第16話 その頃学校では
「え?!この子って、まさか西園寺君?!」
昨日Kyo-Rinカップルの決定的な破局を目の当たりにし、まだそのショックから立ち直れていない
思わず大きな声が出てしまい、乗客達から一斉に視線を向けられることにはなったが、自身の立ち上げたサイトから得た情報のインパクトが大き過ぎて彼女は羞恥を感じる間もなかった。
(これは一体……でも…ひとまず様子見よね…)
───────
私立
響達の通う学校だ。
この日、この学校に通う生徒達は朝から一つの話題で持ちきりだった。
昼休み事変、6日前に鈴音がもたらしたあの出来事を学院生からはそう呼ばれ、誰もがその後の動向を注視していた。
昨日の決定的な破局についてはまだほとんど知られていないが、今朝、響と涼の目撃情報がSNS上に挙がった事により、口から口へ伝播する波のようにして生徒間に広がっていった。
そして西園寺涼の女性姿、手を握る二人の後ろ姿、楽しそうに連弾をしている姿が時間を置いてupされる度に興奮度が上がっていった。
丁度10時50分から11時までの10分休憩にあたる時間には、とうとう二人のキスシーン画像がupされ、一時校内は阿鼻叫喚の巷と化した。
放課後になる頃にはしっかりと演奏〜キスまでの動画も上がっており、お祭り状態となった校内には教師陣もお手上げ状態で、静観…というよりは一緒に楽しむ方向へシフトした。
自由で自立性を重んじ、生徒主体な校風で知られる晴嵐学院は、職員の年齢層も若く、フランクで親しみやすい教師が多く在籍していた。
その騒動の中、ただ一人、机にうっぷすようにして座る女生徒がいた。
彼女には数日前より人があまり近づかず、腫れ物に触るような扱いを受けていた。
今日に至っては、彼女自身が酷く憔悴している様子だったために余計にそれが顕著だった。
彼女は今、モノトーンの世界にいた。
見えているのに、それを頭が認識してくれない。
いや、実際には認識しているが、今の彼女にとってはその全てがどうでもよく、誰の言葉も耳に届かず、色も、匂いも、感触も、何もかにもが彼女を素通りしていた。
学校に来たのは、ただ一人の男性に会うため。
会うと言っても話しかけるつもりはなかった。
ましてや近づく勇気もなかった。
遠目でいいから、視界に入っていてくれたらそれでよかった。
でも、彼は学校に来ていなかった。
今日は土曜日、半日授業が終わり放課後となるまで、彼女は机にうっぷしたまま一歩も動くことはなかった。
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