紗奈ちゃんの裏話①

ひどいよ……。


夏休みはずっと一緒にいる言ってたのに……。


お兄ちゃんの嘘つき。


約束したじゃん。


一緒に遊ぶって。


「むー」


猫ちゃんのぬいぐるみを両手でギュッとする。

ふわふわして、気持ち良い。


すると、スマホがブーって鳴った。

メールの通知。

ぴょいっとアプリを開けば、そこにはお兄ちゃんからのメールが届いていた。


『ごめん』だって。


こんなのじゃ許さないよ。

アプリを落とす。

既読無視とか知りません。

そのくらい怒ってます。


「ふんっ」


スマホを放り投げて、ベットにダイブ。

ギシッと音がしたけど、多分大丈夫。


「全部、お兄ちゃんが悪いもん」


夏休みの初日は、遊園地に行こうって言ったのに。

私とお兄ちゃんと雪ちゃんの3人で。

朝早くから夜遅くまで遊び放題。


夜は近くのホテルに泊まって、美味しいご飯を食べる。

それから、一緒にテレビを見て、ゲームをして、そして──。


いけない、いけない。

ボーってしちゃった。

でも、お兄ちゃんのせいで全ておじゃん。

こんな悪事、許すわけにはいかない。


またメールだ。


『プリンあげるから許して』


プリンだって。

そんなもので釣るなんて100年早いよ。


美味しいけど、そんじゃな私の機嫌なんて良くならないからね。

プリンなんかで……。


プリン。


「……」


なんだか、お腹空いてきた。


……しょうがないな。


毎日メールするって言ってるし、プリンに免じて許してあげる。


だから、早く食べたいな……。


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