第29話 ケプナーの陰謀





▷▷▷▷ケプナー◁◁◁◁






私はトワイライト王国第二王妃、ケプナー•プリズム•トワイライト。



第一王妃のマデリアが呪いで自滅してくれたおかげで、実質、私が正妻。



『神の加護』を持つリリーナを産んだリタリーは城から出て行ったし、全ての運が私に舞い込んできたわ。





ただ、今のトワイライト王国はあまり状況が芳しくないのが現実。



水は濁り、農作物は枯れ、王都近郊には高ランクの魔物が押し寄せている。

今は兵士の命を犠牲に街や城への侵入は許していないが、時間の問題だ。



それに、最近の食事ときたら、固いパンに味のしないスープばかり•••



もう、限界だわ




この現状を引き起こしている元凶は、やはりリリーナなのかしら?



本当の『神の加護』を持つリリーナを蔑ろにしたための報い?



ならば、元凶を断ち切るしかないわね



元凶の生みの親であるリタリーもほっとく訳にはいかないわ



リタリーが生きている限り、私の正妻の座がいつまで経っても脅かされるもの




折角、神官を買収し、生まれたばかりの我が子、ネイサンを『神の加護』持ち、ということにして私の立場が上がったのだから




それに、賢いが真面目で扱いづらい宰相のムーランがいなくなった今が絶好の好機•••





考えをまとめた私は、もう1人の宰相リカルドを呼んだ。

リカルドは権力を第一に考えた強欲な人間。

リリーナに恨みもあるようだし、ちょうどいいわ。




「お呼びでしょうか、ケプナー様」


リカルドは私の前で片膝をつく。



「リカルド、今のトワイライト王国はまずい状況よね?」

「はい、おっしゃる通りです」

「ならば、トワイライト王国のため、私は元凶を絶とうと思うの」

「元凶ですか?」



私はリカルドの反応を見るが、彼が跪いているため表情を窺うことができなかった。



「リカルド、顔を上げなさい」

「はい」



リカルドは顔を上げた。



「元凶、つまりは呪い子のリリーナと、呪い子の生みの親、リタリーのことよ」

「•••」


リカルドは表情を変えず、賛同も反対もしない。



「成功すれば、あなたには副王の座を約束するわ」

「•••、畏まりました」



リカルドは先程までと一変し、気持ち悪いほどの嬉々とした笑みを浮かべた。



「こんな状況化ですが、兵を1,000人ほどお借りしてもよろしいですか?」

「ええ、構わないわ」

「では、私は行動に移ります」

「よろしくね」



リカルドは深く一礼をすると、部屋から出ていった。

気持ちの悪い男だけれど、何よりも権力を愛するところは信用できるわ。




ふふふ


良い戦果を期待していますよ。











▷▷▷▷眩耀神(リリーナ)◁◁◁◁







今日、妾はネコに乗り、1人で荒野に来ていた。


トンカツのあまりの美味しさにキラーピッグ(ランクA)を狩りにきたのと、もうひとつ、フルーツを取りに来たのだ。



何やら、トンカツには甘いソースが合うそうで、それを作るには醤油とフルーツが必要だとミシェルに言われた。



いつも一緒に来るマルティナは、何やらヴィクトルに話があると呼び出され、リタリーとコルネを連れてシェアハウスに行っている。



『何やら、マルティナ達は難しい話をしていたな』

『はい、です。久々のダリア、です』



ダリアの話では、トワイライト王国で魔物が押し寄せているため、被害に遭った国民をスーペリア王国で引き受けると、そう言った話をしていたそうだ。



『まあ、妖精がいなくなれば、そうなるよのー』

『はい、です』


『それよりも、今は、トンカツじゃ!!』




妾はキラーピッグ(ランクA)を10匹狩ると、場所を移動してフルーツを探し始めた。


大小、色取り取りのフルーツを片っ端から取っていく。

もちろん、背が届かない場所は魔法を使ったり、ネコに手伝ってもらった。




『うむ、こんなものでよいかな』

『それにしても、です、よく1人で来ることを許してもらえた、です?』

『リタリーは最後まで反対しておったが、妾の実力なら当然じゃな』




そんな他愛もないことをダリアと話している時だった。





んっ!?





『妙な反応が多数あるな』

『はい、です』




このリリーナの器では悪神の力を思うように扱えないため、把握しきれない部分はあるが、確かなことがひとつあった。



『こやつら、スーペリアに向かっているな』

『はい、です』

『もしや、狙いは妾はの家か?』

『みたい、です』




キラーピッグ狩りと、場所を移動してフルーツ採取をしていたため、妾の家からここまでネコのスピードで約2時間かかる距離にいる。


妾の家を狙っている輩達もあと2時間程で着く位置にいた。



『ギリギリじゃな』

『急ぐ、です』




妾はネコに跨ると、全速力で家に向かった。










★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★



本作に登場する人物を主人公にした新作を9月7日にアップ予定です。

これぞ異世界作品という内容になっていますので、楽しみにしていて下さい。



【作品名】

掛け持ちしていた2つの勇者パーティーを追放された太っちょ勇者


〜脂肪蓄積•脂肪分解スキルで敵を倒していたのに誰も見ていなかった。追放は今後お互いに関わらないと契約書を交わしてもらったからいいんだけど、異世界はそれどころじゃない問題が発生していた〜

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