて怖いから友達と一緒に逃げるね」というメッセージが来ていた。
「ごめん、寝てたから分からんかった」
「まあ、私も急に連絡して悪かったけどさ」
晴は今でこそ平静を装っているが、多分ナンパされた時はかなりパニックになっていたのだろう。
それを考えると責める事は出来ないし、根本的に考えて寝ていた俺が悪いか。
「お兄ちゃん、私疲れたからベッド借りるねー」
背筋を伸ばしながら小さなシングルベッドに向かう晴。
俺はその姿を見て「おい、風呂は?」と聞いたが晴はダルそうに「朝入るー」と言い、ベッドに寝転んだ。
少しして寝息が聞こえて来たので、俺は晴が風邪を引いたら困ると思い薄いタオルケットをかけてあげてちゃぶ台前の座布団に腰を下ろした。
奈菜美はスマホをいじっていた手を止めて、なぜか顔を伏せた。
「晴はもう寝た。あいつ、寝る時は一瞬で寝るし眠りも深いから中々起きないぞ?」
「……」
奈菜美は何も喋らずに俯いたまま。
どうしたものかと思いながらも、俺は紙コップに注がれたお茶を飲んだ。
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