7話 スキル習得『伐採』

[受け継がれし伐採斧]

 斧

 ATK 30

 耐久値 87 /100

  STR +20

  伐採 +50

 (スキル習得 『伐採』)


 単純な性能の高さも凄いが、「スキル習得」って凄いな。括弧カッコ書きなのは、看破アビリティが発動した項目ということになる。誰かが偽装した訳ではないだろうから、秘められたスキルってやつかな。

 「スキル習得」の内容は、該当スキルを使用者に習得させるためのアイテム限定のスキルらしい。まぁ、プレイヤーが好き勝手他人にスキルを与えられたら大騒ぎだわな。

 伐採スキルが今後活躍するかは分からないが、こういった道具からスキルを学ぶことも出来ると分かったのは嬉しい。古本屋とかあれば、覗いてみるのも良いかもしれない。


「この斧も借りれるんですか?」

「お、レイちゃんお目が高いね。そいつは結構人気なんだよ」

(でしょうね……)


 「スキル習得」を抜きにしても、他のと比べて性能が段違いだ。

 質問の回答にはなってなかったが、他の職人さん達が笑って他の斧を選んで行ったので、お礼を言って斧を担ぐ。

 メニューから武装枠を表示すると、[受け継がれし伐採斧(借用)]が装備出来るようになっていた。なお、借り物は「アイテム」に仕舞えないらしい。

 そうして俺を含め大きな斧を担いだ集団がノルの森へと向かった。

 管理区域が設定されているだけあって木の間隔がそこそこあり、思っていたほど視界は悪くなかった。


「そういやレイちゃんの得物えものはなんだい?」

「片手剣と小盾です。……まだ使ったことないですけど」

「そうかい。両手斧で戦うのは慣れが必要だし、群れが来たら取り敢えず斧捨てて自前のを装備しときな」


 そんな話をしていると、街を出る前にメヂヘルをセットしておいた「採取物発見」に反応があった。


[メヂヘル]

 品質 72

 一般的な薬草で、葉がHPポーションの素材となる。根を残して上だけ採取すると、次の採取までの期間が短くなる。


 ふらふらっと近づいて反応のあった植物を鑑定してみると、品質もが表示された。ありがたい。


「初めて森に入る割にあっさり見つけられたみたいだね。ちなみに、すぐそこにメギクタケが生えてるのは気づいてるかい?」

「えっ」


 目を向けると、何処にでも生えていそうな見た目のメヂヘルよりもよっぽど目立つ青色のキノコが生えていた。

 完全にスキル頼りで、自分の目を使っていなかった証拠だ。アイリさんがニヤニヤしている。


 ひとまずの対応としてその後はこまめに「採取物発見」の対象を切り替えつつ、進路上にあるメヂヘル、メギクタケ、デイトキを邪魔にならない程度に回収して進んだ。いずれは自身の観察眼を鍛えたい。その前に「採取物発見」の枠が増えるかもしれないが。

 なお、小走りで採取してる姿を職人さんたちは暖かい目で見ていた。なんでも、かつては小銭稼ぎのために自分達も通った道なのだとか。


 そうこうしているうちに、アイリス工房の管理区域に着いたらしい。杭と紐、看板で囲まれたエリアに出た。看板には立ち入りを禁止するものではなく、許可なしでの伐採が禁止なのだと書かれている。

 伐採の途中でフォレストウルフが現れるため、二人一組で片方が警戒しながら作業を進めるが基本とのことで、俺はアイリさんと組むことになった。


 どれを切れば良いのか分からないと聞いてみたところ、既に選別は終わっているらしい。麻紐がくくられたものを切れば良いとのこと。


「[スキル習得『伐採』]」


[スキル発動前に、該当アイテムを使用して『伐採』を行ってください。]


 作業の前に使ってみたところ、システムに怒られた。

 まぁ、フレーバーテキストにも「実践を通して伐採の何たるかを教えてくれる。」って書いてあったしな。つまり一本は自力で切り倒せ、と。

 なおアーツのような、所謂いわゆるアクティブスキルは口に出す必要がある。というか選択したら勝手に口が動く。


 そして伐採における斧の構え方から教えて貰いつつ、切ってみた。一本切るのに5分以上かかったが、倒れる途中でアイテム欄に入るため、現実で必要な受け口や追い口について細かいことは特に言われなかった。

 ちなみにアイリさんはずっと見ていてくれるらしい。


 一本目を切ってから使ったところ「スキル習得 『伐採』」はちゃんと発動し、スキル欄に伐採スキルと迅速な伐採アビリティが追加されていた。どちらも初期値に斧の補正が加わり、熟練度51となっていた。すさまじい。

 そうしてサクサク作業が進むようになり、四本目の木に向かったのだが。


[タクススの木(若木)]

 品質 75

 一般的な常緑針葉樹の若木。弓の素材として扱われることが多い。


 今まで間伐として切っていたのは品質50より低いものばかりだったが、これは何故か75もある。


「……これ結構良さそうに見えるんですけど、これも切るんですか?」

「そうさね。これも悪くないんだけど、もっと良くなりそうなのが近くにあるだろ?」


 そう言ってすぐ近くの木を指さすアイリさん。鑑定すると、そちらは品質80を超えていた。近過ぎると両方ともダメになってしまうため、より良く育ちそうなものを残すのだそうだ。


「必ずしも全てが上手く育つとは限らないからね。駄目になるのが出るのを踏まえて植えるんだが、たまたま近くのが両方ともいい感じに育つと片方は切らなくちゃいけないんだよ」


 勿体ないとは思うが仕方ない、と斧を構えた所で辺りが騒がしくなった。


「群れが来たぞ!」

「っ! レイちゃん、剣と盾を」

「はいっ」


 言われて斧をそっと置き、片手剣と小盾を装備した。






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