2話 ゲームスタート……?
安直と言えば安直なタイトルだが、フルダイブでのMMOとして日本初であることを考えると、これくらいシンプルな方が良いのかもしれない。
あたかも現実逃避のような事を思い浮かべていたが、別にそういう訳ではない。ダイブするのに時間がかかるので暇なだけである。
医療用として広まった当初は十分以上かかった事を考えるとかなり短くなっているのだが、それでも数分はかかる。独り言のような事をひたすらに思い浮かべる虚無時間が続くくらいにはする事がない。
そんな事を考えていると、準備が完了した。
視界が徐々に暗転し、いざ、ゲームの世界へ! と気持ちを引き締める。
が、次に表示されたプレイヤー名の入力画面が表示されてずっこけた。
(……まだ設定終わってないのかよ)
名前被りに四苦八苦しながらも確定すると、今度は各種設定を求められ更に勢いを削がれてしまう。ダイブしてからする事だろうか。
「なんでーーっ!?」
文句を口にしようとしたが、その声は自分のものよりも高く可愛らしいものであった。思わず立ち上がって周りを見ると、先程まで座っていた椅子の他に、姿見がひとつ置いてある。
姿見の前に立つと、可愛い少女が写っていた。身に纏う服はデフォルトの、昔ながらのRPGにおける町娘のようなシンプルな服だ。
(なるほど、せっかく作ったんだからさっさとダイブしたいよな)
上げて落とされた気分だったが、テンションは見事に回復していた。鏡に映る姿はばっちり美少女だし、にぎにぎしてみた手は小さくて可愛らしい。
椅子に戻ることはせず、姿見で自身を鑑賞しながら設定に戻る。
設定した内容は、例えば他プレイヤーのスクリーンショットや動画配信などに対する描画設定なんかがあった。全てを公開にすると名前や容姿が反映され、全て非公開にすると撮影者側の設定によって透明人間か半透明な黒子として表示され、名前は公開されない。フレンドかどうかや、例外とするプレイヤーによって設定を変更する事も出来るらしい。
その辺りの設定を終え、今度こそゲームの世界へ旅立つ準備を終える。あとは確定するだけでゲームを始められる状態で、
「あ、あ〜〜」
俺は発声練習をしていた。
いや、これがなかなかに難しい。
狙った音程で声を出す事自体は、声が掠れることもないフルダイブにおいて不自由はないのだが、自分の声とのギャップに感覚が慣れない。
出したい声は出せるのだが、会話だと変になるかもしれない。
「拙者親方と申すは、お立ち会いの内にご存知の方もござりましょうが、お江戸を発って二十里上方ーー」
見た目にそぐわない渋い発声練習だとは思う。が、アメンボ赤いなあいうえお、の続きが分からなかったので仕方がない。
こうしたまま十五分程が経ち、ようやくゲームを開始した。
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