第35話 私は一流メイドです
肉塊の飲み込みを続けていると、夕食が運ばれてきた。美月は僕が肉攻めにあっているのを見て羨ましそうな視線を向けてくる。
「羨ましがるようなものじゃないぞ」
「いえ、私はまだ何も言ってませんが、あとこちら御夕食ですどうぞ」
そう言いながら机の上に色鮮やかでバランスが良さそうな和洋折衷の数々の料理が並べられる。
飲茶でも頼んだかと錯覚する量に、思わず「うっ」と言ってしまいたくなった。三人で食べるには多すぎるだろ。
「美月、僕今滅茶苦茶食べさせられたんだけど」
「そうですか、では頑張ってください、私も彩様も頑張ります」
「確かに作ってくれたのは本当にありがたいし、感謝はしているけど、もう少し手心というか何というか」
明らかに多すぎる、美月が大食いには見えないし凉坂さんもさっきハンバーグを多めに食べていた。自分も苦しめることを分かっていないのだろうか?
「はい、私なりに掃除等を頑張って頂いた啓様に嬉しく思っていただこうと思い、私がされて嬉しい事をして頂きました」
「美月、一緒に生活する以上は知っておいて欲しいんだけど、世の中誰しもが君みたいに虐げられて喜ぶ性格じゃないんだ」
「そんな理解できないものを見るような目で見ないでください、興奮してしまいます」
「興奮しないでください」
「あ、なんで敬語を……。 そんな事よりしっかり食べてください、女の子にご飯を作らせておいて食べないなんてそんな常識はずれな事私の主はしないはずです」
いつから主になったかは知らないが、彼女の言っていることは頭が痛いくらい正論だった。そもそも美月の方が先にご飯を作り始めてくれ始めたし、せっかく作ってもらったものを残すなんて言語道断だ。
「お二人ともいいから食べませんの? わたくし早く食べたいですわ!」
こちらが言い争っている間に凉坂さんがそんな事を発言する。そうだそうだ、食べる食べないじゃなくて食べられなくてもパワーでゴリ押そう。
「そうだね、じゃあ頂きます」
「はいどうぞ、召し上がってください」
「おいしかった」
思っていたよりも、すっとお腹にご飯は入った。美月の作った料理は思っていたよりも家庭的な味だった。家庭的でおいしい。どこか安心する小料理屋のような味だった。
豪邸に努めるメイドという事で勝手にホテルのような味や料理を考えていたが、思っていた以上に家庭的でいい意味で素朴な味だった。
「それはどうも、啓様も少しは私の事を一流のメイドとして認めて頂けましたか?」
不安そうに聞いてくる、そういえば彼女に合わせて美月の事を貶してばっかりだったが、たまには褒めろという事だろうか?
「そりゃもちろん、凄く見直した。でも僕は美月の事を一流じゃないと思ったことはないよ、だって他のメイドなんて知らないし」
「なら騙せたようでよかったです、普通のメイドはこんなフリフリのメイド服なんて来てませんしね」
小悪魔的な笑みしながら美月はそんな事を発する。やっぱりだめかもしれない、ふと気を抜くと美女二人との同棲は心が持っていかれそうになる。
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