管理棟イベント
「なんでだよ!」
「「!」」
管理棟の玄関を潜ると、
ああ、ショップのシャッターが降りていて、食べ物が手に入らなかったから逆ギレしていたのか。
「そんな……ショップが使えないんですか……!」
「まあ、防犯的には当たり前だろうな。お前らもあまりシャッターを叩くなよ。防犯カメラが動いてるぞ」
「っ!」
さすがに国家公務員の
緊急事態とはいえ、褒められる行為ではないからなぁ。
「くそッ! ショップは諦めるしかないのか!」
「今日のところは諦めて、本当にヤバくなったらシャッターを破壊させてもらおう。とりあえず水はそこの小型冷蔵庫にあるみたいだ」
「え! あ、本当だ! すごいです、
「お前たちがショップにこだわり過ぎていたんだよ。冷静に周りを見回せば、見つけられたさ」
ソッコーで諦めた
一本二百円というそこそこなお値段だが、四人で六百円。
冷蔵庫の中の本数は八本。ゲームより多いな?
いや、幸いだ。全部購入させてもらおう。
「とりあえずお金はここに置いて……一人二本も持てるみたいだ。持っていこう」
「はい!」
「
「え、でも」
「ゾンビが出たら戦ってもらわなきゃいけないから、気にしないで。荷物持ちくらいはできるから」
「あ、ありがとうございます、
「あの、ここ、安全そうじゃありませんか? 今夜はここに泊まりましょうよ」
そう言い出したのは
まあ、夕方からずっと歩き詰めだ。
化け物には何度も襲われるし、心休まらない。
腹も減った。
精神衛生的にも、このまま一眠りするのが最善。
それはわかる。
ゲーム内容を知らなければ、俺だって二つ返事で賛成しているさ。
「確かに、疲れたもんな」
「そう、ですね」
くっそー、俺も賛成してぇ〜!
「俺もそれは賛成だけど、建物の安全性を確認しないと怖くないか?」
そう、ここ……
このままなにもせず寝たら、全員死亡エンドだ。
っていうか、このセリフは
なに言い出しっぺになってんだぁ!
ゲームで言い出すのは
……俺が言い出さないから
くっ、変な補正入りやがって!
「確かに、最初に私たちが出会ったビルも、中にゾンビがいましたよね……」
「そ、そうだな。ゾンビが隠れてたら……まずいよな」
「あ……そ、そう、ですよね……」
フラグが立った瞬間、天井からグチュ、グチュ、という音が聞こえてくる。
その粘着質な水音と共に、ポタリポタリと俺たちの中心に紫や緑の液体が垂れてきた。
全員がその場から距離を取る。
そして、恐る恐る上を見上げると——。
『オ、ォオ、ォオ、ォ……ォアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「うわあああああ!」
顔が見えるだけでも五つ、浮かび上がるスライムのようなゾンビ。
作中屈指のキモさを誇る、スライムゾンビだ。
俺たちが部屋の四隅に散ると、落下して人の形を取る。
「ひ、ひいいぃ! なんですかこいつ!」
「……液状? いや、粘液か? スライム状のゾンビか!」
「そ、そんなの倒せるのか!?」
俺たちが戦えないから仕方ない。
だが、こいつはマジで気持ち悪いだけでなく——強い。
『おわきん』の中ボスではトップクラス。
そんなのこんな序盤に設定すんじゃねぇよと、何度キレかけたことか。
こいつ、これ見よがしに出ている顔が弱点ではないのだ。
こいつの弱点は——体内、太もものつけ根部分にある赤い核!
スライムゾンビは取り込んだものすべてが融解しているため、赤い核は人間の血肉の固まった部位と見分けがつかず、めちゃくちゃわかりづらい。
ここまでいえばスライムゾンビの難易度はおわかりいただけることだろう。
そう、マジ、クソ。
しかし、それをどう伝えたらいいんだ!
三メートル伸びる液状の腕の攻撃を避けながら、
俺たちを巻き込まないためだ。
「……クソ!」
「
「
「ひっ」
俺を引き止めようとした
——よし!
「
「!」
顔面を何度も潰して効果がないことに、苦虫を噛み潰したかのような
すぐに顔をスライムゾンビへ向け、右腕を振りかぶった。
「はあああああっ!」
俺の言ったことを信じてくれたのか。
無数の腕が飛び出し、
それを華麗に避け、一回転しながら拳を右太もものつけ根へと叩き込んだ。
『ォギャァァアアアアアアアアアアアアア!』
水のようにバシャっと地面に広がるスライムゾンビ。
よ、よかった……無事に勝てた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「
「は、はい。危ないところでしたけど……怪我はありません」
「よかった。あ、水……水分補給、しておきなよ」
「あ……ありがとうございます……
パワードアームをつけた手ではキャップを取りづらかろう。
キャップを外して手渡すと、グビグビと一気飲み。
ほぼ半分飲み終わると、一息。
「……
「ううん、お疲れ様」
とりあえず、管理棟のイベントはこれでクリア、だな!
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