第37話 敵情視察 ③

く・ぎ・ず・け!


マジで釘付け!

だってこの流れって断るつもりだよね響ちゃん!いやなんでよ!こんなに純真でキュートな子とかどこ探したっていないよ?!

いや、違うの別にライバルを応援しようってことじゃないんだけど、この子が負けたら私とか一生負けヒロイン確定な気がするのよ!

いや、確かに彼女は変人だけど、変人だけどぉー!

でも健気じゃん!まっすぐじゃん!色んな辛い事を乗り越えてここまで来たんじゃん!

その辺りが私とカブるっしょ?!

それがダメなら私も打つ手ないじゃん!

ってライオンだからかぁーー!

響ちゃんライオンだったのかぁーー!

でも響ちゃん喧嘩弱いのになーとは思いつつそっかー、たしかに彼女が求めるお花系男子にはなれないよねそっかー。

でも響ちゃん!その点ですが!私は全然いーよ!

お花だろうがライオンだろーがゾウさんだろうがぜんっぜんいーよ!

おーるおっけ!

響ちゃんならなんっでもいーんだからね!

バッチこーいなんだからね!

ってライオンさんも好きなのかーい!

つかなに?急に子供っぽくなったけどなに?

キュンです。

なんかキュンです!

天使かよこの子やべーな!

ってやめろー!私のパンツ掲げんのやめろぉー!

あっ!やめてやめてやめて!!

パンツを差し出すのだけはやめてぇー!!!

ダメダメダメ!

それ私の!私の専売特許的なやつぅー!!

ってパイ○ンかぁーい!!

負けた!なーんか負けた!!

純真無毛ってなんやねん!!

国宝かキサマー!!!

ジュ、ジュ、ジューーーーーシィーー?!

な、な、な、なにそれぇー!!!

私そんな感想一度ももらった時ない!!!

いつも「ツーンときた」とか「酸味つよめ」とか「ちょいビター」とか「目にきた」とか人を調味料みたいにばっか言うくせに!!

わたしのアソコはさしすせそ!ってやかましわ!!

せめて調味料なら「甘い」とか「さわやか」とか「コクがある」とか言って欲しいのにこっちはよぉ!!

憎い!謎にスパイシーな自分が憎い!!

あー!もうっ!小枝マジゆるすまじ!!

完全に私の上位互換じゃねーかコイツ!!

なんなんだよちくしょーめ!!

このパクり女が!!

さっさと振られて泣けよ!

ちょっとでもシンパシー感じた私がバカでしたよ!


ってあれ?なんか焦ってね?コイツ。

はいはい今更焦っても遅せーし。

つか何甘えてんだっつーの。

人生舐めんなっつーの。

ブスで貧乏でも同じセリフ言えんのかっつーの!

それと「裏切らない」とか地味に私の失態をえぐってくんのやめてくれよ!


って『嫌だね』キタァーーー!!

いーぞ響ちゃん!その調子!


さらに『子猫ちゃん』キタァーーー!!

見た?見た? こ・れ・ぞ 響ちゃんよ!!


ザマーミロ!響ちゃん基本頑張らない人は相手にしないんですよーだ!



って……え?

ちょ、えっ……?

育て……え?

飼い主ってなに。

愛でるってなに。

傍に居ろってなに。

なんで…

なんで?

なんで?

なんで!!


……認めませんよ。

自分は認めませんよ!

自分は認めませんからねっ!!





……はぁ。

つかれた。


いやまさかのペット枠だった。

そういや響ちゃん育成ゲームも割と好きだもんね。

いつも尖った性能のキャラ育ててたし、小枝ちゃん確かに響ちゃん好みだわ。


うん。

高い勉強代にはなったけど、一つ良いアイデアも浮かんだし、小枝ちゃんにも感謝だわ。

さっきは色々と酷いことを言ってごめんね。

認めない!ってのもさ、あれ悔しかっただけだからね。

まぁ思ってただけで、実際に口に出した訳じゃないんだけど。

それでも、やっぱりごめんね。


にしても小枝ちゃん、かわいい子だなぁ。

私にも懐いてくれたらいいなぁ……。



「あの、鈴音さん?大丈夫かい?」



びっくりした。

激しい戦闘の後で心身ともにぐったりとしていたから、近くに人がいた事に全く気づかなかった。


(響ちゃんに覗きがバレちゃう!)


咄嗟にそう思った私は、思わず相手を睨みながら「静かに!」って小声で言ってしまったよ。


そんな私に「す、すまん」と小声で謝ってきたのはなんと会長だった。


色んな意味で気まずい。


とりあえず立ち上がり、一度響ちゃん達を確認した後「ちょっとこっちに」と小声で会長を誘ってその場を離れた。


会長からすれば、響ちゃんの逢瀬を目撃した私がショックでへたり込んでいた、とでも思ったのか、移動中に肩をポンポンしたり「彼は少々女癖が悪いようだが…」とか励ましのつもりなのか色々言われた。

まぁ私が凹んでいたのも、響ちゃんが女難とはいえプレイボーイなのも間違ってはいないので反論はせず、さっさとこの場を離れる事を優先した。



「えっと会長、さっきは睨んでしまってすいませんでした」



あの場所から少し離れる事が出来たので、一度立ち止まって謝罪した。



「いや、それはいいが…その、彼は…その……いや、この際はっきりと言ってしまえば、君には彼は相応ふさわしくないんじゃ…ないかな。だって彼のことになると、君はいつだって泣いているじゃないか、そんな男に……」



なんだか謎に諭されている状況だけど、会長に言われるまで自分が泣いている事に気付かなかった。

最近は泣くのが癖になっているから、その辺りが鈍感になってしまったのかな。

いかんな、このままじゃ私の涙の価値が軽くなっちゃう。

涙は女の武器だと言うし、もっとこう…ここぞ!って場面で活かすべきだよね。

でもやっぱり涙が出ちゃうの、だって、女の子だから。



「……だからして…ってなぜ笑うんだい?鈴音さん、君は精神的におかしくなっているんじゃないか?大丈夫なのか?」



あっいけね。まだ会長喋ってたんだ。

あまりにも見当違いのことばっかし言ってるから途中から全然聞いてなかった。

鈴音式涙の有効活用案、を色々と考えていたら楽しくなっちゃって笑ってたわ。

にしても『だからして』って言う人初めて見たな。



「あっ会長、心配してくれるのは嬉しいですけど、私は普通に精神的におかしくなっていますよ?だって、それくらい夢中で恋しちゃってるんですから。だからして、おかしくなっていない方が、逆におかしいんですよ私にとっては。涙なんて、ちょっとした恋の調味料なんですから」



なんたって私はスパイス系女子なのだから。

それにしても『だからして』の使い方はあれで合っていたのだろうか。

その後も何やらブツブツと不満げに色々と言ってて、時間があるなら生徒会を手伝わないか、とかも言われたけれど「私のアオハルは生徒会室にはない」的な事を丁寧に言ってバイバイした。


それから急いで外に出て中庭に向かうと、壁際で小枝ちゃんに自らスカート手繰らせるプレーをしている響ちゃんがいた。



「きょーちゃーーーーん!待ってぇー!それ私が代わりにやるぅー!!」


「あーん?なんだリン。今更お前のちぢれた大草原見たって………いや、なるほど。えーと、ちょっと小枝ちゃん『待て』だ。じゃリン、そこに並んでみて?」



うははっ♪


「なんてこった!草原と雪原が見事にコラボった!俺はマンモスなのか?!それともアフリカ象か?!」


なんて中腰になった響ちゃんがはしゃいどる。

あーあ、さっそくライオンでもなくなっちゃったね、響ちゃん♡


ふふっ。


ごめんなさい会長。


やっぱり私の居場所アオハルは、いつだってここ、みたいです♪

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