ご飯美味しい
「「「あ〜〜〜〜」」」
炊事場の調理器具を使い、肉を焼く。
人肉食い漁ったゾンビを、ハーピーという怪物がさらに食いちぎっていた場所で肉を焼くっていうのもなかなか精神的に厳しいかと思ったが存外気にならないものである。
香ばしい焼けた肉の香りは空腹という最強のスパイスを前に、そんな事実はさしたる問題ではなくなった。
味つけは塩胡椒のみ。
しかし、集めた肉の塊はそれだけでいい。
それだけで、肉は肉という存在の価値を高めてくれる。
いや、野菜もちゃんと焼いてあるけれども。
紙の皿に焼肉のタレも十全に用意してある。
割り箸も、水も。
あとは焼き上がるのを待つのみ。
「もう我慢できねー! いただきます!」
「「あー!」」
まずは落ち込んでいる
そう、そのすべてにおいて優先されるべきは
それをこの最年長で一番なにもしていない成人男性の公務員はよぉ!
クズか!
ああ、『おわきん』の野郎は全員クズだったわ!
「
「え、あ! ありがとうございます。苦手なものはありません」
「あ! それじゃあピーマン食べませんか!? 僕苦手なんですよね、ピーマン」
「俺も俺も!」
テメェらどこまでも、どこまでもぉ!
……話題を変えよう。
俺は大人だからな……!
「本当はお米もあればよかったんだけどね」
いや、本当それは贅沢だとわかってはいるんだけど、そう思わずにはいられない。
焼肉と言ったら米。
焼肉のタレの染み込んだ白米。
それを、タレのたっぷり絡んだ肉とともに口の中へとかき込む。
その幸せは筆舌に尽くしがたし。
しかし、さすがにクーラーボックスやテントを漁っても米は発見できなかった。
ソロキャンパーならば飯盒に米ぐらい持ってきていそうなものだが、実に残念だ。
その代わり、マシュマロやさつまいもなどの焼いたら美味しいスイーツ系は割と発見できた。
さつまいもは腹に溜まるから、拾った破れていない布袋に入れて持っていくことにする。
明日の非常食だな。
「食べながらでいいから、今夜の寝床のことを考えたいんだが、いいか?」
「お、そうだな」
どんだけガブガブ食ってんだ。
肉が間に合わねーよ。
「コテージエリアのクリーチャーは朝倒してあるから、今夜もコテージで寝るのはどうだろう。風呂もあるし、安全性はそれなりに高いと思う」
「賛成!」
「僕も異論ないです。今夜はゆっくり寝たいです!」
「
「そう。つまり助けが来るのは明日以降だと思う。今夜を乗り切って、駐車場側の案内所に戻って待つのが安全だと思うんだ」
この提案はゲームにはないルートだ。
だから、正直うまくいくかどうかは賭けである。
ゲームでは助けは来ないし、自力で脱出するにしても攻略対象によっては色々悲惨だしハッピーエンドも俺からすると鬱エンドだし。
でもまあ、
他のルートで脱出できるのなら、それに賭けるのは悪いことではないと思う。
さらに事態が悪化するか、それとも本当にハッピーエンドに辿り着けるか——。
「でも、さすがになにもしないまま助けを待つのもそれはそれで危険だと思う」
「え? どういうことですか?」
「前も言っただろ。ゾンビが外へ逃げ出して、感染爆発したら安全な場所がなくなるって話」
「「「あ」」」
こいつら三人とも忘れてたのかよ……。
「最悪、マネージャーが来ても俺たち全員を乗せられない小さな車で来る可能性もあるし」
「あ! そ、そう、ですよね。マネージャーさんは
「そう」
「そ、そんな! なんとかならないのか!」
「連絡手段がないんだから、どうにもできない」
慌てる
実際その可能性の方が高い。
運転手のマネージャー含めて俺たち四人。
普通車でも定員オーバーだ。
「俺たち四人が安全に外へ出て、なおかつゾンビ一匹外へ出さない。それが理想だろう。と、なると明日来たマネージャーに、一度応援を呼びに戻ってもらう必要が出てくる。多分マネージャーもこのキャンプ場に近づいたら、携帯繋がらなくなるだろうし」
「うっ! そ、そんな!」
「高圧電流の柵のことも、ありますもんね。普通の人ではあの柵をどうにもできませんし」
「そうそう」
さすが
まあ、そんな感じで俺は正直、明日に全員が無事に脱出するのは無理だと諦めている。
マネージャーがうっかりゾンビに殺されたり、このキャンプ場で実現してやがる件の組織に見つかっで殺されるのも勘弁だ。
マネージャーには速やかに事情を説明して、救援を呼んできてもらいたい。
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