第7話
「正解、ね」
フジタさんは苦い顔をして目線を逸らした。
『戻る確率は』
「ほぼ無いわ」
『…要りません』
「でも」
『要りません!』
俺は、肩に伸ばされた手を払い除けてしまった。
「…そっかぁ。そんな気はしてた」
『すみません。…もう、俺たちは失礼します。お世話になりました』
*
「あ、えっと、ツグ…じゃない、お兄ちゃん。何話してたの」
『…うん。何でもなかったよ』
「そっか」
不安げなルノイの顔に悲しくなる。でもこれからは、ルノイに不安を感じさせちゃいけない。
俺は自分の両頬を叩いた。
『リノ。もう出発するよ。俺は荷物まとめるから、トイレ行っておいて』
「うん、わかった」
俺はルノイの背中を見送ると、支度の続きを始めた。
*
俺たちは改めてフジタさんに丁寧に挨拶をして家を出た。
身分証を偽装してもらったので、ここからはモノレール移動になる。
俺たちはしっかりと手を繋いだ。そうしていると、まるで本当の兄弟のように見えるのだろう。
*
**接敵:桐町
──??(グロテスク 蜘蛛型)
**戦闘終了:勝利
**接敵:地下鉄
──??(グロテスク 鼠型)
**戦闘終了:勝利
*
『ここだよ』
「ここが、宇宙船センター…」
この区画の建物は、ナンデモ街などの無骨なものとは全く違う。ルノイの目が完全に釘付けになっている。
かく言う俺も、ここにはあまり来たことがない。正直心臓が跳ねて仕方なかった。
『行こうか』
俺はルノイの手を固く握って足を踏み出す。
*
宇宙船の予約はもう済んでいる。偽の身分証を持ち、ゲートに並んだ。
「そろそろ僕たちだよ」
『そうだね…』
列が少しづつ前に進んでいく。俺たちもそれに従って歩を進めた。
一人、また一人とゲートを抜けて、とうとう自分たちの番が回ってきた。
『ナズキ・フルヤです』
「身分証をご提示ください」
俺は自分とルノイの身分証を係員に渡す。
その瞬間だった。
パァン!
どこからが飛んできたギアの銃弾が、ルノイの体を貫通した。
『ルノイ!』
「っ!」
思わず名前を呼んでしまった。俺はルノイの体を抱き寄せる。
スライムの体のルノイには、銃弾はほとんど効かない。驚かせるためのものだろう。
「やっぱり。あなたが、ツグナ・カドムラですね」
**奇襲:宇宙船センター
──カルハ・ナルスティア(ジャスティス 階級:S)
──シユル・レイ(ジャスティス 階級:A)
──……
─…
どんどんと情報が更新されていく。しかし、そのどれを見ても分類はジャスティスだ。
バレていた。
そりゃそうだ。
簡単に行き過ぎていたことに疑問を感じなかったのか?
いつか言われた。馬鹿なのかと。
今気がついた。俺は、馬鹿だ。
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