第6話
「結構遠いみたいだね」
『そうだね』
モノレールに揺られながら、地図とにらめっこをする。次の区画では乗車に身分証が必要になるので、そこからは徒歩だ。
ギアも改造を重ねた。階級もだいぶ上がった。これならいつ何があっても、きっと大丈夫だ。
*
主な戦歴
**奇襲:タルメ駅
──イミラ・タジマ(ジャスティス 階級:A)
──スア・ルーセイン(ジャスティス 階級:B)
**戦闘終了:勝利
**接敵:地下道
──??(グロテスク 人型)
**戦闘終了:勝利
**接敵:電子町
──ズムリ(グロテスク 人型)
**戦闘終了:勝利
…
……
………
──
ツグナ・カドムラ
年齢:19
所属:ジャスティス
階級:C
蜈ィ縺ヲ繧定ィア蜿ッが許可されています。
*
ピーンポーン…。
ドキドキする心臓を抑えてインターホンを押す。
目的の場所に来るまでに三日間掛かった。その間に、俺は一つ歳を取った。ここまで落ち着かない誕生日は久しぶりだ。
ルノイと行動を共にし始めてから、今までにない頻度で戦っている。
【はぁい】
ノイズ紛れに、女性の声が聞こえてくる。
『あの、“フルヤ”ですが』
【あー! 入って入って】
彼女の声と共に、壁だと思っていた場所が音を立てて開いていった。
*
「やあ、初めまして。アタシはフジタ。偽名だけどね」
『どうも』
「やだやだ! そんなカタくなんないでよ!」
やたらと、テンションの高い人だと思った。
『それで、その』
「急かさなくても、わかってるわよ。はい」
彼女はそう言って、俺たちに二枚の、不思議な硬さを持ったカードを手渡してきた。
「どうぞ、一般学生のナズキ・フルヤくん。そしてその弟の、リノ・フルヤくん」
「リノ…」
ルノイは身分証を眺めて、呟いた。
「同じ苗字だ」
『うん』
「僕たち、家族?」
『そうだよ』
ルノイは表情をぱあっと明るくする。
「身分証上は、だけどね」
フジタさんが水を差すが、ルノイは全く気にしていない様子だった。
*
「二人とも、今日は泊まっていきなさい。カルエナが使ってた部屋があるから」
俺たちはご好意に甘えることにした。
*
翌日。
朝食までお世話になった俺たちは、そのまま宇宙船センターへ向かおうと支度をしていた。
『今日でこの景色とも最後なんだね』
「…うん」
俺にとっては、初恋のひとを殺した世界。そこから抜け出すことになる。
なんだか…。
「ねぇ。何で僕を助けたの」
これで何度目とも分からない質問が飛んでくる。
『好きな人に似てるからだよ』
「それで後悔しないの?」
いつになく弱気な声だと思った。
『しないよ』
「あー、えっと。ナズキくん。ちょっとこっち来てー」
『はい。今行きます。じゃあル…リノ。少し待ってて』
「…」
*
『なんでしょうか』
「餞別をと思ってね。カルエナからも言われてんのよ」
『餞別ですか』
フジタさんが取りだしたのは、黒いガラスの欠片が入った小瓶だった。
『これは?』
「この前、君たちが壊したカルエナとジルシン君のギアの中からかき集めて結晶化させたグロテスク。かなり濃度が高い。ざっと百体分くらいね」
今まで散々グロテスクを葬ってきた身で何を言うかと自分でも思うが、少し吐き気を覚えてしまった。唾を飲み込む。
「──もし、君が追い詰められるようなことがあったら、これをリノに飲ませなさい」
君が、という言葉に引っ掛かりを覚えた。
『飲ませると、どうなるんですか』
「強化される。でも…リノは、グロテスクの集合体と同義になる」
包み隠して言ったのだろうが、俺は察した。
『それって、あの子の自我が押しつぶされたりするんじゃありませんか』
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