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「あの塔は、村の人たちが建てた物では、無いのですか?」
ギュダリアが、フィロルの顔を、ジッと見ながら聞いた。
「ええ、何でも、この村の歴史によると、この村ができる前から、あの塔は建ってたらしいんでさぁ。
ざっとで言うと、500年くらい前から建ってるそうですぜ。」
「そんなに昔から。。。」
ギュダリアはそう言うと、しばらく黙り込んだ。
「あの塔に、登る事はできるかな?」
ギュダリアは、笑顔でフィロルに聞いた。
「ええ、誰でも登る事はできますぜ。
ただ、登るんでしたら、幾らかの食料を持って行った方がええ。
なんせ、何処まで続いてるか、見た者は居ねぇんですから。」
フィロルは、真剣な目で、ギュダリアを見ながら言った。
その日、夕立が村に降った。
辺りが暗くなったかと思うと、急に大粒の雨が降り始めた。
遠くで雷鳴も響いていたが、それよりも、建物や川、道に降りつける雨音の方が大きく激しかった。
30分ほど降り続くと、ピタリと雨が止み、柔らかい夕暮れの日が差してきた。
「女神さまが流した涙、か。
確かに、こんな雨が毎日のように降っていたら、そう思うかもな。」
ギュダリアは、窓の外の、雨に濡れて光る景色を見ながらそう思った。
次の日の朝、ギュダリアは1週間分の食料をリュックに詰め込み、塔を登る準備をして、宿屋のカウンターに現れた。
「おはよう、フィロル。」
「おはようございます。
旦那、あの塔へ、登るんですかい?」
フィロルは、ギュダリアが持って居る、大きなリュックを見て聞いた。
「ああ、何処まで登れるか解らないが、行ってみようと思うんだ。」
「そうですかい。。。」
フィロルが、少し心配そうな顔で、ギュダリアを見た。
その目に気付き、ギュダリアが言った。
「1週間後までには、帰って来るつもりだ。
だが、もし2週間を過ぎても帰って来なかったら、置いている荷物と荷馬車を処分して下くれ。
それで、宿代くらいにはなると思うから。」
「そうですかい、解りました。」
ギュダリアの言葉を聞いて、フィロルが笑顔で言った。
その顔を見て、ふと、ギュダリアが聞いた。
「あの塔へ登りに行って、帰って来なかった者は、居るかい?」
「ええ、もう、何人も帰って来てない人が居ます。
塔を登って、女神さまの怒りに触れたんじゃねぇかって、噂でさぁ。
ですから、旦那も女神さまには、気を付けて下せぇ。」
「そうかい、じゃあ、女神さまのお誘いがあっても、断るとするよ。」
ギュダリアがそう言うと、フィロルが声を出して笑った。
ギュダリアは、宿屋を出ると、徒歩で塔へ向かった。
宿屋から塔までは、20分ほどで着いた。
「これが、『天空への道』か。」
ギュダリアはそう言って、塔を真下から見上げた。
確かに、真下から見上げると、青い道が、天空へと伸びているように見えた。
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