第11話 1人パーティー??




「エリス•••、その瞳は??」

「一体、何が起きたの•••」

「お、お姉様•••」



エリスの家族であろう面々が、浄化スキルが開眼された瞳を見て、驚きの表情を見せている。



「お、お父様?お母様?ヒューズ?」

「エリス、お前の瞳が•••」



父親の言葉を聞いたエリスは、妾がいる部屋に走って入り込み、備え付けの鏡の前で立ち止まった。

エリスは鏡に映った自分を見て、鏡に映った自分の顔を指でなぞっている。


鏡に映ったエリスの瞳は、これまでの白目一色から、虹彩が藍色の美しい瞳に生まれ変わっていた。



エリスの瞳はからは、涙が流れていた。



「これが、私の瞳•••」



妾はエリスに近づくと、声をかけた。



『どうじゃ、綺麗な瞳になっただろう?妾が言ったことは本当であろう?』

《現実:ね?ひとみ、きれーね。ほんとでちょ?》



エリスは妾のことを潤んだ瞳で見つめてくると、そのまま抱きついてきた。



『どうもこの世界の人間は甘ったれが多いのー。やれやれ』

《現実:あまえりゅ。よちよち》


「か、神様•••」


『こやつ、分かっておるな。ふむふむ』

《現実:わかってりゅ。よちよち》



妾がエリスの頭を撫でていると、ようやく硬直が解けたエリスの家族が走り寄って来て、妾の前に跪いた。



「もしや、リリーナ姫ではありませんか?」


『いかにも』

《現実:あい》


「お噂は本当だったのですね。生きておられてよかった」

「神のご加護を、我が娘エリスにお与えいただいたのですね?」


『いかにも』

《現実:あい》


「本当になんとお礼を申して良いか」



エリスの家族が妾に礼を言い、崇めていると、慌てた様子でコルネとミアナ、ダニーがやって来た。


妾に跪いてるエリス一家を見て、状況が飲み込めていないのか、コルネ達はかなり狼狽えている。


そんなコルネ達の様子を見て、エリスの父親と母親は、これまでの状況を話し始めた。



その間に、妾はエリスに浄化目のことについて説明した。

1歳児の妾の言葉だが、エリスは理解したようで新たな瞳を大きく開いて、驚いていた。



「浄化目じょうかめ」


『そうじゃ』

《現実:ちょう》


「人の嘘を暴き、自白させる•••」


『エリスや、その瞳、正しく使うんだぞ』

《現実:えりちゅ、ひちょみ、ただちくつかう》



妾の言葉を受け、エリスはその場に跪く。



「はい。リリーナ様。スーペリア王国第一王女、このエリス•リンデ•スーペリア、この瞳、正しきことにのみ使うことを、ここに誓います」


『よろしい』

《現実:よろちい》



いつの間にか大人同士の話を終えていたコルネ達とエリスの両親は、妾とエリスのやり取りを凝視していた。

それから、エリスの両親もその場で跪き、同じように「正しきことのみに使わせる」と誓いを立てた。



『まったく、やれやれであったのー、ダリア』

『はい、です』

『にしても、エリスはスーペリアとか王女とか言っていたが、用は庶民ということか?』

『•••。で、です』



《スーペリア王国と言えば、この世界ではかなりの権力を有している国家であり、誰もが平伏す存在。そんな国の王様と王妃、王女を跪かせてしまうとは、す、すごい、です》




「それでは、そろそろ誕生日パーティーの時間ですので、ヴィクトル様、マリーナ様、こちらへ』


額の汗をハンカチで拭いながら、ダニーがエリスの父親と母親をパーティー会場へ誘導する。



「リリーナ様。私とミアナはお手伝いがありますので、もう少しだけ、ここでお待ちいただいてもよろしいですか?」


『うむ』

《現実:あい》



寧ろ、みんながパーティー会場へ行ってくれた方が好都合じゃ。

エリスの登場でバタバタしたが、妾の目的は、1人で神のシンが送ってきた料理を食べることなのだ。


さあ、皆のもの、この部屋から立ち去るがいい。



ところが



エリスの父ヴィクトルと母マリーナ、コルネ達が部屋を出ようとしているのに、エリスとその弟は妾の隣から動こうとしない。



んっ?



『エリス、なぜお前はいかないのだ?』

《現実:えりちゅ、いかない?》


「はい、リリーナ様。私はいつもこの部屋で弟のヒューズとお留守番なのです」


『なぜだ?』

《現実:なんれ?》


「それは、この白目の所為です。いつも虐げられるため、弟とお留守番なんです」

「お姉様。今は白目ではありませんよ」


「はっ!!」



エリスは弟ヒューズの言葉を聞いて、絵に描いたような驚き方をした。



「今の私は、白目ではない•••」


『白目ではなく、綺麗な瞳だ。だから、パーティーへ行け』

《現実:ちろめ、ないない、ひとみ、きれい。ぱーり、いく》


「わ、私が、パーティーへ•••」



自分で今の状況に追いついていないのか、エリスは部屋の中を右往左往している。



「少し、怖いです•••」



立ち止まったエリスは、俯きながら言った。



行ってもらわねば困る。

妾は妾で、これから1人パーティーなのだ。

あと一押し、あと一押し。




『エリス。その綺麗な瞳を皆に見せて参れ!!これは妾、悪神からの命令じゃ!!』

《現実:えりちゅ、きれーなひとみ、みんにゃにみしぇる。かみのおちゅげ》



「綺麗な瞳を、、、みんなに見せる。神様が、それを望んでいる」



エリスは俯いていた顔を上げ、部屋の扉の所で待っているヴィクトルとマリーナを見た。



「さあ、行こう、エリス」

「ルルーにも、その綺麗な瞳を見せましょう」

「はい!!ヒューズ、今まで一緒にお留守番させてごめんね」

「お姉様•••」



エリスは弟のヒューズの手を取ると、ヴィクトルとマリーナの待つ部屋の出口に胸を張って歩き出した。


これまでエリスの付き添いで一緒にお留守番をさせられていたヒューズは、姉からの言葉に笑顔で応えていた。




よーーし!!

これで1人パーティー開催じゃーー!!




そんな妾の歓喜を打ち消す轟音と、人々の叫ぶ声が響き渡ったのだった。






ドッーーーーン




「大変だーーーー!!」

「火事だーー、誰か水を!!」

「早く消せーー!!」




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