第14話 キョウくんてば♡
「ねぇキョウくん♡キョウくん♡」
「どした？涼」
「もうっ♡キョウくんてば♡」
「え……なにが？」
「ふふっ♡キョウくんてばてば♡」
「えっと…うん。キョウくんだよ？」
「きゃーっ♡ほんと、キョウくんてば♡」
「いや……うん」
「ねぇねぇキョウくん♡」
「…………ん？」
「へへっ♡呼んだだけ〜♡」
「…………。」
「もうっ♡どしたのぉ？キョウくんてば難しい顔してる〜♡」
「…………。」
「ねぇ♡ねぇ♡ねぇってば♡」
「……………だぁー！！うっぜぇー！！」
「あー怒った♡でもそんなキョウくんもす・き♡」
「いやうっせぇよ！お前下手っぴか！お前の中のカレカノってそんなノリなの？！うぜぇ絡みばっかしやがって！もうやってられっか！」
「な、なんだよ急に！ボクだって…ボクだって恋人なんていたことないし、やり方わかんないんだから！大目にみてよ！この、甲斐性なし！」
「だからって限度あるやろがい！こんなん続けてたらハゲるわ！ストレスで胃に穴開くわ！」
「だけど！ボク的にはいい感じだったもん！いっぱいイチャイチャしてる感じ、嬉しかったもん！じゃ、じゃーボクが響のこと大好きってゆーこの気持ち、どーしてくれんのさ！責任とってよね！」
「俺に丸投げとか甘えてんじゃねーぞ！いいか？恋愛ってのは二人ですんだよ！だから俺にとっても甘い感じにしてくれよ！お前のそれ、甘すぎっつーかもう、アレだ、ゴミ以下なんだわ！」
「ひっど！！ゴミ以下とかさすがに酷すぎない？！ボクだって頑張ってんのに！」
「あーはいはい。じゃーその頑張るってのまずやめろ。変に女意識すんな。いきなり彼女づらしようとするからおかしくなんだよ。今日一日かけてだんだん彼女っぽくなればよくね？焦んなって」
「それは！それは……そう…かも。で、でもさ？響の気が変わらないうちにって思ったらさ？今のうちに出来るだけ彼女しとかなきゃ！ってさ？焦るん…だもん」
「マジかよお前かわいいかよ…。そんなん出来るんならその感じでいてくれよ。なんだよさっきのてばてば女は。あの会話の出来ないうぜぇ女じゃなきゃずっと彼氏だから心配すんなって」
「ほんと？！わかった！もうてばてばしません！」
「ならよし！じゃーこっからは手繋ぐか」
「やっったぁ！も〜♡キョウくんっ……♡」
「あっ今頭の中で『てば』って言ったろ！」
「言ってばせん。あっ！見てキョウくんストリートピアノある！」
「（言ってばって…。そこにぶっ込むとはやるなコイツ…）おっいーね！なんか弾くか！記念に」
「だね！久しぶりに連弾しよ♡」
…………………
響からの思いがけない提案により恋人ごっこをする事になったボク達。
さっそくラブラブ京都観光に出発！と思ったけれど、その前に邪魔なスーツケースを置くためロッカーを探して駅構内を歩いていた。
その途中、仮にも恋人になれたことがあまりにも嬉しくて、ここぞとばかりにボクが甘えた結果、響にウザがられてしまい喧嘩になっちゃった。
ボクとしては、拗らせ過ぎた長年の想いが爆発し、響が彼氏として横を歩いている現実が嬉しくて仕方なく、そして、いつ響の気が変わってしまうかが怖くて仕方なかった。
それ故に変な絡み方をしてしまったので、喧嘩と言っても暴走するボクが一方的に諌められた形だけど。
うーん。二人でするのが恋愛っていうのはすごくしっくりきたけれど、実際にはボクが一方的に惚れている状況なのでそんなに上手くいくのだろうか。
そんな不安を抱きつつ、素直に気持ちを吐露すると、響はそんなボクに「かわいい」とも「ずっと彼氏」とも言ってくれた。
さらには響から手まで握ってくれて、ボクは安心感に包まれてこれ以上ない！ってくらいに幸せな気持ちになった。
そんなボクの前にはグランドピアノ。
子供の頃からよく一緒に奏でてきた楽器で、ボク達にとっては恰好の遊び道具だ。
ふと、（恋人になって初の共同作業…グフフ♡）なんて言葉が頭に浮かんでくるが、浮かれすぎるとまた失敗しそうだから黙っていることにした。
ふふ♡ちょっと成長♪♪
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