第23話 リタリーの思い
祭りの次の日、妾はヴィクトルと家のことについて話し合った。
何やら「あそこは違う」「私の別邸は街の中に」と嘆いていたが、最終的には街の外にある廃洋館を貰えることになった。
そう、貰えることになったのだ。
金は掛からないし、ジャイアント•キャットとモウモウを飼うにはあの屋敷は好都合だし、何も言うことはないわい。
しかも、ビックウルフが1匹50万G(金貨5枚)で売却でき、合計5,000万G(金貨500枚)が手に入った。
ミアナとコルネに聞いたところ、前回の盗賊討伐報酬と合わせた5,500万Gあれば、皆で暮らしても50年以上は保つそうだ。
妾はこの金を使って廃洋館のリフォームなるものをお願いした。
リフォーム完成までは数週間かかるそうだが、それまではヴィクトルの好意でシェアハウスに泊まることになった。
それと、ミシェルに頼んでいるプリンだが、完成までにもう少し待って欲しいと言われた。
蒸す?という工程が難しく、上手くいってないらしい。
その話をミシェルとした際、妾はプリンに追加して醤油の作成もお願いした。
祭りの時の話だが、屋台に出てきた料理は肉を焼いた物が多く、そのどれもが不味かった。
この世界に一般的に出回っている肉は、羊という生き物の肉だったのだが、臭くて臭くて食べられたものではなかった。
そこで神のシンに相談したところ、血抜きという作業と、味付けには醤油ベースのタレがいいと言う事で作り方を教えてもらったのだ。
ミシェル曰く、こちらも時間がかかるらしいので、妾は気長に待つことにした。
▷▷▷▷リタリー◁◁◁◁
私は、リタリー•プリズム•トワイライト。
トワイライト王国の第三王妃で、リリーナの母親です。
私は今日、この国の王であり夫のオーエンから信じられない話をされた。
「明日、第四王妃、第五王妃を迎えるための結婚式を行う」
私の娘であり、オーエンにとっても血の繋がった娘、リリーナを迎える、それを叶える前に2人と同時に結婚するというのだ。
リリーナのこともあるが、今現在の王都近郊で発生している異常事態を考えれば、結婚披露宴を行うなど、正気の沙汰ではない。
第四王妃、第五王妃は私の存じ上げない方ですが、どちらも貴族位Bの御令嬢だそう。
第二王妃で貴族位Aの御令嬢ケプナーが、先日『神の加護』持ちの子を生んだことで、今回の結婚を実現させたのかもしれない。
貴族位Eの令嬢である私は、もう必要ないのかもしれませんね。
この9ヶ月で、オーエンは変わってしまった。
私にはもう愛はない。
愛しているのは9ヶ月以上会っていない、最愛の娘、リリーナだけだ。
第四王妃、第五王妃の結婚式を明日に控えた私は、私室のテラスで1人、静かに笑みを浮かべた。
そして私室に戻った私は、オーエンに宛てた手紙を書き、王妃の証であるティアラを机に置いた。
王妃の証であるティアラは、個人個人に作られた物で、世界に一つしかない。
そのティアラを手放すことは、王妃を、王族を止めることを意味している。
「これでいいの。私にはリリーナがいればそれでいい」
1人私室で呟くと、部屋にある鈴を鳴らした。
鈴の音を聞いて私室に入ってきたのは、この国の騎士団長であり、私の護衛役のマルティナ。
マルティナは私が心を許す数少ない人物。
「この前、話したことだけど、本当について来てくれるの?」
「もちろんです。命に替えても、お守りします」
「マルティナ、本当にありがとう」
マルティナは跪いたまま顔を上げ、私の心を何度となく癒してきた笑顔を見せてくる。
マルティナは同性の私から見ても嫉妬するほど美しく、正義感に溢れた強い心を持ち、多くの男性から言い寄られている。
私自身、マルティナが殿方だったら良かったのに、と、何度思ったことか。
ふふふ
1人思い、笑ってしまう。
「リタリー様、どうかしましたか?」
「いいえ、何でもありません。それでは、今夜、よろしくお願いします」
「御意」
マルティナは私室を出て行った。
リリーナ
無事、あなたに会えますように•••
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