第7話

「正解、ね」

 フジタさんは苦い顔をして目線を逸らした。


『戻る確率は』

「ほぼ無いわ」


『…要りません』

「でも」

『要りません!』


 俺は、肩に伸ばされた手を払い除けてしまった。


「…そっかぁ。そんな気はしてた」

『すみません。…もう、俺たちは失礼します。お世話になりました』



「あ、えっと、ツグ…じゃない、お兄ちゃん。何話してたの」

『…うん。何でもなかったよ』

「そっか」


 不安げなルノイの顔に悲しくなる。でもこれからは、ルノイに不安を感じさせちゃいけない。

 俺は自分の両頬を叩いた。


『リノ。もう出発するよ。俺は荷物まとめるから、トイレ行っておいて』

「うん、わかった」


 俺はルノイの背中を見送ると、支度の続きを始めた。



 俺たちは改めてフジタさんに丁寧に挨拶をして家を出た。

 身分証を偽装してもらったので、ここからはモノレール移動になる。


 俺たちはしっかりと手を繋いだ。そうしていると、まるで本当の兄弟のように見えるのだろう。



**接敵:桐町

──??(グロテスク 蜘蛛型)

**戦闘終了:勝利


**接敵:地下鉄

──??(グロテスク 鼠型)

**戦闘終了:勝利



『ここだよ』

「ここが、宇宙船センター…」


 この区画の建物は、ナンデモ街などの無骨なものとは全く違う。ルノイの目が完全に釘付けになっている。

 かく言う俺も、ここにはあまり来たことがない。正直心臓が跳ねて仕方なかった。


『行こうか』

 俺はルノイの手を固く握って足を踏み出す。



 宇宙船の予約はもう済んでいる。偽の身分証を持ち、ゲートに並んだ。

「そろそろ僕たちだよ」

『そうだね…』


 列が少しづつ前に進んでいく。俺たちもそれに従って歩を進めた。

 一人、また一人とゲートを抜けて、とうとう自分たちの番が回ってきた。


『ナズキ・フルヤです』

「身分証をご提示ください」

 俺は自分とルノイの身分証を係員に渡す。

 その瞬間だった。


 パァン!


 どこからが飛んできたギアの銃弾が、ルノイの体を貫通した。

『ルノイ!』

「っ!」


 思わず名前を呼んでしまった。俺はルノイの体を抱き寄せる。

 スライムの体のルノイには、銃弾はほとんど効かない。驚かせるためのものだろう。


「やっぱり。あなたが、ツグナ・カドムラですね」


**奇襲:宇宙船センター

──カルハ・ナルスティア(ジャスティス 階級:S)

──シユル・レイ(ジャスティス 階級:A)

──……

─…


 どんどんと情報が更新されていく。しかし、そのどれを見ても分類はジャスティスだ。


 バレていた。


 そりゃそうだ。


 簡単に行き過ぎていたことに疑問を感じなかったのか?


 いつか言われた。馬鹿なのかと。


 今気がついた。俺は、馬鹿だ。

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