第4話 違和感

約2kmの道のりを歩き続け、ようやくC-3堤防が見えてきた。一応、整備された道を進んできたとはいえ、1つ運んだだけでエリックには疲労の色が見えていた。堤防の上に土嚢を置くために堤防を登る。


「昇降機くらいつけとけよ。計画的ならよお。」


文句は止まらない。


必死に登り、土嚢を置き終えたエリックは疲労から立ち尽くしてしまった。その間約10秒である。ちょうど昨晩ほどの大きく激しい地震が三日月島を襲った。


「地震!?うああああ…」


どおぼおおん。


気づいたとき時にはもう手遅れだった。エリックはバランスを崩し、海に落ちてしまった。腐った生ごみがあふれかえった部屋に閉じ込められるような不快感とともに。さらに、海水の冷たさではなく不自然な温かさと塩味がエリックを襲った。


「ぶはぁ!」

「誰か、誰かいませんか!!」

「さっきの地震で海に落ちました、助けてください!!!」


堤防はいくら決壊寸前といっても人が登れるような高さまで水面は登ってきていなかった。月明りで照らされる絶壁はエリックを再び絶望に落としいれた。


「大丈夫かあ、今からロープを垂らす。頑張ってつかめ、落ちるんじゃあねえぞ!」


どうやら助かるらしい。エリックはお礼を叫びながら引き上げてもらった。


「でも、今生き延びても結局溺れるか、餓死するか…」


ぬぐい切れない違和感を抱きながら、エリックは残り29個の土嚢をC-3堤防まで運び続けた。翌朝までに終わるわけもなく、次の日も運び続けようやく終えることができた。エリックやほかの市民たち、最初は軽快だったナイクもその日は死んだような眠りついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る