天壌霊柩 ~式神たちの旅~ 第25回
ともあれ斎女の目には、今の杉戸伸次が、濃密な『
美津江刀自が、斎実に訊ねた。
「私も、ずいぶん『
「はい。もしこの子が平気で人を殺すような悪人だとしても、ここまでの『
美津江刀自は、満足げに頬笑んで、
「斎実さん、あなた、ことによったら斎子ちゃん以上の『
隣の慎太郎も、常々そう思っている。それだけに、肉食系すぎる性格が問題なのだ。
美津江刀自は、伸次に目を向け、
「伸次君、そろそろ本当の事を話してくれないかしら。あなたや寬枝さんには見えなくても、あなたのお祖母様には見えていたはずよ。この斎実さんほどじゃないにしても、私に見える程度には、あなたが引きずっているドロドロの『
伸次は怯えながら、
「……俺、どうなるんですか?」
「それは『
美津江刀自は言った。
「祓えば落とせる『
そこに、民治老人と吉田が戻ってきた。
「あら、警察は、もう済んだの?」
「ああ、知らぬ存ぜぬを通したら、すぐに帰ってくれたよ」
民治老人の簡単すぎる説明を、吉田が補った。
「あの様子では、やはり相当な裏がありますね」
吉田は元警察関係者だけに、色々と察したらしい。
「『十日ほど前に、蔦沼市で三人の高校生が消息を絶った。その内の一人が滝川村に立ち寄ったという情報があり、事実関係を確認中なので少々お話を伺いたい』――それだけの用件しか口にしません。事件性があるのかと私が訊ねても、明確な返事がない。単なる家出ではないのかと訊ねたら、その可能性もあると言葉を濁す。そんな段階で、令状もなく他県の私有地に踏みこむはずがありません。要するに彼らは、ここに家があり人が住んでいることを確認できれば、それでよかったんでしょう。どのみち今日の未明に伸治君がこの森にいたことは、GPSで確実なんですから」
「十日前――寬枝さんと伸次君が、夜中に訪ねてきた日ね」
美津江刀自の言に、寬枝がうなずいた。
すると、伸次が重い口を開いた。
「……俺、あの日、蔦沼の教育委員会に呼ばれてたんです。光史と茉莉も一緒に」
吉田が伸次に訊ねた。
「光史と茉莉――それは例のいじめ事件の子たちだね? つまり教育委員会が再調査のために、いじめた側の三人を集めたわけだ」
「はい……で、その帰りに……」
伸次は、言い淀んだ末、
「……ゾンビみたいな奴らが出てきて……」
唐突に使われたゾンビという言葉に、他の皆はホラー映画の典型を連想して違和感を覚えたが、
「俺、なんとか逃げて……でも、あの二人は、それっきり……」
伸次は文字通りわなわなと震えながら、頭を抱えこんだ。
「きっと、ゾンビに食われたんだ……」
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