第36話 敵情視察 ②
あの子……そうだ!変人だ!
誰とも話さないコミュ障だけど、何故か堂々としている変な子がクラスにいる。
前にそんな話を響ちゃんから聞いて、気になってどんな子なのか見てみたらめっちゃ可愛いくて、なんか勿体ない!誰とも関わる気がないならその顔面くれよ!って思った子だ。
私と髪型が似ていたから余計にそう思ったのを覚えている。
でもそっか、だからさっきも会話が無かったのか。
……でもでも、だとしたらなんで授業サボってまであの子は響ちゃんの側にいるの?
あの子は崇高なぼっちの筈で、周りからはぼっちざメタルと呼ばれているのも知っているよ?
うーん…。
私がここでスタンバイしてからも、一向に会話が無いから全然関係性が見えてこない。
つかさ、この子ライバルじゃないんじゃね?
だってただ並んで座っているだけだし。
なんか、気合入れて聞き耳立てているのが馬鹿らしくなってきた。
もういいや、ここから響ちゃんに声かけて、窓から抱っこで外に出してもらお。
『要相談』
ん?
なんか聞こえた。
ひとまず立ち上がりかけた腰を降ろし、ちょっと様子を見ることに。
えーと、さっき何かを呟いた響ちゃんは、スマホと彼女を交互に見ながらなんか困った素振りだ。
どうしたのだろう。
『童貞ちゃうわっ!!むしろ中級者や!!つか小枝ちゃん!話そうぜ!隣にいるんだからさ!』
ビックリした。
思わず「ひっ!」て声が漏れた。
だって急に大きな声出すんだもん。
やめてよ。
まぁ響ちゃんはこっちを気にする余裕もないみたいで、ひとまず気づかれなくてよかったけど。
つか何この発言、何この状況。
全部カオスなんだが。
……あ、小枝ちゃんだったけ?もしかしてこの子は声には出さずメッセージだけで発言してる??
てことは、ずっと二人はメッセージで会話してたってこと??
いや何なのよそれ!
スパイ対策ですか?!
こっちはずーっと耳ダンボにしてたのに!
全部ムダじゃん!!
あーダメだこの小枝なにがしって子、意味分からん。
なんて思っていると
(……あ、響ちゃんの雰囲気が変わった!)
そんな瞬間を私の目は捉えた。
きっと響ちゃんは声での会話をすることに決めたんだ。
攻略してやるぞ!って気合がこっちにまで伝わってくるもんね。
つか、おならで虫除けってなによ!私まで笑わせないでぇ~
『『あっ』』
思わず私も「あっ」って言ったわ。
やーいやーい、まんまと引っかかってやんのザーコザーコ♪
ふふっ、でもやったね、響ちゃん大勝利だね。
と、思ったのも束の間。
『で、えっちしてくれるの?』
…は?
何言ってんだこのアマ殺すぞ。
今まで感じたことの無いほどの殺意を覚えた私は一瞬にして立ち上がっていた。
患部の足も気にせず、なんなら痛みさえ感じず、二本足でしっかりと立ち、ただただ怒りに打ち震えたままスダレ越しにあのクソ女を睨みつけていた。
『……まぁでも、それももう必要なくなっちゃったんだけどね』
……………ふぅ。
はいはい。
ま、聞いてやるから早く続き話しな?
どっこいしょっと。
とりま一回座るわ、足痛い。
つか響ちゃん?少し残念そうに『え……そう?』とか言わない。
『シたかった…』とかも言わない。
そんな、なんとなく残念そうにしている響ちゃんをスルーして彼女は過去話を始めた。
どんまい響ちゃん。
ほら、髪形と体型似てるしさ、よかったら私が後でお相手しますよ?
でもトイレとかはやーよ?
だって私初めてなんだし、せめて保健室かなぁ♡
あっ♡ だめだ考えただけで大当たりしちゃった♡
もうっ♡ 風邪ひくっつーの♡
……あーはいはい。
ちゃんと聞いてましたよ?
彼女にとってのトラウマは理解した。
彼女なりに頑張ってきた事には同情もした。
いい兄貴の話にはウルッときた。
この時点で、さっきまで抱いていた激しい殺意は跡形もなく消えた。
そして響ちゃんの良さもちゃんと分かっているみたいだし、実はいい子なんだなって思うようになった。
惚れているのに、本当は話したくて仕方ないのに、でもどうしてもそれが出来ないからせめて体で…って部分も凄く切なくて、伝わってきた。
これに関しては共感さえしている。
そして、そんな何年も固く閉ざされていた扉をあっけなく開けられてしまった彼女は、 『満開』 その言葉がピッタリな、とびっきりの笑顔を彼に向けることが出来ていて…
はぁ……彼女はライバルで、ここは戦場だった筈なのに、あまりにも彼女が純真だったせいで私まで胸が熱くなってしまったよ…。
どうしよ、一緒に頑張ろうね!とか一瞬思ってしまった私は既に負けているのだろうか…。
……ってあれ?
私が感傷に浸っている間に、なんか響ちゃんが意を決したような雰囲気出してる!
これって……
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