第203話 定義する魔に纏わる言葉
魔素。この世界に満ちる元素だ。語源は勿論魔法を使う為の元素であるから。
私達エルフに代表される亜人も、魔法を使えないニンゲンも、毎日毎分毎秒、呼吸をする度にこの魔素を取り込んでいることになる。
亜人の身体には、
魔素と魔力の違いは、自身の意思で操作できるかどうかであると、以前私が世話になったレドアン大陸の亜人病院で聞いた。
魔力を使って、大気の魔素に望む動きを働きかけることができる。大きく動かして風にしたり、熱を与えて火を起こしたり。水分を集めて水の塊を形成したり、それを凍らせたり。凍らせたものをまた、風で押し出して飛ばしたり。
それが、魔法だ。この世界の、魔という法則。これは、幼い頃に故郷であるオルスの巨大森で聞いた。
魔素と魔力は、普通は目に見えない。酸素などと同じだ。けれど、私や母のように魔力視という特別な能力を生まれ付き持っている者が居る。魔力視の持ち主は魔力を目で視ることができる。その為、相手の魔法の動きや発生の起こりなんかを見たり、隠している相手が亜人かどうかを見極めたりできる。今の所、私と母のエーデルワイスの家系しか確認していない。魔界には私達と同じではなくとも、生来の特別な才能を持つ者も少なくないとか。
そして魔術とは、魔の法則を利用した技術のことだ。応用と言っても良い。例えば、自身から自然に出る魔力を抑えて探知魔法に引っ掛からなくする魔力ステルスや、魔力そのものを圧縮して解放することで爆発を起こす
魔術は、その多くが魔界に伝わるものらしい。魔法の効果を飛躍的に高めるので、機会があればドンドン覚えていきたい。
最後に、魔界のニンゲンが魔法使いである亜人に対抗するために編み出したのが、魔素を操って望む方向へ導く、魔導の術だ。私の近くではジンが使い手だ。私が射出した攻撃魔法を不思議な力で弾かれて、魔法が命中しなくなる。これには魔力は使われていない。専用の特別な道具を用いて仕様される。ジンの場合、大剣と手袋だ。大剣は師匠から借りているらしいけれど。
因みにこの魔導は、亜人にはできないらしい。使用者から魔力が出ている関係で、上手く思い通りに作用しないらしいのだ。正にニンゲンの為の技術。
◇◇◇
以上が、私のこれまでの20年間のエルフ人生で、実体験を込みで学んできた、魔の道――魔道の概要だ。
「……ここまでは、言ってしまっても良いの。やつがれは、この
「!」
屋敷の裏、すぐ崖の近くの広場のような場所。観光客は立ち入れない私達だけの空間。そこでシャラーラは、語り始めた。
「星? シャラーラは、宇宙からやってきたってこと?」
「その通りである。天より原初の種族が降り立ったなどという神話があるであろう。それである」
「…………な、なるほど……」
ジンが驚く。
私は、それは知っていた。以前シャラーラ本人から聞いたからだ。別の惑星からここへやって来たと。宇宙飛行士であったのだと。
1万年前に。
「しかし。やつがれの居た世界でも、魔法と呼ばれる物は存在した。現代のものとは原理が全くの別物であるがの。……古代魔法とでも呼ぶかの」
「古代魔法……!」
シャラーラが魔力を感じて、私が見えなかった、魔導の道具。
つまりそれは。
「魔導術の道具には、古代魔法が使われているということね」
「わっはっは。すぐに答えを言うの。汝は」
全く知らなかった、新しいことを学ぶ。
胸が熱くなる。高揚してきた。
正に、私が冒険者として覚えたかった感覚だ。
「…………!」
だらしなく口角が上がって、ぶるりと身体を震わせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます