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「確かに、ここは『天空の地』であり、その地下の空洞です。
そして、この地に、女神さまも、男神さまも居ます。
ただ、その者たちを、『神』と呼んで良いかは、解りません。」
ロレシアは、顔を上げると、意を決したように、ギュダリアに話した。
「そうでしたか。
では、『天空の地』は、存在したのですね。」
ギュダリアが、とても嬉しそうに言った。
「グノスから聞いたと思いますが、この地に住む『神々』は、人の魂を食べてしまうのです。
魂を食べられた人は、死んでしまいます。
体が残っても、魂がありませんから、食事すらできませんからね。」
少し疲れたような笑顔を浮かべると、ロレシアが言った。
ギュダリアは、ジッとロレシアを見ながら頷いた。
「答え難い事かもしれませんが、セティリアスとは、どなたですか?」
ギュダリアが、ロレシアの顔を見つめながら聞いた。
セティリアスの名前を聞いて、ロレシアの顔が少し引きつった。
そして、涙を流し始めた。
「セティリアスは、わたしの夫でした。」
ロレシアは、小さなハンカチで涙を拭きながら、しばらく沈黙した。
ギュダリアも、その答えは予想していた。
そして、ロレシアが落ち着くまで、静かに待った。
「ゴメンなさい。」
少しして、ロレシアがハンカチで涙を拭き取りながら言った。
「いえ、こちらこそ。」
ギュダリアは、少しホッとした顔で言った。
セティリアスとロレシアは、2年前に、新婚旅行でこの地を訪れた。
そして、女神の涙や塔の話を聞き、好奇心を搔き立てられたセティリアスが塔を登りたいと言い出したのだ。
その時、村に居た何人かの冒険者と、ロレシアと共に、セティリアスは塔を登った。
「そして、この空洞にたどり着き、外へ出たんです。」
そう言うと、ロレシアは一つ息を吐いた。
「わたしたち知らなかった。
ここに住む神々が、あんなに危険だなんて。。。」
グノスはロレシアに近づくと、優しく背中を摩った。
少し嬉しそうにロレシアはグノスを見上げると、また話し始めた。
「わたしたち神々に追いかけられ、ある者は捕まり、ある者は魂を食べられてしまいました。
セティリアスとわたしは、たまたま出会ったグノスに助けられて、何とかこの空洞まで逃げ帰ったんです。
でも、セティリアスは毒矢で射られ、わたしは呪いを掛けられてしまいました。」
「毒、セティリアス、殺した。
呪い、ロレシア、出られない、ここから。」
グノスが、ギュダリアをジッと見ながら言った。
「呪いを掛けられたまま、この空洞から出ようとすると、激しく身体中が痛むんです。
恐らくそのまま外に出たら、呪いで死んでしまうと思います。
でも、わたし、それでも良いと思ってました。」
そう言うと、ロレシアは、また、涙を流した。
そのロレシアの手を、グノスがギュっと握った。
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