乙女の悩み(2)
子どもを戦わせて、こそこそ隠れている俺にそこまで言われる価値はない。
でも、それでも
俺が共に戦おうとするだけで、それだけで価値があるらしい。
こんな大人の男、カッコ悪いだけだと思うんだが。
「あ、もちろん戦闘のことだけじゃないですよ」
「え」
「案内所のこと、地図のこと、水のこと、食糧のこと、寝る場所のこと、駐車場のこと……私だけじゃやく、
りーだーしっぷ。
……は? はぁ?
ただのサバイバル&ゲーム脳で乗り越えてきた感しかないんだが、俺は。
しかし、顔を上げた
俺がどんなに情けなくて格好悪い事情で動いていても、最終的に
子どもと女の子は笑っているのが一番だ。
「……こんな俺でも、そう言ってもらえるのなら頑張った甲斐あるよ」
「はい。本当に救われてます。頼りに、してます。私、性格がきついって言われるので、今まで周りに、頼りになる人いなくて……
「……っ」
はにかむ笑顔。
その時自覚した。
俺の中での
でもやはり、女の子なのだ。
年頃の、幼い、ただの……普通の。
どんなに『おっぱいのついたイケメン』『ちよちゃんと結婚したい』とか言われる乙女ゲーヒロインであろうとも、きっと、本心では子どもらしく大人に頼りたいんだろう。
それのなにが悪い。
当たり前のことじゃないか。
「こんな状況なのに……いくら戦う力があるからと言って、未成年の女の子を最前線で戦わせる成人男性ってカッコ悪くない?」
「そんなことないです。それ以外のところですごく気を遣ってくれますし、
「そっか。役に立てたならよかった。ゲームの話だけど、俺、色んなゲームしててさ、サバイバルとか、対戦ゲームとか。そういうのの知識でなんとかやってきてて、正直自信なかったんだけど」
「ゲームの知識! すごいです!」
「俺は
「……っ!!」
これはガチめの本心である。
素直に尊敬するし、気恥ずかしさもなくそれを伝えられる。
この時の俺は
「さ、そろそろちゃんと休んで」
「あ、は、はい。そうですね。そうします。あの、お話できて、少し、いえ、かなり……リラックスできました。ありがとうございます」
「あ、うん。それは俺も。話ができて楽しかった。見張り頑張る」
「はい」
笑う
この近距離で謎に手を振り合い、
その寝顔がまた可愛い。
いつまででも見ていられる。
この感覚、俺はすっかり攻略されてしまったのかもしれない。
まあ、死なないためにも引き続き
そうして見張りをしてみたものの、その夜は特になにもなく過ぎていった。
ただ、俺はこの時すでに——明日マネージャーと合流できないな、と思った。
***
「開きませんね」
「なんとなくそんな気はしてたけどな」
「ど、どうしましょう?」
「ひとまず部屋に戻って
翌朝。
俺と
案の定、扉は開かない。
マネージャーとはこれで合流不可能になった。
食糧も持ち合わせはないし、水も残り少ない。
「ドアの外、なにか鳴き声しましたよね?」
「鳴き声っていうか、デカい足音もしてたよな。外は相当ヤバいのがいると見て間違いない。
「で、ですよね……。曇りガラスでよかったような、悪かったような……」
「あれ、多分曇りガラスっていうか強化ガラスだと思うぞ」
「っ、怪物たちの侵入を防ぐための……?」
「多分な」
階段を下り、部屋に戻ると
顔色はだいぶいい。
止血は成功したらしく、傷は一応塞がっている。
無理に動かせばすぐに開くだろうが、部屋にあった鉄板を押しつけて布で再度固定した。
骨折しているわけではないが、傷口を圧迫して開きづらくする。
変な感じに傷口がくっつかないよう水で洗ってからだけど。
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