4

翌朝、周りが白く、明るくなってきた時、ギュダリアは目覚めた。

毛布を片付け朝食を食べていると、何処からか重たい物を引き摺る音と、金属が触れる音が聞こえて来た。

(なんだろ?)

そう思い、少し耳を澄ませてみると、その音は上の方から聞こえて来ていた。


ギュダリアは急いで朝食を済ませると、また、塔を登り始めた。

階段を上の階へと進むにつれ、その音が大きくなってきた。

そして、今まで聞こえ無かった、誰かが歩く足音まで聞こえて来た。

(誰か居るのか?)

そう思いながら、少し足を速めて、階段を登った。


そして遂に、音がする階の真下まで来た。

重い物を引き摺る音、金属が触れる音、そして足音。

ギュダリアは緊張した顔で、足音を忍ばせ、ゆっくりと階段を登った。

そっと、顔を上の階に出した時、2mほど背丈のある、大きな生き物の後ろ姿を見た。


それはオークだった。

ギュダリアが旅先で何度となく見かけた、オークの姿そのもの、だったのだ。

オークは、右手に黒い袋を持っており、それを引き摺っていた。

よく見ると、黒い袋の底には、木の板が貼り付けてあり、それが引き摺った時の音を大きくしていた。

さらに、その袋には鉄製の剣が付いており、それが塔の床に当たり、金属の音を立てていたのだった。

オークは、腕力は強いものの、知能が低く、野蛮な生き物であった。

ギュダリアが出会ったオークも、そうした物ばかりであり、常に警戒が必要な相手だった。


ギュダリアは、オークの動きに合わせ、慎重に動き、階段を登り切ると、次の階段に向かって、オークの後ろを、少し離れて付いて行った。

階段までもう少しという所で、不意にオークが振り向いた。

「あっ!」

ギュダリアはオークと目が合った。

振り向いたオークは、首から人の頭蓋骨を下げていた。

頭蓋骨に鎖を通し、それを首に掛けていたのだ。

「うっ、うわーーっ。」

ギュダリアはとても驚き、悲鳴を上げた。

人の頭蓋骨を下げているオークは、初めて見たのだ。


オークは、急ぎ足て、ギュダリアに近づいて来た。

(ダメだ、やられる。)

そう思って目を閉じた時、

「おっ、俺、グノス。」

オークはそう言って、ギュダリアに手を差し出して来た。

ギュダリアは、その時初めて、話すオークと出会った。


「わっ、わたしは、ギュダリア。

昨日から、この塔を登っている。

グノスは、ここで、何をしているんだ?」

ギュダリアは、床に座り込んだまま聞いた。

「俺、待ってる。

止める、登って来る人。」

「そっ、そうか。。。

それは、誰だい?」

ギュダリアは、グノスが首から下げている頭蓋骨を指さしながら聞いた。

「セティリアス、友達。

死んだ、病気で。

これ、セティリアスの物。」

グノスはそう言うと、手に持って居る黒い袋を見せた。


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