飯食って頭が働きすぎた結果
「だから俺たちはこのクソみたいなキャンプ場で、数日救助を待つ覚悟をしなきゃいけないと思うんだ」
俺が告げると、
無理もないけどね。
「じょ、冗談じゃない! こんなところに何日もいたら、頭がおかしくなっちまう! それに飯はどうするんだ! 今食ってるこれだって、危ない目に遭いながら必死でかき集めたんだぞ!」
「そ、そうですよ……! 食糧がなくなってしまいます! 安全な場所もないのに!」
「そんなの俺だってわかっているよ。でもキャンプ場の外の人間からしたら、俺たちを見捨てるのが一番最善の方法なんだ。わかってるか? 俺たちを助けるメリットより、ゾンビをキャンプ場の外へ出すデメリットの方がデカいんだ」
「そっ! ……そ、それは……!」
「俺たちは見捨てられないために、外と交渉しなきゃならない。キャンプ場の中にいる俺たちが、あのゾンビたちと同じ病気なりなんなりに感染していないと証明する術もない。外の人間たちからすれば、俺たちもゾンビになるウイルスなり菌なりも持ってるかもしれないんだ。俺たち自身、感染していない証明はできない」
過酷だが突きつけなければならない。
もう俺たちは、外と認識に差が生まれているのだ。
愕然とした
そして、おそらく自分が一番その“異質”さに気づいている
「助けてもらうには自分の身を差し出すしかないだろうってことも、想定しておかなきゃ。多少モルモットにされたとしても、ゾンビだらけのキャンプ場から行きて出られるのならマシだって、そう思うくらいの覚悟でこれから先過ごさなきゃいけないと思う」
「ぼ、僕たち……汚染物質みたいなものってことですか……?」
「そういう扱いをされても仕方ないってことだ。外のヤツらからすれば、そう見える。もし自分が外の人間だったら、テレビで『ゾンビに汚染されたキャンプ場から助けられた人間』の話を聞く立場だったら、普通にちゃんと検査しろって思うだろ?」
「うっ……そ、それは……!」
人間なんて、わかりやすい生き物だ。
攻撃してもいい対象があれば、いくらでも差別して攻撃してくるぞ。
「助けられたあとも、マスコミに追い回されるだろうさ。『中の様子はどうでしたか?』とか『ゾンビからどうやって逃げ回ったんですか?』とか『襲われている人を助けなかったんですか』とか……言いたい放題言われる。俺たちの今の状況を、面白おかしくバライティーに仕上げて楽しむだろう。世間がそれを見て俺たちになんていうと思う? 想像できるよな?」
「……ぐっ……!」
「もちろんマスコミだけじゃないさ。今流行りの動画投稿サイトの配信者たちも、自分の動画再生数を伸ばすために凸ってくるぜ。いい餌なんだよ、このまま脱出したら」
多分モデルの
まだ納得しきれていなかった
「俺たちが安全に脱出して、身の安全を保証してもらうためには国家権力に助けてもらうのが一番だ。モルモットにされるほうが、きっとマシだよ。お前らがマスコミに出て今回の体験を金にしたいなら、話は別だけど」
「そ、そんなこと!」
「ま、待ってください、
お、おっとー?
ここにきて
さすがナチュラルトラブルメーカー。
「な、なにを言っている! そんなこと政府がするわけないだろう!」
「わからないじゃないですか! うちの国の政府が他の国の実験場に選ばれたこのキャンプ場に、国民を差し出したとか……! そんな話だったらどうするんです!?」
「で、でも! まさかそんな!」
「ストップストップ!」
とりあえずゲームではサラリとしか語られていない、キャンプ場を地獄に変えた“組織”は政府関係ではなかったはずだ。
どっちかっていうと、テロリストの部類だったような……。
その辺の設定、かなりフワッとしていたんだよな。
『おわきん』がクソゲーと呼ばれる所以の一つが、その辺の設定のふわふわさだ。
なんか課金してDLCの追加ストーリーを購入すれば、その辺の謎もスカッと解決する、と書いてあったんだけど、そのDLCいくらだと思うよ?
4500円だったんだぜ。
当時学生だった俺と彼女が買うと思う?
っていうか買ったユーザーいんの?
この価格にはネット攻略サイトもブチギレておられた。是非もなし。
……いかん、今思い出してもやはりクソゲーだ『おわきん』。
「憶測でものを言い出すとキリがない。予測できる範囲でものを言え、
「で、ですが
「俺たちが置かれている状況が異常なのと、そういう陰謀論は結びつけると危険だ。前提を作って動いて失敗したらどうする? こっちは命が懸かってるんだぞ」
「う」
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