第4話 たってぃ 2/2





執事のコルネが外に出かける準備をしている。

それを心配そうな顔でミアナが見つめていた。


先程までの会話から、マデリアの所へ向かうのだろう。



んっ?



『何やら外が騒がしいな』

『盗賊が10人いますね』

『ダリア、盗賊とは??』

『悪いやつ、です』

『ほう』



次の瞬間、家のドアが激しく蹴飛ばされ、壊れたドアから10人の盗賊が入ってきた。


この庶民の家は2部屋あり、今はちょうど入り口に面していない、隣の部屋にいた。

男達の荒々しい声が響くと、ミアナは妾を抱きしめて、床下に隠した。


「リリーナ様。きっと、大丈夫ですから」

「そうですとも。爺やが必ず守ります」


2人が床下の扉を閉めたと同時に、盗賊達が押し入ってきた。



「おら、大人しくしやがれ!!」

「おい、ガキがいねーぞ!?」

「ほっとけ。どこかに隠したとしても、こいつらが死んだらそれまでだ」

「ちげーねー」


盗賊達の笑い声が響いている。


「まずジジイからやれ!!」

「女は遊んでからだな」


妾の上から鈍い音が響く。



『ダリア、これはコルネが攻撃されているのか?』

『はい。ちょうど床下の扉の上で殴られています。床下を守っている、のです』

『妾の配下に手を出すとは、万死に値する』

『あっ、コルネさん、意識を失いました。ミアナさんが危ないです』

『分かったのだ』








▷▷▷▷ミアナ◁◁◁◁





コルネ様が危ない。

助けに行きたくても、盗賊達に手足を抑えられて動けない。


目からは自然と涙が流れてきた。


コルネ様が意識を失い、盗賊達は私の服を破ろうと手を伸ばしてくる。

私は目を強く閉じる。




リリーナ様。

どうか見つからずに、そして無事に発見されますように•••。




覚悟をした瞬間、目を閉じている私の目に光が入ってきた。

目を閉じていてもこんなに眩しく感じるなんて、一体、目を開けたらどうなるのだろうか。



もしかして、天国かしら?


私は恐る恐る目を開けた。



そこには、部屋の中で倒れている盗賊達と、私の前に愛らしいお姿がありました。



リリーナ様が、誇らしげな顔で、仁王立ちしていたのです。



『どうじゃ、妾の力は』

《現実:たあーい、たたたわ》




あぁ、なんて可愛らしいのでしょう。


それにしても、盗賊達が倒れているのは、まさかリリーナ様が?

これが神のご加護なのでしょうか?



そう考えている私に、リリーナ様は愛くるしい笑顔で、右手の掌を見せてきます。

今朝も見せてくれた『たってぃ』ですね。


私はリリーナ様の右手に自分の右手でタッチしました。




『ハイタッチじゃ!!』

《現実:たってぃ》




リリーナ様にタッチした瞬間、私は咳を切ったように泣き出しました。

リリーナ様が無事であったこと、私自身が助かったこと、あらゆる恐怖から解放されたのだと思います。



リリーナ様の小さな手が、私の頭を撫でて下さいました。

私は思わずリリーナ様を抱きしめ、また嗚咽しました。



しばらくして私は落ち着きを取り戻し、前を向くと、重傷だったはずのコルネ様が傷ひとつない顔で笑みを作り、リリーナ様と、『たってぃ』をしていました。




あぁ、リリーナ様。

やはりあなたは神の子なのですね。









▷▷▷▷コルネ◁◁◁◁





どうしたことでしょう。

私は確かに盗賊に襲われたはず。


それなのに、怪我ひとつない。

部屋の中には盗賊達が倒れていて、目の前では泣きじゃくるミアナの頭を、リリーナ様が優しく撫でていらっしゃる。



これは、神が起こした奇跡なのでしょうか。



ミアナが泣き止むと、リリーナ様は私の元に歩いて来ます。




とちとち(歩いてる音)




あぁ、なんと愛らしい歩き方なのでしょう。



おや

私の前に来たリリーナ様は、ご自身の右手を差し出してきました。


ああ

今朝行っていた『たってぃ』ですね。



私は自分の右手をリリーナ様の右手にタッチする。


なんと優しく、温かな手なのでしょうか。



私の目からは水が流れて来ました。

まだ、雨漏りが直ってなかったのでしょう。


本当によかった。

リリーナ様が無事で、ミアナが無事で。



はっ

リリーナ様が私の頭を優しく撫でて下さっています。

これでは、雨漏りが酷くなります。



神の子、リリーナ様。

あなたに守られたこの命、尽きる時まであなたに捧げます。







落ち着いた私は、直ぐに王城に出向き、王とリタリー王妃に今回の件を話しました。


2人とも驚くと同時に、リリーナ様が生きていたことを心より喜んでいました。


盗賊達は兵士に連行され、間も無く尋問が始まるでしょう。

今は証拠がありませんが、私はマデリア様が仕組んだことだと、不敬罪を覚悟で進言しました。


王とリタリー王妃は、私を咎めることはなく、寧ろ、生きていたリリーナ様を死んだと、虚偽の報告をしてきたマデリア様を追求することを誓って下さいました。



これで、リリーナ様は王城で、父と母と過ごせるようになるのです。

こんなに喜ばしいことはありません。





そう思っていた矢先





マデリア様が亡くなったと、連絡が入りました。

体が黒く変色し、まるで誰かに呪われているかのような最期でした。



これを受け、伝説だと思われていた話を重要視することになったのです。



神のご加護を受けた子が生まれることは滅多にありません。

神の加護は、その国に繁栄を齎らし、あらゆる災いから国を救うと伝えられています。



そして、あまり知られていませんが、神のご加護を受けた子を蔑ろにすると、呪いや災が降ってかかるのです。


今回のマデリア様の死も、リリーナ様に不敬を働いたことに対する呪いかもしれない。



そのため、しばらくは王城には戻らず、リリーナ様の傍には今まで通り私とミアナが付くことになったのです。


恐らくは、準備が整い次第、どこかの貴族家に身を寄せることになるでしょう。




リリーナ様が父母と会えないのは悲しくありますが、爺としては、リリーナ様と過ごせる時間が増えて嬉しゅう限りです。










★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★



本作は以下作品と繋がりがあり、こちらでも眩耀神様、神様シン、マリー(主人公)が登場します。

お暇な時に是非、読んでみて下さい♪


また、もしよければ、感想や★でこの作品に反応いただけたら嬉しいです♪


こういった作品は初めてですので、皆さまの反応で、何話まで書くか決めていきたいと考えています。



【作品名】

神様を脅して6,000のスキルを貰い、魔神からも威圧スキルを貰って、転移された異世界を幸福度上位の世界にノシあげる。


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