第5話
**戦闘終了:勝利
「まさか、ギアが壊れてまで向かってくるなんて」
ルノイが、倒れた彼女の頬をペちペちと叩く。
「ツグナさんが優しい人でよかったね」
『ルノイ、やめてあげて』
「はあい」
『…彼女には悪いけど、この部屋の修理代持ってもらおう』
俺は二人分の荷物をまとめ始める。そろそろ騒ぎになる頃だろう。
「逃げる?」
『うん。跳ぶよ』
ルノイはニッと笑って俺の手を掴む。モード風をセットする。サイレンが近付く前に、俺たちは静かな町に飛び込んだ。
*
『地球だったら、屋外に墓地があったから、そこで野宿できたんだけど』
今日の宿代をなくした俺たちは、深夜の公園のベンチにいた。
「僕はこっちの方がいいけどな」
『墓地の方が襲われにくいんだよ。ヒトは死んだヒトを大事にするし、怖がるから』
「生きてる異星人は殺すくせにね」
『そうだよね…俺もそう思う』
「…でもツグナさんは違う」
『…』
ガサッ。
『ヒト?』
「いや、グロテスクだ。人型だからお金持ってるかも。倒してどこかに泊まろう!」
『ねぇ、何度もきくけどグロテスクを殺すのは…』
「いいの。どうせ僕以外まともな意思なんて持ってないし。ツグナさんもヒトを倒してる」
**接敵:公園
──??(グロテスク 人型)
**戦闘終了:勝利
*
朝。
『おはよう、ルノイ』
「ふぁ。おはよう。何してるの」
『…ジルシンと通信』
【おう、小さいの! 元気か】
「何」
【元気そうでなによりだ。えっとだな…昨日二人が倒した、タシアって居ただろ。あいつからの情報なんだが】
ルノイが顔を顰めた。そういえば昨夜、彼女に罵られたことについて文句を言っていた。
「そんな名前なの」
【ああ。…あいつ、自分なりに協力しようとしてるらしいぞ。今朝早く、お前らを探して来たジャスティスを三人、不意打ちで気絶させて部署まで連れ帰ってきた。自分が助けたフリしてな】
ジルシンは声を上げて笑う。こうしていると、まるで昔みたいだ。
【とりあえず、今のところ心配はないよ。…あとはお前たちの偽装身分証だな】
「偽装…」
【宇宙船を借りたとしても、身分証がないと確認ゲートを通れないんだ。その管理にはジャスティスも関わってる。そこで本物の身分証を出せば】
「ツグナさんは捕まる」
【そうだ】
ジルシンは学校の先生のように解説をしてくれた。
【実はそろそろ、その準備が終わるんだ】
【あ! 連絡来ましたよ! 出来たって!】
遠くの方からカルエナの声がする。
【あー、えっと…この間は何も言えずすみません。わたしたちもなにか協力したくて。わたしのツテで、そういうの得意なヒトが居るんです。今彼女の家の住所送ります】
ピコン、と通知が鳴った。確認する。
『ありがとう。本当に助かるよ』
【いえ。わたしたち、仲間ですから】
『…! うん。仲間だ』
【泣くなよ。いつだって俺たちは二人を応援してる】
ジルシンとカルエナの屈託のない笑顔がぼやけていく。ああ、そうか、今、俺は。
「だってさ、ツグナさん」
『うん。ありがとう…』
溢れ出した涙が、頬を濡らした。
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