第3話 たってぃ 1/2
あれから3ヶ月が経ち、妾は生後6ヶ月になった。
この3ヶ月、神力と身体の向上を図り、ようやく歩けるようになった。
とちとち(歩いてる音)
『どうじゃ!!』
《現実:となりゃ》
「すごいです!!リリーナ様!!」
「おぉー、素晴らしいです。僅か6ヶ月で歩けるようになるとは!!」
乳母と執事が拍手をしている。
妾にしてみれば、これ位なんてことないのだ。
『にしても、器が悪かったとはいえ、歩くのにこんなに時間を要するとは•••。生後30分で歩くのはやはり庶民ではない者なんだろうな』
『左様、です』
《う〜ん。言えない。麒麟の話だったなんて》
歩くのに時間を要してしまったが、妾には次の行動が待っているのだ。
ここで遅れを取り戻さなければならい。
妾は人間マニュアルを頭の中で展開する。
5万冊を速読はしたが、やはり人間体験が初めてである以上、再確認は必要だ。
『なになに、生後6ヶ月の赤子は、ハイタッチをする。ハイタッチとは、お互いの掌をタッチさせる心の意思疎通と』
《ごめんなさい。それ、ハイハイのことです。眩耀神様、ハイハイ飛び越えて、歩いちゃってるです》
『なるほどな、この程度、造作もない』
妾はハイタッチを試すため、乳母と執事の元に歩いて近づく。
2人は妾の歩行を褒めた後、何やら浮かぬ顔で話し込んでいた。
とちとち(歩いてる音)
「そろそろ、隠しきれません」
「そうですね。ミアナ、私はこれからしばらくこちらに来れないかもしれません」
「コルネ様。まさか!?」
そう言えば、乳母の名がミアナで、執事の名がコルネだった。
ミアナは比較的この家にいるが、コルネは帰って来ない日があった。
どちらかは必ず妾の側にはいたが、この3ヶ月、他には誰も来ていない。
庶民とは、近所付き合いがあると人間マニュアルに書いてあったのだが、こんなものなのか?
それにしても、ミアナもコルネも随分と神妙な顔で話している。
ここはハイタッチをして、和ませてやるかな。
「直接、リタリー様に話してみようと思っています」
「それは危険です!!万が一、マデリア様に見つかれば•••」
「危険は承知の上です。リリーナ様の可愛い笑顔を守るにはそれしか」
とちとち(歩いてる音)
「リリーナ様!?こんなに歩けるなんて、本当に驚きです」
「本当、ですね•••。本当にすごい」
妾は暗い表情の2人に向かって、右手を差し出す。
ハイタッチがしやすいように掌を見せながら。
「り、リリーナ様?これは•••?」
「??」
『妾とハイタッチするのだ』
《現実:たってぃ、ちゅる》
「たってぃ??同じようにすればいいのでしょうか?」
ミアナは妾の目線まで腰を落とし、自分の右手を妾の掌に合わせてきた。
『ハイタッチだ』
《現実:たってぃ》
『次はお前だ、コルネ』
《現実:ちゅり、こりゅ》
コルネも同じように腰を落とし、妾はとハイタッチする。
「まさか、リリーナ様は私達を励まさそうと•••??」
「リリーナ様は賢い子だから、きっと私達の表情を読み取ったのでしょう」
ミアナは顔を抑えて泣き始め、コルネは上を向いて今にも流れ出しそうな涙を堪えていた。
「リリーナ様。このコルネ、必ずやお守りします」
「私もです。何があってもお守りします」
ミアナとコルネは妾の手を握って誓いを立てている。
『良い心がけじゃ』
『だがな、妾は配下に守られるのは嫌いでな。だから、配下は妾が守るのだ』
『ダリア。リタリーとマデリアとは誰じゃ?』
『はい。リタリーは第三王妃でリリーナの産みの親です。マデリアは第一王妃で、どうやらリリーナに毒を持ったのはこいつっぽいです』
『ふむ。王妃とはなんだ??』
『あ、あ、あの、おーひーと言っただけで、正確には、ふ、夫人です。リタリーは第三夫人で、マデリアは第一夫人なのです』
『な、なんと!!庶民のくせに三人も夫人がいるのか!?』
『••••』
▷▷▷▷マデリア◁◁◁◁
「くっ、まさか生きていたなんて•••」
私は紅茶の入ったティーカップを壁に投げつけた。
片付けに来たメイドに、ティーカップが割れたのはお前の所為だと私は強く罵る。
泣いたメイドの顔を見れば、いつもは怒りが収まるのに、今日は一向に収まらない。
「リリーナ•••。なんて目障りなのかしら」
私はトワイライト王国の第一王妃、マデリア。
私と王の間には4歳の男の子が誕生しており、次の王にはその可愛い我が子がなるはずだった。
しかし、6ヶ月前にリリーナが生まれてから状況が変わった。
生まれて直ぐ行なわれる神託の儀式において、リリーナは『神の加護』持ちだったのだ。
この世界で神の加護持ちが生まれることは殆どない。
神の加護は、その国に繁栄を齎らし、あらゆる災いから国を救うと伝えられている。
そんなお恐れた加護、ただの伝説だと思っていたのに、まさか下級貴族出の第三王妃リタリーの子、リリーナに齎されるなんて。
女王の誕生など、許さない。
我が子が王になるのだ。
だから私は、リリーナに毎日少量の毒を飲ませた。
効果は着実に出て、いつ死んでもおかしくない状態になっていた。
そんな時、乳母のミアナと、執事のコルネが最後まで面倒を見ると申し出てきた。
私は伝染する病気かもしれないと出任せを言い、王城の外でならと、許可をした。
しばらくして、私は王とリタリーにリリーナは死んだと宣告した。
2人とも普段から私のことを信じきっていたから、大泣きしていたわ。
それが
まさか
ミアナが殆ど王城に戻らず、コルネも度々不在になる状況を怪しんだ私は、兵士に尾行をさせた。
すると
リリーナが生きていたと報告が上がった。
もちろん、尾行させた兵士は直ぐに辞めさせたわ。
そして、次の手を打った。
到着は、もう少しかしら?
★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★
本作は以下作品と繋がりがあり、こちらでも眩耀神様、神様シン、マリー(主人公)が登場します。
お暇な時に是非、読んでみて下さい♪
また、もしよければ、感想や★でこの作品に反応いただけたら嬉しいです♪
こういった作品は初めてですので、皆さまの反応で、何話まで書くか決めていきたいと考えています。
【作品名】
神様を脅して6,000のスキルを貰い、魔神からも威圧スキルを貰って、転移された異世界を幸福度上位の世界にノシあげる。
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