6

ギュダリアは、ランプを点けると、また、グノスと一緒に塔を登り始めた。

塔は天空の地の中に入ったらしく、周囲は真っ暗になっていた。

そうして、30分ほど真っ暗な中を、登り続けると、不意にグノスが立ち止まった。

「着いた。

ここ、俺たちの家、ある、空洞。」

グノスがギュダリアを見ながら言った。


そこは、塔の頂上では無かった。

大きく広い空洞の中であり、その中で塔は壊れていたのだ。

外壁は殆どが崩れ、中央の空洞を隔てている壁も、一部崩落していた。

ギュダリアが、ランプを上の方へかざすと、空洞の天井に塔の一部が見えていた。


「こっちだ。」

グノスはそう言うと、空洞の中を歩き出した。

30mほど空洞の中を歩き、空洞の壁に突き当たると、そこに空いている穴の中に入って行った。

ギュダリアもそれに続き、穴の中を進んで行くと、奥から明かりが見えて来た。

穴を抜けると、そこに少し広い部屋があった。

部屋の横の方には、小さな竈門があり、そこに鍋が掛けられていた。

中央には木と石で作られた簡易なテーブルとイスが置いてあった。

そして、部屋の中には、幾つかのランプが点けられており、窓が無い部屋でも、十分な明るさがあった。


「グノス、お帰り。」

部屋の奥から、若い女の声が聞こえた。

そこにも、木と石で作られた小さな机と椅子があり、髪の長い20代くらいの若い女が一人座って居た。

「ロレシア、ただいま。」

グノスが、女を見ながら言った。

「そちらは、誰?」

ロレシアは、机の上に広げていた本を閉じると、ギュダリアをジッと見ながら聞いた。

「ギュダリア、塔、登って、来た。」

「そう、塔を・・・。

初めまして、わたし、ロレシアと言います。」

「初めまして、ギュダリアです。」

ギュダリアは挨拶をすると、少し赤い顔をした。


グノスは部屋の隅の方にある、棚の中に、今まで持って居た、黒い袋を入れた。

「ギュダリアさんは、どうしてここへ来たのですか?」

ロレシアが、ジッとギュダリアを見ながら聞いた。

「ただの好奇心ですよ。

村で、この塔の事と、『女神の涙』の事を聞きましてね。

女神さまが住んで居る天空の地を、見たくなったんです。」

「そうですか。。。」

ロレシアはそう言うと、目線を落とし俯いた。


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