第10話 あんじぇっと、ないないよ





▷▷▷▷エリス◁◁◁◁





私の名前は、エリス•リンデ•スーペリア。

スーペリア王国の第一王女。



スーペリア王国はその領土の広さと豊富な資源により、近隣王国より大きな財と兵を持ち、大王国と呼ばれている。

スーペリア王国と同盟を結びたいと、各国の王族、貴族が王城を毎日訪れるほどだ。



そんなスーペリア王国の第一王女。

周りは私のことをこう呼ぶ。




【アンデッドプリンセス】




なぜそう呼ばれているか。

それは、私の目が死んだアンデッドのように虹彩がなく、白目のみだから。

瞼が閉じることはなく、常に白目を剥いている。



視力が無い訳ではない。

寧ろ、こんなアンデッドの目をしていても、視力は良かった。


ただ、見えない方が、幸せだったかもしれない。



生まれた瞬間からこの白目をした私を、周りの皆は気味が悪いと、冷たい視線や言葉を容赦なく突き刺してきた。


城を歩いていても、遠目から私を見下ろす視線とアンデッドと呟く声•••


スーペリア王国の第一王女ということで、直接的な中傷はないものの、生まれてから5年間、突き刺す視線と囁くように私のことを話す声に、心は既に壊れかけていた。




そんな事情から、私は普段滅多なことでは城から出ない。



ただ、今日は私のただ1人の友人、トワイライト王国にあるウォード家、そこの娘であるルルーの5歳の誕生日パーティーがあるため、外出をしている。




ルルーと会ったのは3歳の時。

今ほど引きこもっていなかった私が、社交の場に出向いた時に出会った。

他の王族、貴族の子供は私のことを気味悪がったが、ルルーは違った。


私の目を真っ直ぐに見ながら、普通に話してくれた。


そう。

ルルーにとっては、本当にただ、普通に話していただけなのでしょう。

それが私には、たまらなく嬉しかった。




大切なルルーの誕生日パーティーに参加するため、プレゼントを持参して、ウォード家にやってきました。


何度か来ているため、私はいつも通り屋敷の表ではなく、裏動線を歩いて行く。


万が一、他の王族や貴族に会わないよう、この調理場とメイドの作業スペースがあるこの裏動線の先に、私がいつも使わせていただいている部屋があった。




ただ、今日は最悪だった•••。

その裏動線になぜか、ウォード家と同じ貴族位Aのマーヌル家の主がいたのだ。



私はルルーに会えるのが嬉しくて、父と母、弟より少し先を小走りに走っていたのだが、マーヌル家の主と目が合ってしまい、こう言われた。




『醜い目•••。よく生きてられるわね』




その言葉が私の耳に入ってきたと同時に、私はいつもの部屋に向かって全力で走り出した。


メイドがいるかもしれないため、一応、扉をノックする。

いつも誰もいないため、礼儀的にしただけだ。


だが、私がドアノブに手を掛けた時、驚いたことに中から返事があり、小さな女の子が出てきた。



そして、固まる私には女の子はこう言った。




《こにちわ。きみにょひとみ、きれーね》




私の瞳が綺麗•••??


どうせいつものようにスーペリア王国に取り入りたいだけ、そう考えたが、その女の子は私の目を真っ直ぐ見ている。



そう、ルルーと同じように•••。


それに、不思議と女の子が嘘を言っているようには思えなかった。



ならば、本当に私の瞳が綺麗だと言ってくれいる•••




私は膝から崩れ落ち、その場で泣いた。

いつも静かに1人で泣いている時とは違い、大声を出して泣いてしまった。

自分の感情が抑えられず、私は泣きながら叫ぶ。




「私はアンデッドなの!!醜いの!!」




そんな私の様子に、目の前の小さな女の子は少し慌てたように首を左右に振り、頭を撫でてくれた。




『アンデッドじゃと!?何を見当違いなこと言っておるのだ』

《現実:あんじぇっと、ないないよ》


「私は、アンデッド、、、ではない??」




小さな女の子の言葉に、再び私の目からは涙が溢れ出した。



そんな涙が溢れている私の瞳に、女の子は手を添えた。



次の瞬間、手を添えられていても分かるほど辺りが白くなり、眩い光が包んだ。



光に驚いた私の父と母、弟が駆け寄ってくる音が聞こえます。


父と母、弟だけはいつも私を優しく抱きしめ、味方でいてくれる存在。


そんな3人が駆け寄ってくれる足音を聞いて私が後ろを振り向くと、父と母、弟は私を見て驚愕した表情を浮かべ、固まってしまった•••。









▷▷▷▷眩耀神(リリーナ)◁◁◁◁






突然の訪問者に対し、妾はちゃんと午後の挨拶をした。



『こんにちは。今日も君の瞳は綺麗だね』

《現実:こにちわ。きみにょひとみ、きれーね》



なのに、目の前にいる子供の女は、泣き出し始めた。

泣くというより、慟哭だな、これでは。


訳が分からない私は、やれやれと首を左右に振る。




『ダリア、なんだこれは!?』

『眩耀神様、午後の挨拶は、こんにちは、だけなの、です』

『なんだと!!確かに漫画には、今日も君の瞳は綺麗だね、と書いてあったぞ!!』

『漫画なので、多少、現実と違う、です』

『な、ならば、この子供の女は間違った挨拶のせいで泣いているのか!?』

『う〜ん、です』



妾とダリアが悩んでいると、子供の女はよく分からないことを叫び出した。




「私はアンデッドなの!!醜いの!!」




『アンデッドじゃと!?何を見当違いなこと言っておるのだ』



『眩耀神様。この少女が顔を上げてようやく分かったの、です。少女の目、浄化持ち、です』

『おおー、本当じゃ!!しかし、開眼がうまくいってないのー』

『そうです。開眼前の目は女の子には悲惨な状況、です。それを、瞳は綺麗、だなんて嫌味を言われたら、です』

『妾の嫌味で、そ、それで泣いているのか!?』



浄化の目とは、人の嘘を暴き、自白させるスキル。滅多にない稀なスキルであり、例えスキルを保有していても開眼する可能性は1%未満。


そのため、スキルを持っても実質その恩恵には肖れず、逆にその白目の所為で辛い目に合うと聞いている。



にしてもこの状況、白目の子に君の瞳は綺麗だね、確かに嫌味に捉えられてもおかしくない。


居候の身でトラブルは避けたいし、しょうがあるまい。




開眼させて、本当に綺麗な瞳にしてしまえば問題ないのだ。



うんうん

相変わらず妾は頭が良いな〜



では




妾は子供の女の瞳に手を当てた。




【リリース(解除)】




妾の言葉と同時に辺りが光に包まれる。

光が収まった時、開眼しているはずだ。




うむうむ

これでよしなのだ




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