第3話 精神と力
アル達はしばらくの間、椅子に座ってスカイボールを観戦していた。そして、そこへリーザが訪れる。
「はい、スキル適正の結果が出たわよ~。一応、中は見えないようになっているから安心してね」
スキル適正とは冒険者にとっての秘密事項だ。それは検査を行ったリーザにも見られないように、小さな封筒に入れられて機械から出てくる仕組みとなっていた。
「ありがと」
「ありがとー」
アルは待ちくたびれた顔をし、ミカはモニターから視線を外さない。
「で、試合は今、どうなっているの!?」
リーザがアルをお尻で押し退けて、ミカの隣へと座る。
「えっとね~…」
ここから二人の試合観戦が始まった。アルは付き合うと言った手前、
そこから逃げ出すことはことはできなかった。
「面白かったね~!」
「流石、決勝だったな!」
なんだかんだ言いながらも、アルも夢中で試合を観戦していた。今は試合のことを話し合いながら、家に帰る途中だ。
「あのロベルトって人のオーバーヘッドキック! 凄かったわね!」
「ああ、密集したところからのいきなりのシュートだったからな! キーパーも一歩も動けないでいた!」
「やっぱり~。アルもちゃっかり試合を見てたんじゃない」
「あ…」
ミカは今朝のギルドに向かう道中の試合の出来事の話をしたのだが、アルはあの時、興味がないような素振りを見せながらも、実はしっかりと試合を観戦していた。
その事がバレてしまい、アルは頭を掻いて照れ隠しをしている。
「面白かったし、今日は家でお昼を食べていかない? どうせ帰っても何もないでんしょ?」
「いつも悪いな。それなら、お言葉に甘えてご馳走になるとするよ」
アルはおじいさんと二人暮らしのため、食事はいつも適当に済ませている。なので、時々ミカの家にお世話になっていた。
「気にしなくても良いわよ。家のお母さんも、アルが来ると喜ぶから」
ミカは嬉しそうな顔をアルに見せる。実は、アルがミカの家に訪れることは
お母さんだけではなく、ミカ自身も嬉しかった。
こうして二人はミカの家へ向かうことになった。
★
「お邪魔しまーす」
「あらアル君、いらっしゃい」
「お母さんご飯作って。もうお腹ペコペコ~」
スカイボールの観戦をしていたので、時刻はすっかり昼となっている。
「はいはい、すぐに作るわね。それで、ギルドの適性検査はどうだったの?」
「まだ見てなーい。今から部屋に戻って見るわ」
「自分の好きな適正だと良いね。すぐにご飯はできるから、早く降りてきないさね」
二人は階段を上り、2階のミカの部屋へと向かう。
「相変わらず、女の子の部屋だな~」
「何よ! 文句ある!?」
「いや、何でもない…」
アルはこの乙女チックな部屋だと何故かそわそわしてしまい、落ち着けなかったので少し苦手だった。
「早く開けてみましょ!」
アル達はギルドで渡された封筒を机の上に取り出して座布団の上に座る。
「何が出るのかしらね。楽しみ!」
ミカは嬉しそうな顔をしながらハサミで封筒を切った。
「やっぱり魔法使いとかが良いな~。後ろなら安全だし、魔法を使える奴も少ないからな~」
アルは話をしながら、ミカからハサミを受け取る。
「そうよね~。命あっての物種って言うし…」
ミカは封筒の中の1枚の紙を取り出す。すると、
「あ!!!」
突然、大声で叫んだ。
「見て見て! 私、精神の適性だったわよ!」
ミカは驚愕した。そしてその紙を胸に当てながら、目を閉じて喜びを噛み締めている。
「良かったじゃないか! 前から魔法使いになりたいって言ってたし!」
「やっぱり、私って日頃の行いが良いのかしら。神様はちゃんと私のことを見ているのね~」
アルはミカの結果を心から喜び、少し羨ましくも感じたが、今は自分の適性を見ることに忙しかった。そして、封筒から1枚の紙を取り出すが…、その表情は悩ましいものとなっていた。
「俺は力の適性だ」
アルの適性は平凡なものだった。
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