管理棟への道
次の目的地は管理棟。
暗い道、月明かりを頼りに案内所で取ってきたパンフレットの道案内を見ながら道なりに進む。
「ウアアアァ!」
「ぎゃー!」
「任せてください!」
道中飛び出すゾンビを、その都度
要するに殺しているのだが、脚を折ったところで這いずって追ってこられる方が怖かったため
一連の事件が幕を閉じたら、きっと自首するつもりだろう。
バッドエンドの中に、そういうエンディングもあった。
けれど、あれはもうゾンビだ。
死体が動いているのだ。
……気に病まれるとこっちの心まで痛み出す。
どうかあまり気にしないでほしい。
「はぁ、はぁ、くそ、もう、本当なんなんだよっ。冗談じゃねぇよ……くそ」
さて、早速
暗い夜道でいつゾンビに襲われるかわからない中、懐中電灯もつけられないとなるとやはり精神的につらいものがある。
夕飯も食いっぱぐれているから、余計イライラしてしまうのだろう。
俺も腹は減ってるから、気持ちはわかる。
でも俺がイラつくのはお前だ、
さっきビルの三階で置き去りにされたことを、俺はまだ根に持っているからな!
だが、ここで
ゲーム内の
で、ゲーム内の
ウザすぎる。
「腹も減ったし……」
「きっと管理棟に行けばなにか食べ物がありますよ」
「最低でも水は確保したいところだな。変な汗が出て脱水症状にでも陥ったら洒落にならない」
「そうですね」
管理棟の中にあったショップは、シャッターが降りていて利用できない。
つまり食糧は手に入らないのだ。
しかし、管理棟入ってすぐのところに水が売っている小さな開閉式の冷蔵庫がある。
あそこから四人分のペットボトルの水を頂戴するのだ。
なお、せっかく四人分あるのに、
俺は大事に飲むつもりだが、この様子だと
しかし、一応裏技的に炊事場の水道で水を出すことができたはずだ。
ゲーム通りで、
ただ、あそこにもそこそこ強いボスがいるからできれば避けたいんだよなぁ。
「あ! 見てください! あれですよ! 管理棟!」
月が雲に覆われて不気味にしか見えない巨大な黒い塔こそ、このキャンプ場の管理棟だ。
ふふ、ここに出るゾンビもヤバかったなぁ……うっかり死なないように気をつけよう。
「おい! 鍵を貸せ!」
「は?」
「俺が開けてくる!」
なにに焦っているのか、
シンプルにうるさっ。
「……ほらよ。ゾンビに気をつけろ、よ」
俺の話など最後まで聞かず、差し出した鍵を奪い取ると
なにをそんなに慌てているんだ?
「どうしたんだ、あいつら」
「お腹が空いているんですよ。私も食事の前だったから……」
「ああ、まあ、俺もだけど……」
確かに。
空腹はよくないよなぁ。
でも、俺はここで食糧が手に入らないのを知っている。
腹がぐう、と鳴るが、明日の昼までは多分なにも食えない。
ぐっ、考えるとつらいな。
考えるな、つらくなる。
ゾンビにいつ襲われるかわからず、食事もままならない極限状態……大人といえど、冷静さを欠くのは当然か。
「食べ物の話はやめておこう。万が一水も食糧もなかった場合のことも考えておかないと」
「
「いや、えーと……あ、そう! 仕事で食事制限とか、することもあるからさ。肌荒れしないように、肉は脂を落としてから食べる、とか」
「わあ……モデルさんってそんなことまでするんですか!」
「そうそう。見た目が商売道具だし?」
嘘は言ってない。
一応厳しい世界なので、
筋肉が必要な時は食事制限の他にジムに通い、体を鍛えたりもしているようだし。
「だから、もし俺が食べられそうにない食材があったら、
この極限状態で食べられないモノがあるから代わりに食べて、といえば
食えないのはつらいけど、生き延びるためなら空腹ごとき耐えてみせるぜ!
「……それは、私のためですか?」
「え?」
「こんな時ですから、
あ、あれぇー!
は、外した!?
「う、うん、そ、そうだね」
くっ、ダメだったのか。
どうしたらいいんだ……嫌われるのは困る。
見捨てられて死にたくない!
「……でも、お気遣いありがとうございます」
「え、いや……」
機嫌を損ねてしまったぁ、と内心ガタブル震えていたが、
ちょうど月の光が黒い雲の隙間から降り注ぎ、彼女のその微笑みがよく見える。
……嫌われわけでは、なさそう?
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