さようなら一週間、そして新しい一日へ(その2)

「あれから二千五百年も経ったというのか?」

 アルテミスであった時の記憶を取り戻したクレアは、頭が混乱していた。

「そうだ。あなたが亡くなってから、世界は変わった」

 エミリアは瞳を潤ませて語った。

「アルテミス、あなたを殺した兵器は、我々の世界では“神殺しの矢”として呼ばれて怖れられるようになった。

 人間どもは、この兵器を地上の至るところに張り巡らせたのだ。我々神族を寄せ付けないためにな」

 現在、この世界の人類が支配している主なエリアには、かつてブラウン博士が考案した“神避け”の装置が張り巡らされていた。

 通常は作動していないが、万が一、神が人類に対して“力”を加えるようなことがあれば、核ミサイルに対するパトリオットミサイルのように、“対抗措置(アンチ・アーマー)”として、いつでもフル稼働できる体制を整えているのだ。


「神殺しの矢という呼び名は、比喩だな。

 確か、あの兵器は我々の力を削ぐような得体の知れない電磁波のようなものを発していたはずだ」

「ん? “電磁波”とはなんだ? あの妙な音のことか。

 だが、矢というは、決して比喩というわけでもないぞ。あなたを直接倒したのは、矢だったからな……」

 アルテミスは自分の記憶と違うことに気づいた。

 自分は、あの時、兵士の“槍”によって胸を突かれたはずだ。

(記憶違いか? それとも、まだはっきり記憶が戻っていないのか?)

「それにしても、あの時から二千五百年も過ぎたのか……。

 ということは……、お前たちはそんなに生きながらえているのか?」

 クレアは、エミリアとマチルダ、二人の顔を改めて凝視した。

 二人とも、それなりに“若い”。

 神が長生きだとしても、それほど老けないものなのか。

「いや、実は、我々二人も“生まれ変わり”なのだ。

 神族の中には前世の記憶をしっかりと保ったまま生まれ変わる種がいる。我々二人は、その類(たぐい)だ。

 そして、アルテミス、あなたの場合は、天寿を全うすることができず、人間の手によって殺されたという業(ごう)によって、この世界での復活を果たすことができぬ身となってしまったのだ」

 エミリアの説明を聞きながら、クレアはこの世界に来て味わった不可思議な体験をいろいろと思い出していた。

「なるほど、そういうことか。ふふふ……」

(あの自分を貫いた“槍”はロンギヌスの槍、“神殺しの槍”だ。

 さらに“前前世の記憶”が混ざっていたのか)

 クレアは、前世の記憶が鮮明になるにつれ、可笑しさがこみ上げくるのを抑えることができなかった。

「あはははは……」

 久々に、声を上げて笑った。

 クレアとして“あちらの世界”にいたときに、このように高笑いした記憶はなかった。

「大丈夫か、アルテミス」

「その名で呼ぶか……。

 確かに、私は前世ではアルテミスだった。すべて思い出したぞ」

 クレアは、笑いが収まった後も、口の端に不敵な笑みを残したまま、エミリアを見つめた。

「ならば話は早い。

 アルテミス、この世界に留まり、我々に力を貸してくれるのだろう?」

 エミリアが剣を納めて近寄ろうとするのをクレアは、手で制した。

「おいおい、勘違いするな。

 前世の記憶を取り戻したとはいえ、“元の世界”の人間としての記憶を失ったわけではないぞ」

「タマナハ・クレアという人間の記憶ということか。

 だが、アルテミスの記憶が蘇った今、この世界を救うということの真の意味がわからぬ“あなた”ではあるまい」

「つまり、かつて神が人間を支配したように、再び神の手によって人間を支配しようということだな」

「その通り。そこまでわかっているなら……。

 当然、手を貸してくれるよな」

 お互いまだかなり距離はあったが、“友好”の印としてエミリアが手を差し伸べた。

「お断りする」

 クレアは、ブラッド・パールを構え直してエミリアの方へ切っ先を向けた。

 エミリアの差し伸べた手の指先がわなわなと震えた。

「なぜだ。あれを見ただろ」

 まだ東の空に残るキノコ雲の痕跡を、エミリアは指さした。

「人間は、あのように“核兵器”という悪魔の道具を作り出し、それを平然と使うのだ。放っておくと、この世界を滅ぼしかねない。

 いや、この世界は必ず滅ぶだろう」

 クレアは、エミリアの指差した方向をぼんやりを見つめた。

「確かに、人間は愚かだ。

 だが、それに気づくのも人間だ。

 人類が己の愚かさによって滅んだとしても、それはそれで、この世界の理(ことわり)でしかない」

「どんな屁理屈だ、それは。

 あなたは、これから“元の世界”に帰れるから、この世界のことなんかどうでもいい、そう思っているだけだろう」

「落ち着け、エミリア」

 クレアは、むしろ自分を落ち着かせるために、大きく息を吸い込んだ。

「神は、人々を支配するものであってはならないのだ。

 人間は人間同士で考えていくしかない」

 ここで幾ら説き伏せたところでエミリアは納得しないだろう。

 クレアには十分わかっていた。

「あなたが、アルテミスの生まれ変わりであることを逆に確信したよ。

 人間のことを信じるお人よしな点は、前世とちっとも変わっておらぬ」

 エミリアが剣を抜いた。

「そうとなったら、このまま“元の世界”に返すわけにはいかない。この世界に留まり、我々に協力するか、さもなければ、この場で消えてもらう。

 残念だが……、再び生まれ変わることはないと知れ」

 エミリアの抜き放った剣が“オレンジ色”の光を帯び始めた。

「思い出したぞ。

 そいつも“宝剣”だったな、名は忘れたが……」

「我が愛刀“タンジェリン・ドリーム“だ。行くぞ!」

 言うが早いが、エミリアが切っ先を真っすぐ向けたまま、クレアに突っ込んできた。

 クレアは、切っ先が届く寸前のところでかわした。

「おや?」

 クレアとしては“瞬間移動”したつもりだったが、物理的にかわすだけで精一杯だった。

 アルテミスの記憶が蘇っても、かつての能力まで取り戻せていたわけではないようだ。

「動きが先ほどまでとは、断然違うな」

 エミリアが感心したように言った。

「だが、もう避けられんぞ」

 タンジェリン・ドリームを真っすぐに構え直した。


  ※


「アルテミス様……」

 スクルドは、傷付いた上半身を抱きかかえられながら、神族たちのやりとりを見ていた。

「まさか、クレアがアルテミス様の生まれ変わりだったとは」


 スクルドは、あちらの世界から救世主がやってくると、ネルバから聞かされてクレアの元に駆けつけたとき、ネルバから手渡された“神の弓”を操ることできる点で、この少女が“只者”ではないことを知った。

「今度の救世主はねえ、ちょっと特別な存在の可能性があるんだよ」

 いつもおどけている妖精は、さらにおどけた様子でスクルドに言った。

「何せよ、我々の役目は一緒だ。

 あちらの世界から来た“救世主”をできるだけフォローすること、それだけのことだ」

「ああ、言い忘れるところだった。

 今度の“救世主”は女の子だからね」

「何? それは、これまでにあったのか」

 女子の救世主というのは、少なくとも、スクルドがこの世界に生まれてからの記憶にはない。

「さあね、さすがに僕もそこまで長生きしてきたわけじゃないから、知らないけどねえ。もしかすると初めてのケースかもね」

 かつて、アルテミスという女傑がいたという伝説は残っているが、彼女が異世界から来たという話は聞いたことがない。


 スクルドは、気絶したあと、むっくりと起き上がったクレアの動きを見て、明らかに”別人”に変わったことを察知した。

 彼女に最初にブラッド・パールを“貸した”とき、やはり只者ではないことを悟ったが、今は、自分の剣としてすべてを取り戻していたように感じられる。

 だが、エミリアの先制攻撃を受けて、余裕で交わしたつもりが、意外にもギリギリになったのは、まだ己の記憶に身体能力が追い付いていないせいなのか。

「アルテミ……、いや、クレア、しっかり……」

 スクルドは思わず、声を上げた。

「スクルド、まだ、起き上がってはいけません」

 自分の膝の上から急に頭を起こしたスクルドを、ヒルドが窘めた。


  *


 スクルドの自分を励ます声が聞こえた。

(スクルド、感謝する)

 記憶を取り戻したとはいえ、エミリアの攻撃を避けるだけで精一杯の能力しかないことを改めて知った。

 とりあえず、“瞬間移動”は無理なようだ。

「なるほど、瞬間移動を試みたのだな。

 このエリアは人間の支配するエリアだぞ。

 先ほど説明した通り、“神避け”が張り巡らされているのだ。

 瞬間移動のような“大技”はできないぞ」

 エミリアの言葉に納得がいった。

「そうか、ということは、エミリア、お前も瞬間移動ができないということだな。

 それだけ分かれば十分だ」

「ふん。だが、それ以外の“神的パワー”は発揮できるぞ。

 あなたを切り刻むには十分過ぎるぐらいに、な」

 エミリアの握ったタンジェリン・ドリームのオレンジ色が増すと同時に、先ほどスクルドに攻撃を加えたときと同じように、全身を青白い光で包み始めた。

(この“技”は、自分にできるのか?)

 アルテミスとしての記憶が蘇った今、試してみるほかない。

 クレアは、ブラッド・パールを握りしめ、あらん限りの“思念”を刀身に込めた。

(どうだ! いけるか?)

 ブラッド・パールが赤色の光を帯び始めた。

 そして、自分ではわからなかったが、クレアの瞳の色は、ブラッド・パールと同様に、赤く染まっていた。

「そうこなくちゃな」

 エミリアは、クレアが自分と同じ神的パワーを意識的に操り出したのを見て、ほくそ笑んだ。

 オレンジ色と赤色、地上に降りた恒星のように、二つの半球体が強烈な光を放っていた。

 二人の行く末を見守っていたワルキューレたちも、その眩しさに目を細めた。

 次の瞬間、二つの光は磁力で引かれ合うように、激突した。

 ブラッド・パールとタンジェリン・ドリームの刀身がぶつかった瞬間、両剣に込められたフォースが超新星が爆発したように飛び散った。

「冗談じゃない、凄すぎる」

「自分たちだから避けられたが、人間が近くにいたら即死だったぞ」

 ワルキューレたちは、危険を察してスクルドを抱えたまま、全員がその場から離れていた。

「凄まじいフォースだ。

 これは、まさに“アルテミス”そのものだ。

 だが、その人間の身体では、せっかくのフォースも十分に生かすことができまい」

 エミリアに言われるまでもなく、クレアは元の世界での自分と照らし合わせて、これらの動きに限界があることを知っていた。

 元の世界でも、アスリートや格闘系、少なくともスポーツ系少女であったなら、もっと動けたかもしれないが、近年の日常生活で運動らしきことをした覚えがない。

 前世で記憶していた跳躍や空中回転の感覚をそのままクレアの体に信号を送っても、思うように筋肉の方が動いてくれない。

 エミリアの一振りを後転で避けたあと、片足で着地したとき、足首に痛みを感じた。

「つっ!」

(思ったよりも軟(やわ)だな、この体。

 これ以上戦いを長引かせるにはいかない。ここら辺で決着を付けないと)

 クレアが足を捻った隙をついて、エミリアが追撃に出た。

 エミリアは体の周囲に青白いバリアを纏っていたが、最初の激突で若干弱まっている。

 クレアは思い切って勝負に出た。

(イチ、ニイ、サン、シ……)

 心の中でカウントを始める。あまり意味はない気がしたが、“気”を溜めるためのきかっけ(トリガー)が欲しかった。

 カウントをジュウまで数えたとき、ブラッド・パールのエネルギー値は臨界点近くに達し、光の色は、赤みより白さの方が増していた。

 クレアの元へ突き進んでいたエミリアは、相手の剣が異常な発光状態にあることを見て、身の危険を感じた。

 それまでは、クレアの胴体を真横に切り付けようと考えていたが、相手の剣を受け止めること、つまり自らの身体を守ることの方を選んだ。その時点で勝負は決していた。

 クレアは相手の横殴りの攻撃に対して、上段から真一文字に切り付けた。

「いやあああああああ」

 気合いもろとも、一気に振り切った。

 相手のエミリアは咄嗟に剣を頭上で構え、受けに回っていた。

 クレアの読み通りだ。

 もし相手が受けに回らなければ、エミリアの体は縦真っ二つに切り裂かれていただろう。

 〈グキィーン!〉

 高出力で回転していたチェーンソーに金属片が当たって弾けたような甲高い音がした。

 ブラッド・パールを振り下ろしたクレアの前から、エミリアの青白いバリアは消し飛んでいた。

「な?」

 宝剣”タンジェリン・ドリーム”のオレンジ色の光も消し飛び、刀身に、ヒビが入っていた。

 エミリアの体に、物理的な傷は付いていなかったが、ブラッド・パールの発した衝撃で、全身が痺れていた。

「かはっ」

 エミリアは、気道に詰まった吐瀉物に噎せたような声を発して白目を剥いた。

 そして、掴んでいた剣を取り落とすよりも先に、膝を付いて体ごと地面に崩れ落ちた。


「やったな」

 見守っていたスクルドが弱々しい声で、安堵の声を上げた。


「エミリア様!」

 マチルダが駆け寄ってきた。

 クレアの方も、全力を出し切って疲れ切っていた。

 もしマチルダが、さらに攻撃をしかけてきたら、勝ち目はない。

 だが、マチルダにはそんな気はさらさらないようだった。

「どうか、お許し下さい。エミリア様の、命だけはお助けください」

 エミリアを介抱しつつ、クレアに救いを求めた。

「マチルダ、私には彼女を傷つける理由など、これっぽっちも持っていないぞ。

 むしろ、神の時代を取り戻したいという、彼女の気持ちは痛いほどわかるのだ。

 もし、私がこの世界に召喚されたとき、初めから記憶を取り戻していたのなら、事態は変わっていたかもしれない。

 だが、私は、この世界の人間たちと出会って、神が人間を支配することは、やはりあるべきではないと、思えるのだ」

 具体的には、Y国で出会ったワグナーや料理人のクリムト、そして、T国海軍のビスマルクやジェニファー、さらに今は亡き、先に召喚されたエンゲルス王にも学ぶことは多かった。

「実は、わたくしもクレア様と同意見です。

 私ども神族が支配する時代は、とうに終わったと思うのです。

 人間は愚かしい。その思いはエミリア様と変わりません。

 ですが、これも人間の性(さが)でしょう。

 悪魔の心を持った者と、天使の心を持った者がいる一方、そのどちらの心も持ち合わせているのが人間という種族だと思うのです。

 悪魔の心を抑えて、平和を作り出すのは、並大抵のことではありませんが、我々神族が強制的に統治しても、もはや解決できないところに来ています。

 あなたを殺めた“神殺しの矢”を生み出した時点で、いいえ、もっと以前の太古の昔から、人族の姿が、神族と同じような形に近づいた時から、それは運命づけられていたのかもしれません」

「マチルダ……」

「この世界は、彼ら“人間自ら”が何とかしなければ、それまでと諦めます。

 エミリア様は、わたくしが責任をもって連れ帰ります。

 クレア様、御無礼を働いた私共を、どうかお許しください」

 マチルダは涙を溜めてクレアに懇願した。

 普段は心優しいが、その戦闘力はエミリアに匹敵するほど高い。クレアは、前世の記憶を取り戻したときに、そのことも思い出していた。


「タマナハ・クレア、大変だ」

 気づくと、すぐ横にネルバが立っていた。

「なんだ、ネルバか。

 そういえば、もう“ゲート”が開く頃合いだな。

 ゲートはどの辺に開くんだ」

「そのゲートなんだが、もう開いている。

 ただし、開いた場所が問題なんだ。

 当初の予定では、あの辺りに開く予定になっていたんだが……」

 ネルバが、煉瓦の壁に設けられた古い木の扉の辺りを指さした。

「別の場所に開いていしまったんだ。

 先ほど、この付近にかなり高いエネルギー放出を観測したけど、どうやらそれが原因で時空に歪みが生じ、ゲートの場所がズレてしまったようなんだ。あの核爆発によるものか、それとも……」

「まさか、我々の戦いにも原因があるのか?」

「そこは、はっきりとはわからないけど、いずれにせよ、すぐに移動しないと間に合わない。

 君は“瞬間移動”ができるようになったのかい?」

「さっき試みてみたが、どうもダメらしい」

「なんてこった……」

 いつも相手を茶化していたネルバが、本当に困った顔をしたのを見るのは始めてだった。


  *


「どこに行っちゃったのよ、ネルバちゃん」

 あちらとこちら、二つの世界を結ぶ“ゲート”から“この世界”に進み出たエリスは、困り顔で辺りを見回した。

 この辺りは、どうやら予定とは異なる場所のようだ。

 万里の長城のように長く伸びた煉瓦造りの壁の中に、目印となる“古い木の扉”が見当たらない。

 確かにゲートの前に“長城”は伸びているのだが、ところどころ、爆弾で吹き飛んだかのように、ところどころが崩れ落ちていが。

「おい、エリス、今僕のこと、ちゃん付けで呼ばなかったかい」

「あ、ネルヴァギウス様、どちらにいらっしゃったんですか?」

「おいおい、急に“敬語”使っても、ダメだよ。

 いつも通りの呼び方でいいよ、エリスさん」

「ネルバ様、クレア様は、まだ来ていないんですか?」

「いや、彼女なら、ワルキューレと一緒にすでに約束の場所に来ているよ。

 約束と違う場所に来てしまったのは、君の方さ」

「でも、私は“いつも通り”に転送装置(トランスポーター)を作動させたんですけど」

「うん。君のオペレーション・ミスじゃないよ。

 ゲートが開く瞬間、こちらの世界で発生した高エネルギーによって時空に歪みが生じ、ゲートの開く場所がズレてしまったようだ」

「それじゃ、クレア様は、今回の帰還には、間に合わないわけですか」

「僕がゲートが開く予定の場所に行ったとき、実は、ちょっとしたハプニングがあってね。

 クレアたちの行く手にエミリアが現れた」

「お見送りですか?」

「そんな可愛げのあるものならいいんだけど、この一週間で記憶を取り戻せなかったクレアに対して強硬手段に出たんだ」

「え、まさか、クレア様、それで……」

「いや、僕も驚いたけど、彼女、その戦いの最中に、前世の記憶、つまり自分がアルテミスだったことを思い出したんだ」

「ということは、“本来”の使命に目覚めて、この世界に留まることにしたんですね」

 エリスが嬉しそうに両手を組んで胸の前で合わせた。

「そうならいんだけど、以前の“神”よりも人間のとしての心の方が勝っていたようで、エミリアを倒して、結局、元の世界に帰る方を選んだんだ」

 ネルバが残念そうに言った。

「でも、まだ現れないじゃありませんか。

 ゲートは開いてから10分程度で閉じてしまいますよ。

 クレア様、“瞬間移動”でここに来るんですか?」

「いや、それが瞬間移動はできないらしい。

 果たしてゲートが閉じる前に間に合うかどうか……」

 ネルバは、長城の向こうに霞んで見える地平線の辺りを心配そうに眺めた。

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